ネット上でも「世界一まずい飴」として話題となり、いつの間にやら日本国内でも「世界一まずい飴」が定着してしまった、北欧フィンランド発の真っ黒な嗜好品「サルミアッキ(Salmiakki)」。近年は、フィンランド旅行帰りのお土産としてもブームに。けれど、少なくともその存在を知らない人が突然口にしたら、どんな悪い冗談か、はたまた「私はあの人に憎まれているのか……」と疑ってしまう危険もあるので、手渡す際の前置きやアフターケアは欠かせない。
味の元凶はリコリス×塩化アンモニウム
トラウマを引き起こしかねないサルミアッキの異質な味のベースになっているのは、実は欧米諸国では昔から好んで食べられている"リコリス菓子"である。とても食べ物とは思えないほど真っ黒でつやつやしていて、甘ったるい漢方薬のような風味が後を引き……食べ慣れていない日本人にとっては、まずこの段階で好き嫌いが分かれる。なお、「世界一まずい飴」として知られているが、サルミアッキ自体はグミやチョコなど様々な種類がある。
さらに、サルミアッキの主犯格と言うべき特有の成分が、塩っ辛くて鼻を突く刺激臭をもつ化学物質"塩化アンモニウム"。これは本来肥料や医薬品として輸入されていたもので、今でもフィンランドの薬局では、喉の痛み止めとしての元祖"サルミアッキタブレット"が売られている(これは塩っ辛さが強烈なので、筆者個人としてはかえって喉を痛めてしまうのではと心配になってしまう)。
1930年頃からサルミアッキはおやつ感覚で楽しむ嗜好品に姿を変え、今やフィンランドや北欧の人々にとっては常に手元にないと禁断症状まで出てくる人もいるほど、日常のお供になってしまったのだ。
飴やグミだけじゃない! 種類豊富ゆえにベスト賞も
サルミアッキの定番といえば飴のほか、何度も噛みしめるうち徐々にじゅわっと味が溶け出してくるハード・グミタイプがある。近年ではお菓子以外にも、サルミアッキの風味を生かしたウォッカやグリル肉の下味なども登場。フィンランド・サルミアッキ協会は、年々増え続けるサルミアッキ商品から毎年ベスト・オブ・ザ・イヤーを発表しており、今年はどれが選ばれるかが夏ごろから話題になっている。
当然ながらフィンランドには、サルミアッキを製造する有名な製菓会社が何社もある。中でもシェア数がトップで、ロングセラー商品やヒット商品を連発しているのが、Fazer(ファッツェル)社。ファッツェルといえば、老舗のチョコレートメーカーとしての知名度が高いのだが、実はサルミアッキ部門にも1938年にいち早く着手していた、業界の草分け的存在だ。
ではここで、数あるファッツェル・サルミアッキの中からとりわけ支持率が高く、フィンランド人たちが不敵な笑みを浮かべながら強くオススメする商品を3つ紹介しよう。味の特色や感想は、あくまでサルミアッキをこよなく愛するフィンランド人たちの推薦コメントに基づいているので、実際に口にしてあまりに自身の印象とかけ離れていてもあしからず。