うららかな春が来なかった2013年

今年もやってきた、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日。しかしながら、解禁前にはネガティブな情報が次々と流れてきていた。

ボージョレ地区のみならず、今年の冬はヨーロッパ全土で低温が続き開花が遅れた。追い打ちは、ボージョレ地区のあるブルゴーニュ一帯を7月下旬に襲った大規模な雹害……などなど。けれども8月、9月は天候が急速に持ち直し、収量は例年から半減したが、クオリティーには問題がないとのこと。それではさっそく、メルシャンが販売する「アルベール・ビショー」のヌーヴォーを飲み比べてみることにしよう。

「ボージョレ・ヌーヴォ―2013」

色: 濃いルビー

香り: ブラックベリー、スミレの花、イチゴジャム

味わい: 凝縮感のある果実味、なめらかな甘味としなやかな酸のバランスが心地いい。まだ少し荒いタンニンも感じられる

料理: BBQ、スペアリブなど焼いた肉

「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー2013」

色: 濃いルビー色

香り: カシス、ナツメグ、インク

味わい: 上のボージョレ・ヌーヴォ―に輪をかけた果実味の凝縮感がすごい。深い甘味があるが、丸みのある酸味で口の中が心地よい。タンニンもかなりある。

料理: ローストビーフやすき焼きなど牛肉全般(完全に火が通ってない状態の料理が好ましい)。

「ボージョレ・ヌーヴォ―2013」(写真左)と「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォー2013」(右)

「マコン・ヴィラージュ・ヌーヴォー2013」

こちらは、ボージョレ地区の北に位置するマコン地区のシャルドネ100%からなる白。

色: 少しグリーンがかった薄いレモンイエロー

香り: 熟したリンゴ、パイナップルやバナナなどのトロピカルな香り

味わい: トロリとしたネクターのような舌触り、酸味と甘みのバランスがきっちりとれていて口の奥のほうで適度な苦みを感じる。ふくよかでアルコールのボリューム感も強い。

料理: 帆立やイカのソテーなど、ねっとりした魚貝類

「ボージョレ・ヌーヴォ― ロゼ2013」

こちらは、ガメイで造られたロゼ。

色: 薄いローズピンク

香り: フレッシュな日本のさくらんぼ、イチゴ

味わい: キュンとした酸が口の中いっぱいに広がったあと、優しい甘味が追い付いてくるのだが、最後はやっぱり酸味が支配する。フレッシュ&フルーティー。

料理: シェーブル(羊)チーズ、ニンジンのラぺやきのこのマリネなどのビネガーを効かせた料理

さて、最後は昨年のヌーヴォー「ボージョレ・ヴィラージュ ヌーヴォー2012」を試飲してみよう。1年を経て、どのように変化したのか……。

色: 暗いガーネット

香り: レーズン、なめし皮、枯葉

味わい: おちついた酸と和三盆のような上品な甘味。タンニンはこなれている。今が飲みごろだと思われ、あと1年はもたないだろう。

料理: 鴨やイノシシなどのジビエ

今年のヌーヴォー、総合すると……

生産量こそ大幅に減ったものの、冒頭で触れた天候不良によるワインのクオリティーの低下はまったくみられなかった。赤ワインのみでいうと、濃い色調、黒い果実のニュアンス、しっかりとしたタンニンは昨年のヌーヴォーよりいい出来ではないかと思うほどである。

1年前のヌーヴォーを翌年の解禁日に開けるのがここ数年の個人的趣味なのであるが、今年のヌーヴォーを来年開けるのが今から楽しみになってきた。ともあれ、今年も自然の恵みにカンパイ!