日本には全国津々浦々にすばらしいご当地みそが存在している。京都の西京みそ、宮城の仙台みそ、愛知の赤みそ、そして、長野の信州みそなど。みそラーメンと言えば、札幌を思いつく人も多いかもしれないが、長野にはこの信州みそを生かしたみそラーメンがある。
700年の歴史を誇るみそでラーメンを!
長野県のみそは、何といっても米みその「信州みそ」が代表格。この「信州みそ」の原点となったのが、「安養寺(あんようじ)みそ」である。
「安養寺みそ」とはどんなみそなのか。鎌倉時代に覚心上人(臨済宗の僧侶。法燈派の祖)が中国から製法を伝えたという言い伝えがあり、臨済宗の安養寺(あんようじ)という寺で作られていたことからこの名が付いた。実に700年以上の歴史を誇るみそなのである。
地元の大豆と地元産の米を使った国産100%のみそで、2年間じっくり熟成し、大豆の風味が豊かな中甘口に仕上げている。まろやかで何よりも飽きがこない味。みそラーメンを作るには最適の素材のようである。 このみそをフル活用し、町おこしを仕掛けたのが地元のラーメン店主たちだ。2007年に6店舗で「佐久拉麺会」を結成。半年間の試行錯誤を繰り返して、「安養寺ら~めん」を完成させた。
「佐久拉麺会」によると、このラーメンを展開する店舗は、現在では16に増加。各地で開催される信州物産展でも、行列ができるほどの人気を誇っている。
安養寺みそ80%以上のスープが絶対条件
着実にサクセスストーリーの階段を駆け上がっているように見える「安養寺ら~めん」だが、開発は難航を極めたという。それもそのはず。集まった6店はそれぞれ市内の有名ラーメン店。「豚骨でいくか?」「いやしょう油だ!」と店のプライドをかけた議論が続出したという。
そうした中で「譲るところは譲る」試行錯誤を繰り返し、やっとのことで「ひな形」が完成したという。デビューは佐久市で毎年行われる秋祭り。ここで提供された「安養寺ら~めん」には、とんこつベースで安養寺みそを付けて焼いた鶏肉がトッピングされていた。約2日間で販売する予定がなんと1日で900食を完売するなど、大成功デビューを飾ったのだった。
この「安養寺ら~めん」の絶対条件はスープに安養寺みそを80%以上使っていること。麺や具材などは各店の裁量に任せているので、オリジナリティを出しやすいメニューとも言える。
開発の中心人物、金子祐一さんが営むラーメン店「七代目 助屋」では信州産のリンゴで甘みを添え、たっぷりのニンニクで風味付けをしている。食べごたえ満点! 安養寺みそのつけ麺も展開している。
Information
七代目 助屋
長野県佐久市中込2991-1
もう一店舗、紹介しよう。佐久一萬里温泉というホテルの1階にある食堂「ととろ亭」で提供される「安養寺ら~めん」は、みそにハバネロが練りこんであり、大変刺激的。更に個性的なことには、佐久特産のコイを唐揚げにしたものが、トッピングとしてラーメンに載っている。歯ごたえがあり、美味である。
Information
ととろ亭
長野県佐久市中込3150-1
近年、日本各地で「ご当地ラーメン」作りが活発だが、安養寺ら~めんは地元産の素材をうまく使いこなし、あまり奇をてらわずにスタンダードにおいしく(飽きることなく)食べられるのがいい。着実に足場を固めて、歴史あるみその名にふさわしい、ロングセラーに育っていただきたい。