政府主導のクールビズが始まって今年で9年目。そろそろ皆がクールビズ的装いに慣れても良さそうなものだが、迷走どころか「完全にハズしちゃっている」人が後を絶たない。「ハーフパンツからツルツルに脱毛したスネ。もういろいろアウト」(IT)「うちの業界でポロシャツはないでしょ!コンビニにシャツ買いに行かせました」(金融)さらには「前を歩いていた、淡いグレーのスラックスのおじさま。トランクスの縦じまがバッチリ透けてて、思わず二度見」(マーケティング)などと、今年もオフィス街では珍事が繰り広げられている模様。パーソナルスタイリストとして1,000名以上のスタイリングに携わってきた大山旬さんは「特に評判が悪いのは、シャツ越しに中身が透けてしまっている人。アンダーシャツなしだと……最悪です」と語る。

たとえクールビズとはいえ、ビジネスなのだから相手に失礼があってはいけない。その認識は(多分)誰しも同じはずなのに、どうしてこんなに迷走してしまうのか。その心理として、大山さんは「デザインで勝負しようとしてしまう」ことを挙げている。

「失敗する人のほとんどは、色柄や形など、デザインで勝負しようとする人です。変に個性的な方向性を求めすぎず、シンプルなデザインを選んだほうが良いですね。あとは、適正サイズよりも大きめを選んでしまいがちな人も多いので、体にフィットするものを選ぶこと。そしてアンダーシャツは必ず着る。これを守れば難しいことはありません」

一方、クールビズといえば涼しいことも大切。迷えるビジネスマンに、テクノロジーの力で応えるのがアパレル業界だ。「洋服の青山」では、今期「エクストラクールシャツ」という製品を導入。同青山商事販促部・三浦敦さんは「ポイントは生地です」と話す。

青山商事の店内。「夏テク」と称し、クールビズのキャンペーンが行われている

「この『エクストラクールシャツ』が本領を発揮するのは、真夏の太陽の下ですね。生地に、熱の元となる紫外線と近赤外線をカットする『ダブル・ブラインド効果』加工をほどこしているので、衣服内の温度が高くなりにくいのです。実験でも、未加工の生地と比較すると温度差は明らか。いくら清涼感がある素材でも、衣服内の温度が高ければ継続的な涼しさは感じにくいですからね」(三浦さん)

さらに、生地の風通しもポイントだそう。「1平方センチメートルあたり、1秒間に80ccの風を通す生地を採用しました。これは通常のブロードシャツと比較して、当社比で3倍以上涼しい上に、透けにくさをも両立するベストバランスです」(三浦さん)

すごく力を入れているのはわかるが、そんなに違いがあるものだろうか。許可を得て、ちょっとした実験を行った。扇風機に「エクストラクールシャツ」をかぶせて糸を垂らしてみると、糸は風を受けてなびき始める。通常のブロードシャツでも同じことをしたが、ほとんどなびかなかった。着比べてみると、この差はもっとよくわかる。「エクストラクールシャツ」では風が肌に当たる感覚が分かるくらいに風が通るが、ブロードシャツではそこまででもない。店頭にはサイズ合わせのための試着用シャツがあるので、誰でも試してみることができる。

エクストラクールシャツ(左)と通常のシャツ(右)

最後に、シャツ以外のポイントをまとめておこう。前述の大山さんに解説してもらった。「クールビズはアイテム数が少ないので、パンツにも視線が集まります。ここでも、デザインや色で変化をつけようとすると失敗しがち。適切なサイズが最優先です。また、ジャケット着用時は気づきにくいのですが、ベルトがボロボロになっている方も。一度見直してみると良いですよ」(大山さん)

暑さはテクノロジーの力を借りて涼しく、ビジュアルはコツを押さえて自分らしく。夏の珍事に加担していた人は、ここで一気に巻き返しをはかれるかもしれない。