2006年に『時をかける少女』、2009年に『サマーウォーズ』で話題を呼んだ細田守監督の最新作『おおかみこどもの雨と雪』。2012年7月に公開されて以来、340万人を超える観客動員を数え、国内外の映画賞を席巻するなど、まさに2012年を象徴する映画として大きな注目を集めている。
"おおかみおとこ"との恋をきっかけに、2人の"おおかみこども"の母となる主人公・花。恋愛・結婚・出産・子育てといった13年間をおよそ2時間に凝縮した細田監督の力作が、Blu-ray/DVDとなって2013年2月20日にリリースされる。そこで今回は、Blu-ray/DVDの発売を前に、細田監督が語った作品の魅力や裏側を紹介していこう。
細田守監督が語る『おおかみこどもの雨と雪』
――『おおかみこどもの雨と雪』が公開されてから半年が過ぎました
細田守監督「こんなにたくさんの方に観てもらえるなんて思っていなかったのでビックリしています。先日東宝さんに聞いたら344万人なんですよ、公式見解が。今までにそんな映画なんて作ったこともないじゃないですか。本当にビックリですね」
――周りの反響はいかがでしたか?
細田監督「この映画は子どもを育てるお母さんが主人公なんですが、普通『おおかみこどもの雨と雪』といったら、雨と雪、つまり子どものほうが主人公じゃないですか。子育てをモチーフにした映画って、世界映画史でもほとんどないと思うんですよ。なので、あまりジャンル化できない、カテゴリ化できない映画なんですけど、そういった新しい試みのようなものをこれだけたくさんの人が面白がってくれたことはすごく驚異的なことだし、日本人のエンタテインメントに対する懐の広さを感じました」
――『時をかける少女』『サマーウォーズ』に続く細田監督の作品として、公開前から大きな期待が寄せられていましたが、そのあたりにプレッシャーなどはありましたか?
細田監督「そういったプレッシャーはあまり感じなかったです。やはり作品というものは、それぞれ別のものですから。もちろん、作品そのものが受け入れてもらえるかどうかというプレッシャーはありました。作品の公開が夏だとすると、3月、4月くらいにアフレコをするのですが、その頃にすごい不安を感じるんですよ」
――不安ですか?
細田監督「たとえば『サマーウォーズ』だったら、親戚が主役の作品なんて誰が観るんだよって思ってしまったり。最初の頃は、親戚が主役だから面白いんだって思っているんですけど、それが作っていくうちにだんだんとマヒしてくる。そうすると、それを面白いと思っているのは自分だけじゃないのかって。だって、親戚なんて普通は鬱陶しい存在ですからね。今回の『おおかみこどもの雨と雪』も、子育てをするお母さんが主役という、世界映画史上で類を見ない作品だからこそ面白いんだと思いつつも、同じような作品がないのは、何らかの理由があるんじゃないかと……」
――面白いと思ったポイントが実は……
細田監督「そうそう。これまでに誰も手を出していないということは、自分では気づいていない致命的な落とし穴があるんじゃないかって思えてきちゃうわけですよ。なので、作品ごとのプレッシャーは毎回感じていますが、前作がヒットしたから今回も……みたいなプレッシャーはないですね。自分が監督であろうとなかろうと、面白い映画だったら受け入れられるだろうし、面白くなかったら観ていただけないだけの話なので」
――あくまでも、それぞれの作品で勝負という感じですね
細田監督「原作が何百万部の大ヒット作品というわけでもなく、すごく有名な巨匠が作った映画というわけでもないですから、映画そのものが面白くなければ観てもらえない。僕の名前だけじゃムリですよ」
――宣伝のチラシには「全世界待望の細田守監督最新作」と書かれていますが……
細田監督「これぐらいおおげさに書かないと注目さえしてもらえませんから(笑)」