4月8日22:00スタートの『ブラック・プレジデント』(フジテレビ系)、『サイレント・プア』(NHK)を皮切りに、いよいよ春ドラマがはじまった。

今クールはTBSが火曜22:00にドラマ枠を新設するなど、全20本(深夜除く)ものドラマがラインナップ。1日約3本が放送されるだけに、どれを見たらいいのか迷うところだ。そこで連ドラ評論家・木村隆志が、「これだけは押さえておきたい」3本を厳選紹介する。

『ルーズヴェルト・ゲーム』で主演を務める唐沢寿明

盤石布陣で文句なしの大本命

倒産寸前の会社とその野球部の生き残りを描いた『ルーズヴェルト・ゲーム』(4月27日スタート TBS系日曜21:00~)は、驚異の高視聴率42.2%(最終回)を叩き出した『半沢直樹』と原作、脚本、演出、音楽、プロデュースが全て同じスタッフ。つまり裏方となる制作陣は「今、最も数字を取れる」布陣をそろえた。

つまり変わったのはキャストだけなのだが、こちらも『半沢直樹』同様に強力。主演の社長役に唐沢寿明、専務役に唐沢とは『白い巨塔』以来の共演となる江口洋介、秘書役に檀れい、会長役に山崎努、ライバル会社の社長に実力派落語家・立川談春、さらに『半沢直樹』の敵役・石丸幹二、『ごちそうさん』で株を上げた和田正人など、実力・話題性ともにバツグンだ。

内容で期待されるのが、残り10分間の爽快感。『半沢直樹』は、放送終了ギリギリでの「倍返し」があったが、今作もキャッチコピーに「逆転だよ逆転」「辞令、奇跡を起こせ」が使われているだけに、残り10分でのスリリングな逆転劇が見られそうだ。初回放送は4月27日と最も遅いだけに、視聴率も評判もいきなり大逆転劇が見られるかもしれない。

映画『海猿』級の演出スケール

7本がそろった刑事モノの中でも最注目は、『MOZU』(4月10日スタート TBS系木曜21:00~)。テレビ朝日との同枠バトルに負けっ放しで、すっかり"低視聴率枠"として定着してしまったが、ここに来て大勝負に出た。

今作は映画級のドラマ制作に定評のあるWOWOWとの共同制作であり、演出を『海猿』シリーズの羽住英一郎に託すなど、スケール感あふれる映像を実現。キャストにも西島秀俊と香川照之の演技派2人をメインに、『日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞』の2冠に輝いたばかりの真木よう子、生瀬勝久、吉田鋼太郎、伊藤淳史、長谷川博己、小日向文世、有村架純ら、脇もしっかり固めた。

まさにTBSが「局のプライドを賭けて放送する」ドラマだけに、裏番組となる小栗旬主演『BORDER』(4月10日スタート テレビ朝日系木曜21:00~)との争いも含めて注目が集まる。

ラブを捨てた月9の猛反撃!

3つ目のオススメは、主演・尾野真千子の『極悪がんぼ』(4月14日スタート フジテレビ系月曜21:00~)。前クールでは、"月9"らしいラブストーリー『失恋ショコラティエ』を放送したが、話題性に内容が追いつかず、平均視聴率は12.2%止まりだった。

そこで次にフジテレビが用意した舞台は、極悪非道のうごめく裏社会。見どころは、二枚舌や裏切りの飛び交う中、警察が扱えない難題と向き合う尾野の奮闘ぶり。見るからに悪い男たちを向こうにまわし、懸命にもがき苦しむ泥臭い姿はハマリ役になりそうだ。

さらに、椎名桔平、小林薫、三浦友和、竹内力らのベテランキャスト、原作は『カバチタレ』の田島隆&東風孝広、脚本は『ROOKIES』『南極大陸』などのいずみ吉紘とヒットの条件はそろっている。単に裏社会を描くのではなく、コミカルさやクライマックスのカタルシスも含めて、極上のエンタメドラマとして楽しめるだろう。

その他、『ごちそうさん』に続く連投となる杏の"女半沢直樹"『花咲舞が黙ってない』(4月16日スタート 日本テレビ系水曜22:00~)、二宮和也が進学校の野球部監督に挑む『弱くても勝てます』(4月12日スタート 日本テレビ系土曜21:00~)など、キャストも話題性も十分の作品が目白押し。まずは初回放送をチェックしてみてはいかがだろうか。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ評論家、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴1000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。