イ・ユジュ(Yu-Ju Lee)さん/韓国・ソウル在住/45歳/アートディレクター

毎朝会社に出勤、外回りでクライアント先をまわって、定時後に残業、週に数回は同僚とごはんでも…。日本の平均的なビジネスパーソンとして思い浮かぶのは、そんな働き方ですが、世界のビジネスパーソンはどのように働いているのでしょうか? 韓国でアートディレクターとして働くイ・ユジュ(Yu-Ju Lee)さん(45歳)に話を聞きました。

■これまでのキャリアの経緯は?

美術大学生の頃からデザインを学んできました。卒業後は、社会人として普通に働いていましたが、夢をあきらめることができず、一大決心してイギリスへ渡りました。再びアートデザインを一から勉強し直しましたが、世界の壁は高かったです。何をやっても成果が出せず、「私は何をしたいのだろうか」と自問自答の日々。帰国後は、数年のスランプ期間を乗り越えて、現在はデザイン会社の代表としてアトリエ兼ショップで販売をしながら国内外の展示会にも出品しています。

■現在のお給料は以前のお給料と比べてどうですか?

会社員時代は毎月安定した金額のお給料を頂いていましたが、イギリス時代は貯金を崩しながらやりくりしていたので、金銭面でも苦労しましたね。現在はデザインやイラストなど、仕事の内容によってクライアントさんから提示される金額は様々です。スタッフもいますので大変ですが"少し余裕が出てきた"という感じでしょうか。

■今の仕事で気に入っているところ、満足を感じる瞬間は?

ショップにいる時は、奥の作業場でデザイン画を描いたり、キャラクター人形を作ったりしています。モノ作りはデザインの他にも、素材選びや手にした人がどんな風に作品を受け入れてくれるかなど、色々な感性が交わって生まれます。作品を完成させるまでのプロセスに時間をかけて考えている時が楽しいです。

クライアントさんや作品を見てくれた人たちが、喜んでくださる姿を見る瞬間はたまらなく嬉しいです。モノ作りにゴールはありませんが、諦めることなく、好きなことを仕事にできた幸せを毎日感じています。

今のお気に入りは、韓国の伝統紙を使った作品。花瓶ケースや照明カバーにもなる

■逆に今の仕事で大変なこと、嫌な点は?

駆け出しの頃は、苦難の連続で自分が何をしたいのかが分からなくなった時もありましたが、振り返るとイギリス時代が今の私の基本を創り上げてくれたのだと思っています。基本に忠実、尚且つ、自分の個性を崩すことなく作品を完成させるので、私のコンセプトから外れるような依頼は困りますね。展示会など、期限が決まっている場合はゴールまでを逆算して取り組まなければならないので大変です。でも、それはどの仕事でも同じでしょうから、いかに効率よく完成度を高めるか、やはりプロセスが大切だと思います。

■休みのとりかたは?

仕事が特殊だし、大学で講師もしているので、不定期で休みを取っています。休みといっても常に作品と向き合っているので、作業をやめて音楽を聞いたり、美術館に行ったりすることもあります。逆に休みだから何もするな、と言われたら困っちゃいますね。

■日本人のイメージは? あるいは、理解し難いところなどありますか?

仕事の幅が広がって、日本の雑誌からも取材を受けることがあります。日本人は、私の仕事を理解しようと一生懸命に質問してくれました。几帳面という印象があります。日本の雑貨、特に文房具はデザインも良いですが、機能性が高いのでびっくりします。どんな機能があれば使う人が喜んでくれるかを考えながら作っているのでしょう。そこはすごく共感します。

■ちなみに、今日のお昼ごはんは?

ショップの近くには、おしゃれなレストランやカフェも多くありますが、外に出て食べる時間はありません。いつも屋台やスーパーで購入したものを食べています。今日はキンパムにしました。作業をしながらでも手軽に食べられるし、時間がない時は少し残して後で食べることもできます。

韓国風海苔巻のキンパム。カニカマや卵焼き、野菜など具沢山

■将来の仕事や生活の展望は?

韓国のモダンと伝統を取り入れた作品をもっと広げていきたいです。新しいだけでは、歴史ある伝統をなくすことになってしまうことになりますからね。以前、ドイツやフランスでも作品を発表しましたが、今の仕事をもっと成功させて、世界中の人たちに作品に触れていただきたいです。今は仕事が充実しているので、落ち着いている時間はありませんが、これからは若者にも私の想いを継承していきたいです。