「人と自然と響きあう」という企業理念を掲げているサントリーグループは、2014年1月に企業活動がよりグローバル化していることを踏まえ、2050年に向けた「環境ビジョン2050」を策定するとともに「2020年目標」を設定した。そこにはどのような想いがあり、具体的にはどのような活動を行っているのか。同社のコーポレートコミュニケーション本部 企画部長/エコ戦略部長の内貴研二氏に話を聞いた。

サントリーのコーポレートコミュニケーション本部 企画部長/エコ戦略部長の内貴研二氏

「人と自然と響きあう」という企業理念

「人と自然と響きあう」という企業理念は、サントリーグループが何を目指し、経営しているのかを示したものだ。同グループの事業内容は、"自然"の恵みを商品の形にして、"お客さま(人)"にその商品を届けること。そのため、"人"と"自然"は同グループにとってどちらも大切なものであり、その両方が良い関係であり続けることを目指して経営していきたいとの考えだ。実際、ワインやウイスキー、ビール、清涼飲料水などの飲料を商品にしている同グループでは、原料が農作物や水といった自然の恵みであるため、創業時から「人と自然と響きあう」活動を行っており、これからも続けていくことを目指すという。

歴史を振り返ると、1923年に日本でウイスキー作りを始めた際は、ウイスキー作りに適した水を探した末に、京都郊外の山崎に蒸溜所を構えている。また、戦後のビール作りも水探しから始め、東京都 府中で良質な地下水が得られたため、武蔵野ビール工場が建設された。その他にも、水を探すところから始めた事業が多く、自然の恵みの中でも特に天然水にこだわった物づくりを続けてきたことが、同グループのベースとなっていた。そのうえで、自然の恵みから作った商品で、お客さまに喜んでもらいたい、豊かな社会になってもらいたい、との想いで経営を行ってきたという。

「水と生きる」グローバル企業としての目標

21世紀に入ってからはグローバルな企業として飛躍することを目指し、2005年には東京 台場にワールドヘッドクォーターを竣工したほか、コーポレートマークを新しくするといった転機が訪れた。それと同時に、今後は自然や環境を大切にする時代だという考えから、「水と生きる」というコーポレートメッセージを掲げている。このメッセージは、サントリーが自然と共に歩む企業であることを自覚し、それを伝えるものでもあるのだ。

そして2014年1月に、2050年に向けて2つの挑戦を柱とした「環境ビジョン2050」を策定。2つの挑戦とは、2050年までに主要な事業展開国における自然環境保全・再生への積極的な取り組みを行い、自然保護のグローバルトップランナーになること。もう1つは、事業活動による水使用やCO2排出などの環境負荷を半減することだ。36年後を見据えた気の長い話だが、自然や環境への取り組みには長い時間がかかるため、企業の中で人が入れ替わっても方向性を変えること無く続けていくために必要な指針だという。

また、具体的な活動内容を示すために「2020年目標」も掲げている。2020年目標の自然環境保全・再生分野では、国内すべての「天然水の森」においてワシ・タカ類の営巣・子育てを実現するとともに、海外における野鳥保護活動の支援も行い、生物多様性の象徴である野鳥の保護活動をグローバルに展開する。環境負荷低減分野では、グループの自社工場での水使用を35%削減し、バリューチェーン全体のCO2排出を24%削減するという、具体的な数値を示した。

「天然水の森」での活動と今後の展開

「天然水の森」とは、水源涵養林として高い機能を持つ森を育てるとともに、豊かな生物多様性を持つ森づくりを行う活動であり、その対象となっている全国17カ所の森のこと。「天然水の森」では、グループ会社社員約6,000名を対象とした森林整備研修の実施が4月に発表されており、多くの社員が枝打ちや植樹などの森林整備活動を実際に体験するという。この試みは、企業が掲げるビジョンを社員達が自分の事として受け止め、自分が所属する企業の物づくりが自然に支えられていることを理解してもらう、との目的もある。

なお、「天然水の森」は同グループが所有する森ではなく、その多くが国有林や地方自治体が所有している森であり、予算の都合で手入れが行き届いていない森を、同グループが代行して管理しているのだ。現在は、同グループの工場で使用する地下水がまかなえる7,600ヘクタールが天然水の森となっているが、今後は社会への還元も考えて、必要とする面積の倍となる1万2,000ヘクタールまで拡大していくという。

水を探す事から始まったサントリーグループの歴史は、天然水を育む森の環境整備へとたどり着き、今後はクローバル化に向けて世界の自然環境保全・再生へと発展していく。サントリーの飲料水を飲む時、その水がどこから来たのか、どんな森で育まれたのかを思い描いてみてはいかがだろうか。

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