交通事故により45年ぶりに目覚めた心は19歳、体は64歳の男・飛田譲(寺尾聰)と、ちょっと不器用な青年看護師の神谷猛(岡田将生)の心の交流を描いた友情と青春の旅の物語、「ドラマW チキンレース」が11月10日に、WOWOWプライムで放送される。

「チキンレース」岡田将生はいわずもがな、写真右のイケメンである。

当ドラマの見所は、フルHDの4倍の解像度を誇る超高画質で撮影、寺尾聰をはじめとする豪華キャストなど色々あるが、個人的に注目したいのが、

岡田将生だ。

なぜなら、女性の友人に「どんなタイプが好み?」と尋ねると、何人かに一人は決まって岡田将生の名前を出してくるからだ。

……なるほど、岡田将生はたしかにかっこいい。若いし、イケメンだし、スタイルも良いし、演技だってうまい。会ったことはないけど、何となく性格も良いやつっぽい気がする。たぶん口臭もアロマみたいな香りがするに違いない。

しかし、僕がそういうことを言うと、岡田将生の名前を挙げた友人女性はこう答えるのだ。「そういう理由もあるんだけど、それだけじゃないんだよね。もっとこう、他のイケメンにはない魅力があるというか……」

他のイケメンにはない魅力? いったいそれはなんだろう。それがルックスに起因するものでないのであれば、もしかして僕にも学べるものがあるんじゃないか。

ということで、実際に岡田将生が出演している映画を見て研究してみることにした。

ホノカアボーイ

まずは2009年3月14日に公開された「ホノカアボーイ」だ。ハワイ島の北端に実在する町・ホノカアの日系アメリカ人コミュニティを舞台にした心あたたまる物語。写真家としても活躍する吉田玲雄の紀行エッセイが原作となっている。主演の岡田将生が演じるのは日本人の青年・レオだ。

レオは失恋を機にホノカアに滞在し、町の映画館で映写技師として働くことになる。ホノカアに住むのは、可愛らしいおばあさんのビー(倍賞千恵子)、明るくはつらつとした美女・マライア(長谷川潤)、おちゃめなおじいさんのコイチ(喜味こいし)、肝っ玉母ちゃん的なエデリ(松坂慶子)などの個性的な面々。おいしいご飯とハワイ島の美しい景色の中で彼らと触れ合ううちに、レオは少しずつ大人になっていく――。

本作はとにかくゆったりした空気感の映画で、細かな出来事はもちろん起きるんだけど、ドーンと大きな事件は最後まで起きない。ゆったりと過ぎていく日常を淡々と描いていく、何とも心安らかな映画だ。僕は「かもめ食堂」とか「マザーウォーター」とか、そういうのんびりした映画が好きなのだけど、ホノカアボーイはまさにそうした空気感をまとった映画だった。

こういう映画は、かなり俳優を選ぶ。特に主人公のレオは映画全体の雰囲気を決める重要な役を担っており、演技力だけではなく映画に合った雰囲気をまとえる俳優をキャスティングする必要があるのだ。

その意味で、岡田将生はパーフェクトだった。

本作での岡田将生は、一言でいうと"子ども"である。といっても悪い意味ではない。人懐っこいところとか、無邪気にビーに接する様子とか、それでいて女心を読めないところとか、もう仕草の一つ一つから若さがにじみ出ているのだ。いい意味で純粋で、若者らしいのである。

それが一番表れているのが、岡田将生の笑顔だと思う。岡田将生はとにかく笑顔が良い。真顔のときは中性的でクールにも感じる顔立ちなのだが、笑うととたんに顔が崩れて子どもの一面が出てくるのだ。「破顔」とはまさに岡田将生のためにあるような言葉である。このギャップがヤバイ。真顔と笑顔にギャップがある人は魅力的だが、岡田将生の場合はもとがマネキンのように整っているだけに、笑顔のクシャクシャ感が際立つのだ。なるほど、これはビーも惚れちゃうわ。

