有効な昼寝とそうでない昼寝の違いとは?

昼寝の時間を設けている幼稚園も多い中、江戸川大学社会学部人間心理学科の福田一彦学科長は、「幼児の昼寝は一利なし」と指摘している。そもそも昼寝の効果とは何なのか、また、ビジネスマンにオススメする昼寝についてうかがってみた。

就床の後退で深い眠りにも悪影響

子供にとって「成長ホルモン」の分泌を促す睡眠は欠かせない。成長ホルモンは深い睡眠をとっている時に最もよく分泌されるため、「寝る子は育つ」という言葉は科学的にも正しいといえる。

福田学科長によると、基本的に幼児は浅い眠りができず、昼寝においても深い眠りに入ってしまうという。また、自然な状況で昼寝をとらなくなった幼児に昼寝をとらせることは、夜間睡眠の開始、つまり、就床時刻の遅れを促す。就床時刻の遅れは生活習慣の乱れとなるため、深い眠りに悪影響を及ぼすことになる。また、就床時刻が後退することによって、朝の機嫌の悪さや、登園への行き渋りが悪化することも指摘している。

実際に、昼寝を中止している保育園(2施設)の4歳児8名の平日の活動量を記録し、昼寝のある4歳児のデータと比較したところ、昼寝のある保育園児は1~2時間程度、就床時刻が後退していたという。「夜は眠って日中は活動するという、生物としての24時間のリズムにどれだけメリハリがあるかということが大事になる」と、福田学科長は言う。

昼寝中止前後の睡眠習慣。起床時刻は同じでも、就寝時刻が早くなっていることが分かる

15分の昼寝が経済損失を軽くする

江戸川大学社会学部人間心理学科の福田一彦学科長

しかし、昼寝が一概に悪いというわけではない。2006年にOECD(経済協力開発機構)が行った調査では、一日当たりの睡眠時間が最も短いのは韓国(469分)、次いで日本(470分)となっており、世界的に見ても日本人は睡眠時間が不足している。特に、シフト勤務などで夜(0~5時頃)に2時間以上睡眠がとれない人は、昼(13~15時)に15分以内の仮眠をとるのは有効といえる。

昼寝をする際の注意点として、福田学科長は深い眠りに入らないようにすることが大切だという。30分以上の昼寝をしてしまうと、脳は深い睡眠に切り替わってしまい、起床後も慢性的な眠気が続いてしまう。また、横になって休むのではなく、デスクの上にクッションを置いて頭を沈めるくらいがちょうどいいと指摘している。

睡眠不足は日中の作業効率の低下や遅刻、欠勤、事故にもつながることで、経済的損失の一因となっている。実際、日本の睡眠が及ぼす経済損失は約3兆5,000億円と言われているが(2006年に日本大学の内山真教授が報告)、昼寝も含めて睡眠環境を整えることが、日本人の健康のみならず、日本の経済にも重要になるといえそうだ。