猫と一緒に暮らしている人は、毎日毎日猫のトイレのお掃除をします。トイレに流すことができる猫砂を使っている方も多いことでしょう。しかし、流した猫砂が詰まってしまい、トイレがあふれて大騒動! といった話もとてもよく聞きます。そんなときはどうすればいいのでしょうか。詰まったら塩を入れればよいといったウワサもあるようですが……。猫砂メーカーに聞いてみました。

(画像は本文と関係ありません)

まずは知っておきたい「流せる猫砂」の基礎知識

猫砂とひとくちにいっても、その素材は、紙あり、木あり、さらにはおからや鉱物など、いろいろです。猫砂がトイレに詰まったときの対策を教えてもらう前に、まずは猫砂に関する基本知識を押さえておきたいもの。どういうメカニズムでオシッコを吸収し、固めたり、消臭したりするのか? まずは猫砂のイロハから教えてもらうことにしました。

――猫砂には、紙、木、おから、鉱物と素材に4種類がありますよね。なぜ、紙や木などが素材に選ばれているのですか?

「猫砂には、固まるタイプと固まらないタイプがありますが、ほぼ80%以上が固まるタイプです。猫のオシッコやウンチの水分を吸収する吸水性、固めるための粘性を持つ物質を素材や原料として使用しております。

まず、そのような特徴を持つ鉱物が猫砂として普及しました。その後、燃えるゴミとして処理できる素材として紙や木、おからに粘性を付加した商品が販売されています。さらに、素材の吸水性を補強するため吸水ポリマーという高分子化合物を、粘性を高めるために糊剤も加えて加工し、吸水性と粘性をよりよいバランスにしています」

それぞれの猫砂のメリット・デメリット

――4種の猫砂ですが、使い勝手は素材によってどう違うのですか? それぞれに利点・欠点があるのでしょうか?

「まず紙製の猫砂ですが、こちらは軽いので持ち運びに便利、燃えるゴミとして処理できるのというのが利点です。トイレに流せる製品もあります。最近は、尿がかかると色が変わるタイプが衛生的で処理しやすいと人気です。

一方、色が変わらないタイプは尿の色がわかりやすく、血尿などを発見しやすいという利点があります。欠点としては、散らかりやすいことと紙の粉がほこりとして出やすいことです。

木製(おがくず)の猫砂は、天然素材ということで安心感があり、軽くてほこりも出にくく、燃えるゴミとして処理できる点が利点です。欠点としては粒が細かく、散らかりやすいこと。こちらも製品によってはトイレに流せるものや、散らかりにくい大粒タイプもあります。

おから製は食品が原料なので、安全面での安心感があります。また、適度な重さがあるので散らかりにくく、トイレに流せたり、燃えるゴミとして処理できたりするのが利点ですね。ほこりも少なめです。

ただ、おから独特の臭いを嫌がる方も。猫が食べてしまうといったケースもありますが、トイレとして認識すれば、それもなくなるかと思います。

最後に鉱物製の猫砂。この猫砂は強力な吸水性を特徴としており、水を含むと粘性を発揮するべントナイトという天然鉱物が使われています。尿を固めて取り除くことができ、消臭効果も高いことから飼育者や猫からも好まれますが、ゴミ処理が欠点ですね。地域によって異なりますが、ゴミとして収集しないところも多いです」

紙製でもトイレに流せない猫砂がある

――処理という点では、トイレに流せるタイプが便利だと思うのですが、鉱物製はダメで、紙、木、おから製の猫砂なら流せるという理解でよいですか?

「いえ、木製や紙製でも流せないものもあります。木製にはべントナイトを加えた製品もあり、こちらは流せません。また、紙製でも流せないタイプもありますので、商品の説明書をしっかりと確認してお求めください」

どうして「流せる猫砂」が詰まるのか?

――「流せる猫砂」なのに、流したらトイレが詰まったという話を聞いたりもするのですが、これは何が原因なのでしょうか?

