「入善ブラウンラーメン」秘伝みそをベースにした茶色のスープが特徴

富山のラーメンと言えば「富山ブラック」が有名だが、それに続けとばかりにここ数年、「入善(にゅうぜん)ブラウンラーメン」「入善レッドラーメン」「おやべホワイトラーメン」と新しいご当地ラーメンの誕生が相次いでいる。ラーメン通が多い富山県で盛り上がる新ラーメンとかいかなるものか、取材してみた。

「富山ブラック」は、戦後まもなく、食欲旺盛(おうせい)な若者や汗をかく肉体労働者のために作られたしょう油ベースの真っ黒なラーメン。塩味のきいた麺とスープを白いご飯と一緒に食べるのが富山流。ピリ辛風味があとを引く独特のうまさで、富山名物のひとつになっている。

「ブラウン」は海洋深層水と秘伝のみそがポイント

そんな「富山ブラック」に続くご当地ラーメンとして、2010年に誕生したのが「入善ブラウンラーメン」だ。入善町は富山県東部にある日本海に面した人口約3万人の小さな町。町の花である「チューリップ」、日本一大きい言われる「入善ジャンボ西瓜(すいか)」の他、「海洋深層水のまち」としても知られている。

「海洋深層水」とは、深水300メートル以下の海水のこと。浅瀬が短く急激に深くなる富山湾は深層水の宝庫。中でも入善町はミネラルが豊富で良質な深層水に恵まれている。「入善ブラウンラーメン」は、そんな入善深層水を練り込んだ中太麺と、入善産の秘伝のみそにえびのエキスを加えた濃厚なスープからなる、入善ならではのラーメンだ。

仕掛け人は、入善町商工会青年部の有志。数年前からご当地ラーメンの開発に取り組んでいたが、とある式典で試作中だったブラウンラーメンをふるまったところ、「おいしい」「また食べたい」と予想以上の反響が集まり、商品化のための合同会社「善商(ぜんしょう)」を立ち上げて販売を開始した。

あぶりチャーシュー、石焼き風など本格派も

現在、入善町内を中心に約20の飲食店で提供中。ラーメン店を始め、居酒屋、食堂、バーなどで、それぞれの店の味にアレンジされている。

風味豊かな「王虎」のブラウンラーメン

熱々な「らくち~の」の石焼きラーメン

例えば、ラーメン店「王虎(ワンフー)」の滑川店・入善店では、特製みそであぶったチャーシューと、えび粉を加えて風味を高めたブラウンラーメン(700円)を展開。公衆浴場「らくち~の」の食事処では、石焼きの器の上で麺をジュッと焼いてからスープと具を乗せる石焼き風ブラウンラーメン(780円)が楽しめる。どちらも地元のリピーターを中心に人気だという。

お土産用の容器はみそ樽。使用後は再利用できる

また、手軽な袋入りの商品も充実。家庭用(2食入り650円)、お土産用(3食入り1,200円)、贈答用(6食入り2,500円)の3種類あり、入善市周辺のスーパーやサービスエリアで購入できる他、善商のホームページから取り寄せもできる。

実際に食べてみると、ブラウンラーメンの一番の特徴である濃厚なみその香りが感じられ、本格的な味を堪能できる。ちなみに、お土産用は高級感あふれるパッケージで、容器に再利用可能なみそ樽を使用していることもあり、新しい富山土産としても注目を集めている。

辛さがクセになる唐辛子入りの「レッド」

「入善ブラウンラーメン」が好評を集める中、続く新グルメとして「入善レッドラーメン」も登場した。これは入善深層水を加えた塩味のスープに、地元産の唐辛子を練り込んだ中太麺を加えた一品。スープに唐辛子が入っていることはよくあるが、麺に練り込んであるのは珍しく、赤い麺が特徴だ。

ピリ辛好きにはたまらない! 情熱的な「入善レッドラーメン」

味の方は、唐辛子が効いていてピリリとする。一皿食べると身体がカーッと熱くなるが、「辛くてうまい」「クセになる」と人気拡大中だという。この「入善レッドラーメン」も、入善町内ラーメン店、居酒屋などで提供されている他、県内スーパーなどで家庭用(2食入り650円)が販売されている。ピリ辛ラーメン好きの人におすすめしたい。

小矢部自慢の味をトッピングした「ホワイト」

県東部の入善に続いて県西部の小矢部(おやべ)市でも、2012年に新しいご当地ラーメンが誕生した。それが「おやべホワイトラーメン」だ。小矢部市商工会青年部が1年かけて開発に取り組んだ。小矢部市は人口3万人、自然豊かで牧歌的な景色が広がる小さな町。その街並みになじむように、欧州風のメルヘンな建物が多いことでも知られている。

そんな小矢部市発の「おやべホワイトラーメン」の条件は、豚骨スープに肉みそを乗せて、具材には小矢部の食材を使うこと。ホワイトの由来はもちろん白いスープの色から。肉みそを入れるのは、スープそのものの味と肉みそを混ぜた味の両方で二度楽しめるからだという。

小矢部の食材と言えば、まず「卵」。実は、小矢部市は富山県の卵生産シェア80%を占める卵の町。その新鮮でおいしい卵がゆで卵としてトッピングされている。また、チャーシューは小矢部産のブランド豚「メルヘンポーク」を使用。甘みがあって柔らかい豚肉は、ラーメンにもピッタリだ。

「道の駅メルヘンおやべ」はまろやかな味

現在、市内30店舗で提供中。その中から、「道の駅メルヘンおやべ」のフードコートで「おやべホワイトラーメン(800円)」を食べてみた。

豚骨スープに太めのたまご麺、トッピングはゆで卵とチャーシュー、メンマ、ネギ。コクはあるけどあっさりしたスープの中で、濃厚な卵と香ばしいチャーシューの存在感が光る。全体的に優しい味わいで女性も食べやすい。今年春からは、粉チーズをたっぷり乗せた「おやべホワイトちーずラーメン(870円)」も登場している。

「大湖」は揚げたてのトンカツをトッピング

中華料理店「大湖(たいこ)」のホワイトラーメン(880円)は、まろやかな豚骨スープにピリ辛の肉みそを混ぜていただく。トッピングは、メルヘンポークを使ったトンカツ。ボリュームたっぷりで、ガッツリ食べたい人におすすめだ。

小矢部市のシンボルキャラクター・メルギューくんとメルモモちゃんがかわいい

また、家庭でも気軽に楽しみたいという人のために、「おやべホワイトラーメン袋入り(2食入り650円)」も販売中。小矢部産の卵を練り込んだ麺、豚骨スープ、小矢部メルヘンポークを使った肉みそがセットになっている。スープはとってもまろやか。1食1袋ついている肉みそで好みの味に調整するといい。

富山で麺といえばラーメンで、富山ブラックを始めとしたラーメン文化が根づいている。舌の肥えたラーメン通も多いが、そんな県民に支持されているご当地ラーメンなら食べてみたいという人が多いのではないだろうか。富山を訪れたら、「ブラック」に加えて「ブラウン」「レッド」「ホワイト」の味も確かめてみていただきたい。