――小山さんが参加されたことで、違和感のないストーリーになっていたと思います。

シナリオって、だいたいのあらすじが決まっていたとしても、書く人によってぜんぜん違ってくるんですよ。たとえば六太は今回、梅茶菓という片田舎に出向させられるのですが、ここは原作にはない場面。そこでのエピソードをどう料理していくかは、脚本家によってまったく違ったものになるはずです。そうした部分を含め、小山さんに書いていただいたことで、良い作品になったと思います。『宇宙兄弟』はやはりストーリーが大事ですからね。

――永井プロデューサーは『宇宙兄弟』の人気の理由をどうご覧になりますか?

まずは宇宙開発という、あまり知られていないところを舞台にしていることでしょうね。テレビでも情報番組が人気ですが、人々は知的好奇心が満たされるものを欲しているのだと思います。そして、やはり魅力的なキャラクターと人間関係ですね。特に六太はスーパーマンではありません。もちろん、現実的に考えると十分優秀だとは思うのですが、それらは努力で何とかなる部分です。つまり、"人間力"が優れているんですよ。それって、見ている人たちがそんなにがんばらなくても、気づくだけで手に入れることができるものなんですね。技術なんかは努力や年月が必要だけど、人間力は気づくだけで良い。その気づきを得られるのが『宇宙兄弟』という作品なんだと思います。

――宇宙開発の現場についても、とてもリアルですよね。

小山さんが非常に細かく取材されていますからね。実際、宇宙開発に携わっておられる関係者の方からは、『リアルですね』と感心されますよ。それもあって、TVアニメではJAXAなどともコラボレーションすることができましたし。

――『宇宙兄弟』はコミカルな場面も多いのですが、思わず涙してしまう感動の場面も多くあります。本作で永井プロデューサーいちおしのシーンを教えていただけますか。

僕はこの作品を、3回泣けるようにお願いしました。なぜかというと、TVアニメのときは1話につき1回泣けるように作っていたので、90分の映画なら3回だろうと考えたのです。しかし、作ってみるとそれ以上にグッとくる場面が多くて、選ぶのは難しいですね。何回も見ると、また違ってきたりもしますから。それでもあえて選ぶなら、やはりブライアンの遺書のシーンでしょうか。あそこはTVアニメに引き続き、ブライアンの声優を大塚明夫さんにお願いしているのですが、すごい演技でしたね。大塚さんと何度も相談して、どうしたら一番気持ちが入るのかを考えた上でやっていただけました。いや、本当に大塚さんで良かったなと。必見です。

――ありがとうございます。最後に『宇宙兄弟』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

映画を見る前にできれば、原作とTVアニメをご覧になることをオススメしますが、逆に映画から入るのもありだと思います。試写会でも映画から入ったという人がたくさんいて、皆さん楽しんでいただけたようですし。その場合は、映画を見てから原作やTVアニメの1話を見たくなることは間違いありません。あとは何度も見てほしいということですね。僕自身がそうだったのですが、毎回違う発見や感動がある作品なんですよ。


原作ファンはもちろん、『宇宙兄弟』をまだ見たことがない人でも楽しめる『宇宙兄弟#0(ナンバーゼロ)』。大人になってもずっと夢を追いかけ続ける六太や日々人、そして彼らを導くブライアンの姿から、大人も子どももきっと何か感じるものがあるはずだ。

(C)宇宙兄弟CES2014