これが原因で妊娠できなくなる?

産婦人科女医の宋美玄(そん みひょん)医師。「『妊娠できるか診てください』という患者さんがいますが、不妊の原因を探る検査はあっても妊娠できるか否かを判定する検査はないのが現状です」

「女性は何歳まで妊娠できるのか」という度々話題に上る問いかけに、明確な答えが出た前回。今回は、近年不妊治療専門クリニックに通う患者が増えているという現状を踏まえ、どういった原因で"不妊"になるのか、「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」の著者で産婦人科医の宋美玄医師に聞いてみた。

まず挙がったのが「子宮内膜症」。不妊の2~3割はこれが原因になるという。子宮内膜症とは、子宮内にしか存在していないはずの子宮内膜組織が子宮外、例えば卵巣や直腸、腹壁などに広がり、強い生理痛などを引き起こす病気。子宮内膜症によって子宮や卵巣が癒着し、それによって排卵障害になったり、着床を阻害するなどの影響が出るため、不妊の原因となり得るのだ。

そんな子宮内膜症だが、対策はある。「まだ妊娠を希望していなくても、低用量ピルを飲むことで子宮内膜を少しでも正常な状態に保つことができます」と宋医師。未婚で将来妊娠を希望する女性にとっては朗報だ。ただし、ピルの服用に関して「毎月の排卵をピルで止めることで、卵子の無駄遣い(無駄な排卵)を防ぐことができる」なんていう話を聞くことがあるが、これに関しては「誤った情報」とのこと。卵子の数は生まれたときに既に決まっていて、年齢とともにその数は減っていくだけ。それを食い止めることは現代の医療技術を持ってしても不可能なのだ。

増加している性感染症も不妊の原因に

未婚の女性も、将来妊娠を希望するなら定期的な婦人科検診は必要だ(写真はイメージ)

あと、注意すべきは「クラミジア」。10代後半から20代にかけて感染者が増加している性病の一種だ。女性も男性も感染し、女性側の症状としてはおりものの増加や性交痛、不正出血などが挙げられる。しかし、無症状も多く、気づかないケースが多い。「クラミジアを放っておくと卵管閉塞になる可能性があります。こうなると、卵子と精子が出あわない、つまりは受精しないことから不妊の原因にもなります」。

さらには、「生理不順も見逃せません」。なぜなら、「生理不順の原因となるホルモン異常の中には、卵子の生育異常や排卵障害という不妊因子が隠れていることもあります」。他には「月経時の出血が異常に多い過多月経も子宮内膜症や子宮筋腫が疑われるため、注意が必要です。定期的な婦人科での検査を心掛けてください」。


宋美玄(そん みひょん)医師

産婦人科女医・性科学者
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科を卒業。同年医師免許取得、大阪大学産婦人科入局。2007年川崎医科大学講師就任、2009年イギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。
2010年には日本国内の病院にて産婦人科医として従事する傍ら、「女医が教える本当に気持ちいいセックス」を上梓。50万部突破の大ヒットとなる。
2012年には第一子となる女児を出産。現在、フジテレビ「とくダネ!」火曜日レギュラーコメンテーターとしても出演中。
宋美玄オフィシャルサイト

撮影: 竹内洋平