「トイレに詰まるケースは、各メーカーの品質の違いにもよりますが、袋に記載のあるトイレに流す時の注意に従って、ご使用いただいていない場合が多いのではないでしょうか」

猫砂を詰まらせないためには注意事項を守ること

――猫砂をトイレに流す時に注意することとは、どんなことでしょうか?

「次の5点を注意していただきたいですね。

1.一度に大量の猫砂を流さない。1回にひと固まりを崩して流し、1日3回ぐらいを限度とする。

2.いくつかの固まりを流すときは、必ず1回おきに水だけを流す。

3.トイレットペーパーと一緒に流さない。

4.硬くなった固まりや固まりの数が多いときは、流さず、燃えるゴミとして処理する。

5.一度詰まったトイレは、構造上詰まりやすいので流さない。

ただし、この通りの処理をすれば絶対に詰まらないとは保証はできません。トイレの詰まりは猫砂が原因でない場合もありますし、トイレの問題に猫砂が相乗して詰まりが生じることもあるからです」

――それでも、万が一、詰まってしまったら?

「先に申し上げたトイレに流す時の注意を守れば、詰まるケースは少ないとは思いますが、誤って一度に多く流してしまった場合や、1日に何度も連続して流してしまった場合など、詰まりのリスクが増大します。万が一、詰まってしまい、自分で直らない場合は、水処理業者に連絡して直してもらうのが最善策かと思います」

猫砂が詰まったら「塩」を入れればいいってホント?

――猫砂が詰まったら、塩を入れると流れるようになると聞いたことがありますが、それって本当でしょうか?

「そうですね、完全に詰まってしまったら効果はないと思いますが、少し流れている程度の状態であれば効果を発揮することもあるかと思います」

――不思議です。なぜ塩が効くのでしょうか?

「猫砂に含まれる吸水性ポリマーや糊剤が塩分に弱いためです。塩分によって吸水性ポリマーは膨張率が極端に弱くなり、流動性が良くなります。糊剤も塩分によって糊的効果が弱くなる傾向があります。それで、トイレの中の流動性が改善され、流れるようになる場合もあるということです」

――塩以外にも、効果のあるものはありますか? たとえば砂糖とか……。

「砂糖はダメでしょうが、酢やクエン酸も塩同様の効果が期待できると思います」

――下水に塩を流すのはNGという自治体もあるとか聞きますが?

「塩を流すといっても、詰まりかけたときの一時的なことですし、大量に流すわけでもないので問題はないかと思います。もともと尿には塩分が含まれていますので、人間のものも含め、下水が流す大量の尿の塩分に比べれば微々たるものです」

――通水カップ(ラバーカップ)の使用はどうでしょうか?

「詰まりかけや完全に詰まった状態でなければ、詰まりが直る場合はあると思います。いずれにせよ、先に申し上げましたようなトイレに流す時の注意を守っていただければ、猫砂でトイレが詰まるというケースは少ないと思います。注意書きを必ずお読みいただきたく思います」

その他の注意点

――ほかにメーカーとして、猫砂の使用に関して飼育者に知っておいてほしいことがあれば教えてください。

「そうですね。猫砂を変える場合ですが、猫は慣れていない猫砂だと嫌がるケースがあります。なので、それまで使っていた猫砂に少量ずつ混ぜて、慣らしつつ切り替えていくのがポイントです。

また、猫トイレは、湿気の少ない、猫の落ち着ける乾燥した場所に設置するのも大切です。トイレのお掃除は、一日に数度行い、衛生的に保ちましょう。糞尿等の臭いが強くなると、猫が他の場所でオシッコをしてしまう場合もあります。

それから、開封して残った猫砂はよく密閉し、乾燥した場所で保管してください。使用後の猫砂を燃えるゴミとして処理する場合は、よく密閉して衛生的に保管し、ためずにゴミ出し処理をしていただきたいです」

――ありがとうございました!

便利な製品でも、使い方を間違えると詰まってしまうことがあるようですね。今回教えていただいた猫砂知識を参考にして、安全、清潔な猫のトイレ生活を実現してあげましょう。