病気の子どもに付き添う家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」をご存じだろうか。このほど愛知県名古屋市の名古屋大学医学部附属病院内に「ドナルド・マクドナルド・ハウス なごや」 (なごやハウス)が完成した。11月27日に行われた開所式を取材した。
病院の近くに"我が家のようにくつろげる第2の家"
ドナルド・マクドナルド・ハウスは、病気と闘う子どもとその家族が病院の近くに低料金で滞在できる施設だ。コンセプトは"HOME AWAY FROM HOME"、我が家のようにくつろげる第2の家。全施設最寄りの病院から5分以内という病院隣接地(病院敷地内を含む)にあり、利用料は1日1人1,000円という。
公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンが管理・運営、企業や個人からの募金や寄付によって成り立っている。
日本に9カ所、世界33カ国に328カ所あるハウス
開所式には同財団法人、同病院関係者など57人が出席し、施設の完成を祝った。はじめに公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン理事長の柳澤正義氏が挨拶に立った。
「このなごやハウスは、日本では東京都世田谷区、宮城県仙台市、高知県高知市、大阪府吹田市、栃木県下野市、北海道札幌市、東京都府中市、東京都文京区に次いで9番目、東海地方としては初めてのハウスになります。
ドナルド・マクドナルド・ハウスはアメリカで生まれ、その後フランス、ドイツなどヨーロッパ諸国、さらにはロシア、オーストラリア、アジアでは香港、マレーシア、台湾にも開いており現在33カ国に328のハウスがあります。このように世界に広がったのは、"一般社会の人々が支援して、難病の子どもたちに病院の近くの家庭的環境を提供する"、そういうコンセプトに世界中が共鳴したからに他なりません。
私が大学病院に勤務していた頃も、遠く離れた地方から困難な病気を抱えた子どもの患者さんたちが多数入院しておられ、病院に隣接した家族のための宿泊施設の必要性が叫ばれておりました。
名古屋大学が中心となり愛知県や名古屋市をはじめ大勢の方々のご理解ご協力によって、このなごやハウスの建設を進めることができました。その結果、本日の完成に至ったことは私ども財団にとって大きな喜びとなっております」(柳澤理事長)
地域が支える子どもの医療
名古屋大学 総長の濵口道成氏は、「子どもは私たちにとって一番の宝です。私も子どもを持っている身として、本当に子どもが健やかに育っていくことが一番の喜びだと思います。それを契機に幅広い方々がつながる、そういうハウスになっていくだろうという実感をしています」と述べた。
また名古屋大学医学部附属病院 病院長の石黒直樹氏は「医療を成功させるためには心の治療、心のケアといったことが必要で、これは医療者だけでは達成できるものではありません。家族の力、そして家族の愛が必要です。
財団にこのような施設を設けていただけるということに対してありがたいと思っております。さらに地域の方々が支援してくださって、寄付というかたちで私どもを応援してくださいました。まさに地域が支える子どもの医療であります。
地域の子どもが関係する医療機関すべての医療者の代表として感謝を申し上げるとともに、大切に使ってさらに子供の地域医療を推進していくための大きな力としていきたいと思っております」と話した。
日本マクドナルド代表取締役会長の原田泳幸氏は「どこに使われるか、目的が何であるか、その結果をチャリティーした人が実感できる、こういう意味では非常に明確なチャリティーです。子どもはとても大事。活動に参加できることはすばらしいことだと思っています」と語った。
企業や名古屋大学関係者から1億6,800万円の寄付
なごやハウス募金委員会 発起人代表で、名古屋大学 副総長の松尾清一氏(左)から公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン 理事長の柳澤正義氏に1億6,800万円の小切手が贈呈された |
式では、なごやハウス募金委員会 発起人代表で、名古屋大学 副総長の松尾清一氏から公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン 理事長の柳澤正義氏に小切手が贈呈された。なごやハウス募金委員会では昨年3月に活動を開始、さまざまな企業や名古屋大学関係者に対して寄付の呼びかけを行い、1億6,800万円もの寄付を集めた。
また、アーティストの石井竜也氏から「ドナルド・マクドナルド・ハウス なごや」ハウスマネージャーの増田直樹氏に記念オブジェが手渡された。石井氏は以前からハウスの活動に共感し、チャリティー活動に協力しているという。
式の最後にはテープカットで開所を祝ったほか、続いて開かれた祝賀会には268人が集まった中で鏡開きが行われた。
なごやハウスは3階建て、12室のベッドルームを用意
なごやハウスは、2014年1月6日に運営開始する。名古屋大学医学部附属病院ほかに入院・通院中の20歳未満の患者とその家族が利用できるという。
施設は3階建て。延べ床面積1,192平方メートル、部屋数12室。自炊ができる共有のキッチンやリビングルーム、プレイルーム、多目的室、ランドリーなどが用意されている。
ドナルド・マクドナルド・ハウスに協力するには
ドナルド・マクドナルド・ハウスでは、企業や個人からのサポート(寄付・支援)を呼びかけている。ハウスの活動への協力方法は、寄付金、「はやく元気にな~れの会」サポート会員、マクドナルド店舗での募金、ボランティア参加、物品寄付でのサポートなどがある。
詳細は、公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパンサイト内で確認できる。