政府の地震調査委員会(委員長:本蔵義守東京工業大学大名誉教授)はこのほど、南海トラフにおける巨大地震の発生確率を発表した。それによると、今後30年以内にマグニチュード8以上の巨大地震が起きる確率は、60~70%程度となることがわかった。

同委員会はこれまで、南海トラフの地震について、「東海」「東南海」「南海」の3つのエリアに分けて発生確率を算出してきた。しかし、2011年に起きた東日本大震災を予測できなかったほか、海溝型地震の長期評価に関して様々な課題が明らかになったため、今回から算出方法を変更。南海トラフ全域で統一した発生確率を計算することにした。

新たな算出方法では、マグニチュード8以上の巨大地震の発生確率を、今後10年以内では20%程度、20年以内では40~50%程度、30年以内では60~70%程度、50年以内では90%程度と予測。一方、マグニチュード9.1の最大級クラスの地震については、これまでにデータが見つかっていないことから予測は不可能とした。

南海トラフで次に発生する地震の発生確率(出典:地震調査研究推進本部)

過去、南海トラフでは、約90~150年ごとにマグニチュード8クラスの巨大地震が発生している。同委員会は、正平地震(1931年)以降に起きた地震のデータを基に、次の地震までの間隔を88.2年と推定。前回、南海トラフで起きた昭和東南海(1944年)・南海地震(1946年)から約70年が経過し、残りは約20年となることから、「次の大地震発生の切迫性が高まっている」と注意を促した。

また、南海トラフ沿いの巨大地震の発生前後に、「中部圏を含む西日本で、地震活動が活発化した事実やそのことを示す調査研究成果が複数あることに注意しておく必要がある」と指摘している。

今後については、過去に起きた地震像を明らかにするための調査研究や、大地震の震源域となりうる領域を規定する調査、現在のプレート境界におけるひずみ蓄積状況をモニターする調査などの推進を主張。その上で、地震の多様性を取り入れた、ひずみの蓄積と地震の発生を結び付ける新たな物理的モデルの構築が必要だとしている。

南海トラフは、静岡県の駿河湾沖から四国南岸、九州沖に至る約700kmの海盆。同エリアの地震は、四国や紀伊半島が位置する大陸プレートと、その下に沈み込むフィリピン海プレートの境界面が滑ることで発生する。また、プレート境界面から大陸プレート側に枝分かれした分岐断層が滑ることにより、地殻を大きく変動させたり、局地的に強い揺れを生じたりする場合もあるほか、フィリピン海プレート内で発生する地震や海底活断層で発生する地震などがあるという。