盛洋子氏

笑顔が出ない、接客や接遇が苦手。そんな私でも相手に「感じがいい」と思ってもらうことはできる? と悩んでいる人も多いはず。できるとしたらどんなことを心がけたらいいのでしょうか。そこで、「人柄育成」を目指す「秘書検定」の指導、審査に当たっている日本秘書クラブ関東支部長・盛洋子さんにお話をお聞きしました。

笑顔がなくとも「強い思い」があれば、相手の心に届きます

秘書検定――といっても、秘書になりたいという方ばかりが受験しているわけではありません。自分の能力をさらに高めたいという意欲を持ったビジネスパーソンや学生が、数多くこの試験にチャレンジしています。

この秘書検定では「必要とされる資質」「職務知識」「一般知識」「マナー・接遇」「技能」の5つの領域でその人の持っている能力が問われますが、その目指すところは「人柄育成」。人柄のいい人とは、その人と会ったとき「感じがいいな」と感じられる人のことだそうです。

というわけで、この秘書検定の指導と審査に当たっている日本秘書クラブの盛さんに、単刀直入に質問をぶつけてみました。

――人見知りで笑顔が苦手。そんな人でも相手に「感じがいい」と思ってもらうことは可能なのでしょうか?

「難しい質問なので、私の経験をお話しますね。秘書検定の準1級と1級の審査には面接がありまして、私も面接官として受験生の方にお会いするのですが、笑顔が出せない方、緊張のあまり震えが止まらない方、そんな方も少なくありません。ですが、そうした方が検定に不合格になるかといえば、必ずしもそうとは限らないですよ」

――笑顔がなくても合格する。それはどんな場合でしょうか?

「その方から"強い思い"が感じられる場合ですね。笑顔が出なかったり、笑顔がぎごちなかったりであっても、その方に『どうしても合格したい』『自分が努力してきたことを見てほしい』、そんな強い思いがあると、その思いが不思議に私たち面接官に伝わって、よい印象をもたらします。

表情が乏しくても、相手を思いやる強い気持ちがあれば決して無愛想には見えません。感じがいいとさえ相手に思ってもらえたりするのです」

笑顔が出ないと自己分析できるだけで有望です

さらに、盛さんはこう続けました。

「笑顔が出ない、コミュニケーションが苦手だ、そんなふうに自分の欠点をきちんと自己分析できているのなら、それはとても有望なことだとも言えますよね。自己分析ができている方なら、"なりたい自分"という目標も立てやすいですよね。あとは、その目標に向かって一歩を踏み出せばよいのですから」

へらへらしていたり、下手に慢心しきっているお調子者よりも、よほど見込みがあるということのようです。

「秘書検定を、その一歩を踏み出す機会に役立てていただけたらうれしいですね。例えば就職試験に備えて検定を受験する方もたくさんいらっしゃいます。相手に感じがいいと思ってもらえる人柄やマナーが身についているかどうか、そうしたことを審査してくれる場は秘書検定のほかにありませんし、就職面接の模擬体験にもなりますよ。

また、自信にもなります。秘書検定の面接という緊張した場面を乗り越えて合格し、それが大きな自信になって就職試験も上手くいった、そうしたうれしいお話もよく聞きます」

笑顔が出ない(自己分析)→なりたい自分(目標)→目標への一歩(行動)→成功体験(自信)――ということのようです。

ちなみに、自社のドライバーに秘書検定の受講を義務づけているタクシー会社もあるとか。接客業であるにも関わらず、「感じが悪い」と指摘されることの多いタクシードライバー。その改善のため、「感じのいい」タクシードライバーを育てるために、秘書検定を活用しているそうです。

「笑う門には福来る! が私のモットーです。笑顔を大切に毎日楽しく仕事をしています」(盛さん)

Profile
盛洋子(もりようこ)
日本秘書クラブ関東支部支部長。株式会社オレンヂファーム代表取締役社長。20代から公益財団法人実務技能検定協会「秘書検定」の指導、審査に携わる。オレンヂファームでは、顧客満足に軸を置いたコンサルティング業務を行っている。