「合コンに誘われにくいタイプの男」とは?

婚活の第一歩といえば、やはり異性との出会いだろう。どれだけ結婚したいと願い、自分磨きを頑張ったとしても、異性との出会いがないと婚活は始まらない。そして、この出会いというものが、ある一定の年齢を超えると一番難しい。いわゆる友人の紹介や合コンなどといった機会は、年齢を重ねれば重ねるほど減少するものだ。

今年39歳にして、ようやく初婚が決まったサラリーマン男性のYも、婚活に明け暮れていたころは、そもそも出会い自体が少なくて苦労したという。昨年のいまごろのYは、まだ彼女すらいなかったため、友人・知人にお願いして、合コンなどのイベントに誘ってもらおうと必死だったのだが、なぜか誘われることが少なかった。

Yとしては合コンに参加したい気持ちは山々だったため、自分の周りにいる数少ない独身の友人男性に「合コンがあったら誘ってくれ」と声をかけていた。その友人男性もその場では「わかった。誘うよ」と快諾してくれていたのだが、現実はなぜか声をかけてくれなかった。いつも後日になって、「そういえば、こないだ合コンがあってさー」と友人男性に打ち明けられ、そのたびに「えー、誘ってくれよー」とぼやいていたのだ。

Y曰く、当時の自分がその友人に嫌われていたわけではないらしい。そうではなく、単純に自分が「友達から合コンに誘われにくいタイプの男」になっていたのだという。

普通、頻繁に合コンを主催するようなタイプの、いわゆる遊び好きの男性は、いざ合コンの幹事をするとなったら、自分が一番立ち回りやすい「慣れた男性メンバー」を集めようとする。男性側のメンバーに気を遣うほど馬鹿らしい合コンはないとわかっているからこそ、その幹事の周りには合コンの際のレギュラーメンバーが何人かいるものだ。

そういうわけだから、いくらレギュラーメンバー以外の男性であるYから「合コンに誘ってくれよ」と頼み込まれたからといって、そう簡単に声をかけようとは思えない。合コンとは男性陣のチームワークを存分に駆使して、巧妙に女性陣を口説くことを目的とした真剣勝負の恋愛対外試合だ。したがって、その試合の監督である幹事としては、いままで一緒に合コンをしたことがない、あるいは回数が乏しいような、いわゆる実力未知数の新人を、ただ友達だからというだけで気軽に起用できず、結局は試合に勝つための最善策として、実力が計算できるレギュラーメンバーの起用を優先させてしまう。

すなわち、Yが「合コンに誘われにくいタイプの男」から脱却したければ、合コン好きの友人男性にとっての合コンレギュラーメンバーに食い込まなければならず、そのためには自己アピールが必要だ。スポーツの試合において、なんの実績もない新人選手が「俺を使ってくれ」と監督に懇願するだけではなかなか起用されないが、練習試合などで好結果を残し、監督にアピールすれば、いずれレギュラー獲得につながる理屈と一緒だ。

自分が幹事役となって「ダミー合コン」を主催

それに気づいたYは、方針を大きく転換した。合コン好きの友人男性にとっての、合コンレギュラーメンバーに食い込むべく、自己アピールを強化。その具体的な方法は、Y曰く「合コンに誘われたければ、合コンに誘え」だという。

方法は簡単だ。いままでのYは「合コンに誘ってもらう」ことばかり考えていたが、それをあらため、自分が幹事役となって合コンを主催してみることにした。そして、その合コンに誘うメンバーをことごとく女友達の多そうな合コン好きの男性にしたという。

このY主催の合コンは、いわゆる「ダミー合コン」だったという。Yの唯一の女友達(彼氏あり)に正直に自らの狙いと事情を打ち明け、「全員彼氏がいてもいいし、年齢や容姿も一切問わないから、とりあえず女友達を集めてほしい。飲み代はすべて奢るから」とお願いすることで、強引に合コンを実現させた。言わば、女性側とグルになったのだ。

要するに、このY主催のダミー合コンはスポーツにおける練習試合みたいなものだ。Yの狙いは、合コン好きばかりである他の男性たちに「Yと合コンをした記憶」を刷り込ませることと、合コンにおける自分の実力を他の男性たちアピールすることだった。

ちなみに、この場合のアピールとはY自身が目立つことではなく、他の合コン好き男性たちを目立たせることだったという。相手女性よりも他の男性たちを徹底的に褒め、持ち上げ、Y自身は黒子に回って彼らの話におとなしく相槌を打つ。それによって、彼らはみるみる気分が良くなり、結果的に最高の自己アピールになったという。

結局、Yが合コン好きの友人男性にとっての合コンレギュラーメンバーになろうと思ったら、Yが彼らにとっての「合コン慣れした存在」になることが重要だ。だからこそ、Yはダミー合コンを自分から仕掛け、彼らの脳裏に自分の存在を植え付けたのだ。

しかも、合コン好きの男性というのは、周囲から女性に困っていないと思われがちなため、「合コンに誘ってよ」と頼まれることは多くても、合コンに誘われることは意外に少ない。だから、彼らはYから珍しく合コンに誘われたことを非常に喜び、それ以降はギブ&テイクよろしく、Yを合コンに誘ってくることが急増した。

こうして、Yは合コンに誘われる機会を一気に増やし、多くの女性との出会いに恵まれるようになった。そして、そのなかで運命の人に出会い、晴れて結婚に至ったのだ。

<作者プロフィール>
山田隆道(やまだ たかみち)
小説家・エッセイスト。早稲田大学卒業。これまでの主な作品は「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」「雑草女に敵なし!」「Simple Heart」など。中でも「雑草女に敵なし!」は漫画家・朝基まさしによってコミカライズもされた。また、作家活動以外では大のプロ野球ファン(特に阪神)としても知られており、「粘着! プロ野球むしかえしニュース」「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「野球バカは実はクレバー」などの野球関連本も執筆するほか、各種スポーツ番組のコメンテーターも務めている。

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