あとは食事のシーンも良いね。ビーの作るご飯はどれもものすごくおいしそうで、見ていてここまでご飯が食べたくなる映画はジブリ以来だ。で、食事中の岡田将生がまた自然体で良いのだ。がっつくわけでもなく、かといって年齢に不釣合いな上品さもない。自然体なところが、この映画の雰囲気に実によく合っている。

一言でいうとイケメンがハワイの気の良い住人と交流しながらご飯を食べるだけの映画なのだけど、何とも不思議な魅力を持った作品である。その魅力はつまり、岡田将生の魅力でもあるのだと思う。

宇宙兄弟

打って変わって、宇宙飛行士を目指す兄弟を描いた熱い物語「宇宙飛行士」も、岡田将生の魅力を語る上で外せない作品だ。2012年5月公開の作品で、原作は同名の人気コミック。岡田将生が演じるのは兄弟の弟の方。すでに宇宙飛行士として活躍する南波日々人である。

宇宙飛行士の舞台となるのは2025年。ほんの少し未来の日本だ。といっても町の風景などは現代そのものなので、あまり意識しなくても良い。主人公となるのは、宇宙飛行士に憧れる二人の兄弟。南波六太(小栗旬)と南波日々人。子どもの頃は一緒に宇宙飛行士になろうと誓い合っていた二人だったが、それから19年後、二人の道は大きく分かれていた。日々人が夢をかなえて宇宙飛行士として活躍する一方、兄の六太は勤めていた会社をクビになり鬱屈とした日々を送っていた。

そんな折、六太のもとにJAXA(宇宙航空研究開発機構)から宇宙飛行士選抜の書類審査通過の通知が送られてくる。実は弟の日々人が、勝手に応募していたのだった――。

宇宙飛行士として宇宙に挑む日々人と、よくできた弟を遅ればせながら追いかけるダメな兄という構造で物語は進んでいく。昨今あまり流行らない「夢を追いかける」というテーマをまっすぐに見つめた快作である。

注目はやはり日々人演じる岡田将生だ。ホノカアボーイでは"子ども"だった岡田将生だが、本作では"大人"である。宇宙飛行士になるという夢をかなえ、兄を先導する姿は、ホノカアボーイのレオよりも一回りも二回りも大きく、大人の余裕にあふれている。屈託のない笑顔はそのままだが、本作の岡田将生はレオにはなかった"絶対的な自信"がみなぎっているのだ。若者らしいレオも魅力的だったが、迷いのなくなった大人の日々人も魅力的だ。僕が目指すならどう考えてもこっちの岡田将生だろう。さすがにハワイで自分探しをしている年齢ではない。

そんな"大人"の岡田将生だが、一方で"子どもっぽい笑顔"も時折垣間見せる。たとえばロケットに乗り、初めて宇宙へと飛び立つシーンだ。ロケットに乗り込むとき、発射の瞬間、宇宙で無重力になったとき、それぞれのシーンで岡田将生が見せる笑顔は、何かに夢中になっているときの子どもそのもの。一つの作品でこれだけ幅の広い表情を見せられる男は、そうはいないんじゃないだろうか。

結局、2作品を鑑賞してつかんだ岡田将生の魅力とはつまり、大人と子どもの両面を持っていることと、さらにそれを表現できるだけの表情の豊かさなのだろうと思う。振り幅の広さとでもいえばいいのかな。

そんな岡田将生が出演するドラマ「チキンレース」が11月10日より、WOWOWプライムで放送される。詳細はこちらをご覧いただきたいが、交通事故により45年ぶりに目覚めた心は19歳、体は64歳の男・飛田譲(寺尾聰)と、ちょっと不器用な青年看護師の神谷猛(岡田将生)の心の交流を描いた友情と青春の旅の物語だ。笑いあり涙ありのヒューマンドラマで岡田将生が今度はどんな魅力を見せてくれるのか楽しみだ。