公開初日を迎えたアニメーション作品『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』の初日舞台あいさつが22日、東京・TOHOシネマズ 六本木ヒルズで行われ、坂本真綾、黄瀬和哉総監督、冲方丁氏、むらた雅彦氏ら制作スタッフが集結した。

左から武田あやり、石川光久、冲方丁、坂本真綾、黄瀬和哉、むらた雅彦、有馬綾香

『攻殻機動隊ARISE』は、士郎正宗氏の原作コミックを押井守、神山健治ら名だたるスタッフがアニメ化してきた『攻殻機動隊』シリーズの最新作。総監督には本シリーズの制作スタジオである「プロダクション I.G」を支え続けた黄瀬和哉氏、シリーズ構成・脚本に冲方丁氏を迎え、キャスト陣を一新して製作された。シリーズを通じて謎に包まれているヒロイン・草薙素子の過去と、公安九課=攻殻機動隊の立ち上げを巡る物語が描かれる。

舞台あいさつには、草薙素子役の坂本真綾、黄瀬総監督、冲方丁氏、監督・絵コンテのむらた雅彦氏、プロダクションI.G代表取締役社長であり、製作総指揮の石川光久氏ら制作スタッフ5名が登壇。さらにフォトセッション時には、舞台あいさつに華を添えるべく、Pacific Fairies(レースクイーン)の武田あやりと有馬綾香も登場した。

先行上映会なども含めると舞台あいさつは今回で4度目。どの会場もすべて満席で『攻殻機動隊』シリーズの人気の高さが改めて伺えるが、やはり新シリーズを制作するのは、かなりの苦労があったという。製作総指揮の石川氏は、まず世界と対等に戦えるスタッフの選定に熟考したようで、「ジェームズ・キャメロンやタランティーノも『攻殻機動隊』を見て、アニメーション/アクションを1カットで描ける日本のアニメーターはすごいと評価してくれた。今回は黄瀬を総監督に置き、日本のアニメーションの凄さを世界に伝えようと思った」とその想いを明かした。

また、石川氏は海外スタッフとの話し合いの中で、脚本は冲方氏にやってもらうことを決めていたようで、「いかに(冲方氏に)断りづらい状況を作るのかが最初の一歩だった」と明かすと、会場は大爆笑。その冲方氏は「六本木ヒルズの会員しか入れない店に呼ばれ、親子丼を勧められた。単に食事に来たつもりだったが、石川さんから『これもうまいよ』って士郎さんのメモを渡され、新シリーズのことを知った」とオファー時のエピソードを披露。さらに「石川さんの真剣さと熱意が伝わってきた。『攻殻機動隊』をもう一度再起動するのは大変な作業だが、ここで逃げたらいろんなものが廃ってしまうと思った」と語っていた。

新シリーズにあたり、今回はキャスト陣が一新されたことも大きな話題となったが、坂本は「最初は何の作品のオーディションなのかを知らされていなかった。台詞をテープに吹き込んで監督に聞いてもらい、合格通知をもらった際に作品名と役柄を知らされビックリしました」と当時を振り返る。また、本シリーズで草薙素子少女体やコドモトコを担当してきた坂本だが、再び素子を演じることに驚きつつも、「キャストが変わることについて、皆さんがどう思うかとか私が一番よくわかっているので、そのプレッシャーに耐えられるのも私しかいないと思っています」と、頼もしい一言で会場を沸かせた。

本作では公安9課の誕生秘話が描かれることになるが、冲方氏はまず最初のコンセプトとして「少佐も含めてあらゆるキャラクターを若返らせ、そこで、可愛い素子、カッコいい荒巻、かわいそうなバトーを描こうと思った。この3拍子を黄瀬さんに話したところ、OKが出た。これまでに見たことのない、かわいい素子の姿や表情を描けたのではないかと思います」と自信を覗かせていた。

そのほか、本作で"あるメンバー"が殺害されることについても言及。むらた氏は「誰に殺されたかは一度見ただけではわからないつくりになっている。劇場限定で販売される脚本付きBlu-rayディスクには、誰に殺されたかがハッキリ書いているので、まずは映画を見て犯人を考えて、それから脚本を読んでほしい」と解説。最後に石川氏は「最高のスタッフが集結したが、最強になるかどうかはお客さん次第。これから先、最強になるかをお客さんに決めてもらいますので、応援のほどよろしくお願いします」とファンに呼びかけ、イベントは幕を閉じた。

ちなみに、本作は4部作の1作品目。今後の進行状況について黄瀬氏は「『border:2』の製作はかなり進んでいる。コンテ・シナリオ共に面白くなっており、パワフルな作品に仕上がる予定なので、ご期待ください」と話している。なお、この続編にあたる『border:2 Ghost Wispers』は2013年11月30日より劇場上映されることも発表されている。

『攻殻機動隊ARISE border:1 Ghost Pain』は6月22日より全国で2週間限定公開。

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会