芥川賞にノミネートされたことでも知られる作家・樋口直哉の青春小説『大人ドロップ』が映画化され、4日から公開をスタートした。主人公・浅井由(池松壮亮)は高校3年の夏休み直前、親友のハジメ(前野朋哉)に頼まれ、女友達のハル(小林涼子)の協力を得て、ハジメが思いを寄せるクラスメイト・入江杏(橋本愛)とのデートをセッティングする。しかし、そのことがきっかけで彼女を怒らせてしまい、そのまま夏休みに突入。その後、杏が遠くへ引っ越して引っ越してしまうことを知った由は、心のモヤモヤを感じはじめる。
ヒロインを演じた橋本は、今年3月に高校を卒業した。2010年の『告白』で注目を集めると、2013年のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』のユイ役で一躍時の人に。その間、『さよならドビュッシー』(2013年1月)以来、約8カ月もの間、映画から遠ざかっていたという。「現場が恋しくなった」と渇望しながら臨んだ本作。劇中と自身の"青春"をテーマに、いよいよ女優業に専念しはじめる橋本の"今"を探った。
――私にとっては、"理想の青春"がこの映画で描かれていました。その上、自分では経験したことがないことだったので恥ずかしいというか…。
私は、この登場人物たちをどこか傍観していた自分にビックリしました。だからこそ、見た人には赤面してほしいと思っていましたので、今そうなったと聞いてすごくうれしいです。恥ずかしいと思ってくれたら一番いいなと思っていましたし、もどかしいとか切ないとか、いろいろ引っかかってくれたらと。そこにこそ、この映画の意味があると思います。
――このような青春を、ご自身で経験されたことはありますか?
うーん…どうだろう。「青春」イコール「学食」みたいなイメージがあります。学食があって、そこでご飯を食べるのが青春(笑)。あと私にとってはテスト。お仕事の現場は壁ではないですし、乗り越えるものでもないんですが、勉強は、明らかに壁が目に見えてテストは本当に乗り越えないといけないものだったので、ちゃんと勉強して頂点に立ってやっと下りるという感じ(笑)。朝まで勉強することもあって、テストでそこそこの結果を出せてホッとする。その繰り返しを振り返ると、青春だなぁと思います。
――その一夜漬けは、仕事の両立の影響ですか?
いえ、夏休みの宿題は最終日にしかやらないみたいなタイプなので(笑)。
――映画の撮影が久しぶりだったそうですね。
『さよならドビュッシー』以来、8カ月ぶりでした。その間は、日村(勇紀)さんと『イロドリヒムラ』というドラマに出演させていただいて、『あまちゃん』に入って。スタジオが続くと外の空気を吸いたくなるんですよね。だから、映画の現場が恋しくなったんだと思います。
――中でも印象に残ったシーンは?
花火のシーンは、思い出に残っています。唯一、セリフがなかったシーンなので…"夜"、"海"、"サイコー"みたいな感じでした(笑)。
――飯塚健監督いわく、橋本さんは「負けず嫌い」なイメージだそうです。
なんでそう思ったのか、全く分からないですが(笑)。うーん…負けず嫌い…どうだろうなぁ。勝ちたいっていう気持ちよりも、うまく負けたいっていうほうが強いですね。したたかに負けたいみたいな。うーん…そんな感じです(笑)。