映画『イヴの時間 劇場版』で知られるアニメーション監督・吉浦康裕氏による待望の新作アニメーション映画『サカサマのパテマ』が11月9日に公開初日を迎え、吉浦監督をはじめ、声優の藤井ゆきよ、岡本信彦が角川シネマ新宿で舞台挨拶を行った。

『サカサマのパテマ』の初日舞台挨拶を行った吉浦康裕監督(右)、藤井ゆきよ(中央)、岡本信彦(左)

空を忌み嫌う世界に住む少年・エイジ(岡本)と、地底世界から降ってきたサカサマの少女・パテマ(藤井)の出会いによって、重力が真逆に働く奇妙な世界の謎が解かれていくさまを描く同作。6月にフランスで行われたアヌシー国際アニメーション映画祭に正式招待され、ワールドプレミア上映が行われたほか、10月に開催された東京国際映画祭では特別招待されるなど国内外で大きな注目を集めている。

吉浦監督は「ようやくここまで来ることができました。完成するまでに色々な歴史のある作品だし、観客の皆さんと映画館で映画を観るのが好きな人間としては、ジーンと来ています」と感無量の様子。本作で初めてヒロインを演じた藤井は「本当にこの日を待っていました。今日を皆さんと向かえることができてとても嬉しい。早く多くの方々に観ていただきたい」と、溢れそうな涙を我慢しながら喜びを語っていた。岡本は「台本を読んだ瞬間から、この作品に出会えてよかったと思ったし、完成した作品を観て、出演することができて良かったと思った」とアフレコ収録から約2年を経ての公開に満面の笑みを浮かべていた。

吉浦監督は「子供のころから、空を見上げたときに空に落ちそうな感覚があった。子供がしそうな妄想の一つとしてネタ帳に書き込んでいて、それが今回の作品で実を結んだという感じですね」と斬新な物語設定の着想を振り返る。藤井もそんな世界観に惚れ込んだようで「脚本がとても魅力的で、役柄に感情移入もしやすくて、脚本から受け取ったそのままを演じました」と練り込まれた脚本を絶賛しながら、岡本から「アフレコ中には、頭に血をのぼらせようと頑張っている姿を見た」と証言されると「パテマ同様にダメージを受けて熱を出してしまったことがあって、次の日の収録では横になりながら挑ませてもらいました」と熱演を振り返った。

一方、岡本は「空に落ちることが罪なんですか」という劇中のセリフをお気に入りとして紹介。吉浦監督から「今のが本番だったら、OKですね」と太鼓判を押されるも「このセリフはエイジだからいいけれど、普通にカッコよく言ったら"中2"っぽくなりますね」と笑わせた。キャスティングについて「初々しさを重視した」という吉浦監督は「特に岡本さんは、これまで幅広い役柄を演じてこられているから『いける』と思った。実際の読み合わせでは14歳のエイジにピッタリとはまりました」とベストキャストに自信を覗かせていた。

またこの日は、作品の内容にちなんで「サカサマ・ワード」対決を敢行。「パテマ」「エイジ」「イザムラ」「トイハチ」など映画に関連する言葉を逆に読むゲームにキャスト陣が挑戦した。プロの声優の技に観客が盛り上がりを見せる中、藤井と岡本は「アフレコより難しい~」と悲鳴を上げていた。

最後に藤井は「記憶を消して、自分も一観客として観てみたいので、皆さんが羨ましい」と客席に呼びかけ、岡本は「50代と60代の父と母が作品を観てくれて、最高の映画だと言ってくれました。色々な方々に楽しんでいただける作品だと思う」とアピール。念願の初日を迎えた吉浦監督は「100人を超える数のスタッフが熱意を持って取り組んでくれました。その気持ちが画面に表われているはずです」と胸を張っていた。

映画『サカサマのパテマ』は全国公開中(配給:アスミック・エース)。公開館などの詳細は公式サイトをチェックしてほしい。

(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee 2013