女優・前田敦子が『苦役列車』(2012年)以来、山下敦弘監督とタッグを組んだ映画『もらとりあむタマ子』が11月23日から公開をスタートする。前田が演じる主人公のタマ子は、東京の大学を卒業後、父親がひとりで暮らす甲府の実家に戻り、就職もせず、家業のスポーツ用品店も手伝わず、ただひたすらに"食っちゃ寝"の毎日を送るずぼら女子。映画では、その日常をリアルに映し出しながら、彼女が新たな一歩を踏み出すまでの一年を四季の移り変わりを通じて描いている。念願の再タッグを終えた2人に話しを聞いた。
――実際の家庭をのぞき見てるような気持ちになる映画でした。完成した映画をご覧になってどのように感じましたか?
前田敦子(以下前田):お父さんと娘はこんな感じかもしれないなと想像しながら、見ていました。そういってもらえるとうれしいです。
山下敦弘監督(以下山下監督):お父さんってあれぐらい優しいの?
前田:お父さんってやっぱり娘には優しいんですよ! でも、それが思春期だと「ウザい」ってなっちゃうんです(笑)。そういう瞬間は、誰でもあると思います。
――劇中では父からのプレゼントに対して、タマ子は拒絶してしまいますが、その気持ちは共感できますか?
前田:うーん、そういうことはなかったんですけど。でも、恥ずかしいっていう気持ちはあるんじゃないですかね。もう、余計なことしなくていいから! みたいな感じで(笑)。
――今回の映画は"食卓"をとおして、父と娘のやりとりを描いていますが、そのあたりにはこだわりはあったのでしょうか。
山下監督:食材で季節を表すという目的があったんですが、両親が離婚していて父がご飯を作っているということで父が母親的な役割を果たしています。そういったところで父のキャラクター作りにもプラスになったなと思うし、なんだかんだ言いながらタマ子はご飯を食べるんですよね。そこは素直だなと(笑)。
――食べる前にきちんと「いただきます」と言うところなんかは育ちの良さを感じました。
山下監督:一応、テレビも消して形だけはきちんとしているんですよね。そういうところからも2人の関係性が見えますよね。
――前田さんが食事のシーンで心がけたことはありますか? ロールキャベツもおいしくなさそうに食べているように感じました。
前田:意識しないで食べるようにしていました。監督からもそこに対してはあまり深く言われなかったので、私も深く考えないほうがいいなと思いながら食べていました。人に見られていることを意識した上での食べ方ではなかったですね(笑)。
山下敦弘 |
――タイトルに「もらとりあむ」とありますが、お二人に「もらとりあむ」はありましたか?
山下監督:僕は18歳の時に映画を作り出して今に至るんですが、ゆるく続いている気がするんですよね。自分が社会人にいつからなったのか、なってないのか分からない(笑)。就職して、家族がいて、子どもがいて、家を建ててみたいな同級生を見ていると、社会人だなぁって実感します。
前田:これから先あるかもしれませんが、まだないのかなぁ…。でも、この業界に入ってすぐはどうしていいのか分からないというか、そんな時期もありました。
山下監督:AKB48を卒業した後とかは、そんな感じなかったの?
前田:うーん。その頃は、そう思っていたんですけど、1カ月半くらいの話なので(笑)。よく考えたら普通の日常というか。
山下監督:ちょっとしたお休みをいただいた感じ?
前田:はい(笑)。