いま、全国の視線が大阪の一都市に向けられている。大和川を挟んで大阪市の南に隣接する堺市。国内外と闊達な取引を行う自治都市として繁栄してきた歴史を持ち、府内で人口・面積ともに第2の規模を誇る政令指定都市である。

9/29に投開票が行われる堺市長選挙のポスター

2013年9月29日、現職と新人の争いによる堺市長選挙の投開票が行われる。今回、最大の争点となっているのが「大阪都構想」。今後、地方行政のあり方を議論する上で大きな意味合いを持ち、将来の日本における地方都市がどのような形で発展を遂げていくのか、その行方を占う選挙として堺市住民による決断に全国から注目が集まっている。地方行政のあり方を問う今回の投票。その舞台となる堺市とは一体どのような都市なのだろうか。

いまから1500年以上を遡る時代、堺の地に築造された仁徳天皇陵。その規模はクフ王のピラミッドや秦の始皇帝陵をしのぎ、お墓として世界最大の面積を誇っている。当時、毎日2,000人の人々が15年以上の歳月をかけ築造に励んだ途方もない大事業だったが、その際、日本各地より意欲ある優れた職人が堺に集められ、定住するようになった事が、ものづくりに秀でた商人の町としての歴史の始まりであると語られている。

室町時代から日明貿易の拠点として栄え、琉球貿易や南蛮貿易の中継地として国内以外から多数の商人が集う国際貿易都市であった。日本と世界を繋ぐ商いの玄関口となった堺は、その後も独自の発展を遂げていく。

安土桃山時代から、堺は商人たちによって自治的に運営されるようになった。戦乱から町を守るため周囲に堀を巡らせる環濠都市が形成され、会合衆と呼ばれる堺の有力商人は自治都市・堺を国内屈指の財力を持つ町に発展させていく。古くから、堺は国内の町のあり方の規範として大きな影響を持っていたのである。

また、海運事業のため全国の海沿いの町に対し堺商人が行った莫大な投資は、日本の現在の都市の姿を形作るものとなった。一都市でありながら、様々な面において全国のモデルでありつづけた堺の町。時は流れても、その存在感と役割は脈々と継がれている。

日本の地方行政の行方を占う2013年9月29日の堺市長選挙。近年議論が重ねられている「大阪都構想」を有権者がどのように評価し、町のあるべき姿をどのように考え、21世紀の町がどのような形で発展するよう願って投票するのか、全国から注目されているが、それだけに選挙管理委員会の取り組みにも熱が入っている。

堺市選挙管理委員会では今回の選挙に際し、ポスターを中心とした投票啓発活動を実施。同市としては初めて選挙キャラクターを起用し、堺市出身の女優・谷村美月を前面に押し出したポスターの掲示や、電車のジャック広告などを展開している。なんと、今回の画期的な投票啓発活動では9,330枚ものポスターと401,000枚ものチラシが用意されたという。

シティースケープ(バス停大規模広告)によるポスター掲示。こちらは堺東駅前南海バス停留所(3カ所 7面)

谷村美月の写真と共に「ワタシの未来は、ワタシたちでキメる。」とキャッチフレーズが書かれたポスターは、20代向け女性誌の表紙デザインだとしても違和感のないスタイリッシュなもの。若年層にも選挙を身近に感じさせる試みだといえるだろう。現在、演技派女優として各世代から大きな支持を得ている彼女が、このポスターで投げかける眼差しは投票を呼びかけるインパクトに満ちている。また選挙管理委員会では、投票日の前々日と前日にあたる27日(金)と28日(土)に、堺市在住の全戸約375,000世帯にチラシを配布する。

古くから日本における各都市のモデルケースとして発展を続けた堺の町。時は流れて2013年9月29日。21世紀の都市の未来を有権者が決める日がやってくる。