初代「白くま」と有力視されている、「天文館むじゃき」の「なつかしろくま」

地球の温暖化が叫ばれて久しいが、そんな暑苦しさを吹き飛ばしてくれるヒーローと言えばかき氷だ。その中でも、鹿児島発の「白くま」なるかき氷のうまさったらない! 今回、「白くま」のルーツとして伝えられているお店に出向き、その味に迫ってみた。

「白くま」はかき氷の一スタイル

「白くま」のスタンダードスタイルは、かき氷の上に練乳をかけ、その上にアイス、フルーツ、お豆さん、あんこなどがトッピングされているというもの。サックサクのかき氷に甘くとろっとした練乳がからみ、独特の食感が楽しめる。

元々は九州のローカル商品だったのが、近年では全国のスーパーやコンビニで、カップタイプで販売されるようになった。まず誤解しちゃいけないのは、「白くま」は特定メーカーの商品名ではない、ということ。いろんなメーカーから発売されているので、もはや「白くま」というのは、上記のようなスタイルのかき氷を指す一般名詞なのだ。

「白くま」のルーツは諸説あるが、この鹿児島県にある飲食店「天文館むじゃき」だという説が有力だ。店によれば昭和22年(1947)、創業者によって考案されたという(ちなみに、同店の商品名は「白くま」ではなくて「白熊」である)。

「なつかしろくま」を上から見た様子。確かにシロクマである

「白熊誕生祭」で初代「白くま」が復活

発売初期の「白くま」は、今と比べるとかなりシンプルなトッピング。チェリーやレーズンなどが載っていた程度だった。それを上から見るとシロクマの顔に似ていたため、自然にこの名前が付いたそうだ。同店では毎年6月に「白熊誕生祭」を開催し、当時の商品を「なつかしろくま」というネーミングで発売しているそう。今年も6月1日~6月30日に実施し、1個683円(税込)で展開する。

「白くま」の味を決定づけるのは、何といっても氷にかかっている練乳だ。「天文館むじゃき」広報担当の前田真吾さんによると、同店の練乳は「ミルク」といい、その製法は「企業秘密」だという。いや、正確に言うと、「現社長(2代目)の他、数人の血縁しか知らないのです。私にも分かりません」というのだ。まるで一子相伝の北斗神拳継承者ではないか!

しかし、「見た目はとろっとしていて甘さはありますが、あっさりしていてさっぱり食べられる味ですよ」と、その魅力をさりげなくアピール。「天文館むじゃき」では、実に全15種類の「白くま」を販売している。値段は商品によって多少バラつきがあるが、ベビーサイズ(330ml)が483円、レギュラーサイズ(700ml)が683円という。

天文館むじゃきの「白くま」。パックを開けて飾るとこんな感じ。「ベビーサイズ」(330ml)は483円

「白くま」には白豆が欠かせない!

スタンダードな「白くま」では、山盛りになったかき氷に、ミルクと蜜、たくさんのフルーツがトッピングされている。また、トッピングは氷の中にも潜んでいて、中から豆類が突然現れたりすると、お宝発見!的な気分にしてくれる。なかでもフリークの意見では、「白豆(十六寸豆)が入ってないと『白くま』を食べた気にならない」そうだ。この白豆の味、甘納豆を想像していただくと分かりやすいかと思われる。

この白豆が懐かしい感じ。「白くま」かき氷のチャームポイントだ

「天文館むじゃき」の「白くま」は、オンラインショップの他、一部デパートの食品売り場で購入することができる。また、年間30回以上、全国のデパートなどで催される「九州物産展」などにも出展しているようなので、かき氷ファンは是非ともチェックしていただきたい。

「白くま」を製造しているのは「天文館むじゃき」だけではない。今や九州の様々なメーカーが白くまを全国のスーパーなどに出荷して、「白くま」のすそ野を広げてきた。カップ氷はもちろん、アイスバーなどいろんなバージョンが楽しめるのが最近の傾向だ。

コンビニやスーパーのお手軽な白くまを食べながら、「いつか本場の鹿児島で、出来たてを食べてやる!」と、メッカ巡礼のようにその日を夢見たいものだ。

●information
天文館むじゃき
鹿児島県鹿児島市千日町5街区8