数ある企業コラボ商品の中でも、息が長いのが「UCCミルクコーヒー エヴァンゲリオン缶「人類補缶計画」(1996年~)」。作中のキャラクターたちが缶に印刷されているおなじみの商品だが、これはテレビアニメ版のミサトの部屋にUCCミルクコーヒーが登場していたことをきっかけに、UCC側が旧劇場版の公開に際して生産したのがはじまりだという。

また、新劇場版『序』のヒットを機にスタートしたローソンとのタイアップ「ローソン×ヱヴァンゲリオンキャンペーン(2009年)」が注目を集めたのも記憶に新しいところ。上述のUCCコラボ缶をローソンで見かけた人も多いかもしれない。ローソンがアニメ作品のオリジナルのタイアップ商品を展開し、それらを購入すると店頭でクリアファイルがプレゼントされるという仕組みは近年さまざまな作品とのコラボレーションで見られるようになったが、これは『ヱヴァ』タイアップの成功から始まったものだった。

「UCCミルクコーヒー エヴァンゲリオン缶「人類補缶計画」」

「ローソン×ヱヴァンゲリオンキャンペーンのタイアップ商品

新劇場版『Q』の公開に際して復活を遂げた「エヴァンゲリオンチップス」は1997年に初展開された商品

エヴァとのコラボで箱根が"第3新東京市"に

エヴァの舞台となる「第3新東京市」には、箱根町に実在する地名が多数登場することを受け、箱根町とのコラボレーション企画「箱根町 as 第3新東京市(2009年)」が開催された。若年層の観光客を誘致する狙いで始まったこの企画は「箱根補完マップ」の無料配布や、廃校を「第壱中学校」に見立て会場としたイベントなど、巧みな試みにより多くのファンを集めた。

また、このコラボの後、2011年にはトヨタ自動車が参加し、「ヱヴァンゲリオン×箱根町×TOYOTA 電力補完計画 in 第3新東京市第壱中学校」と銘打ったイベントを展開。「プリウスPHVが特務機関NERVの公用車に認定された」という設定のもと、NERV仕様のプリウスの展示などを行った。

「箱根町 as 第3新東京市」

「ヱヴァンゲリオン×箱根町×TOYOTA 電力補完計画 in 第3新東京市第壱中学校」

富士急ハイランドには、「「EVANGELION WORLD」実物大初号機建造計画」が常設されている

アミューズメント業界でも「EVA」が活躍

テレビアニメ版放映が終盤にさしかかった1996年ごろ、発売されたゲーム機「セガサターン」。本編制作と同時期に別のスタッフが制作した同ハード向けソフトを、1998年ごろからには『新世紀エヴァンゲリオン エヴァと愉快な仲間たち』をリリースした。後者は「7ならべ」などのライトなゲームにキャラクターを登場させたもので、Win版移植時には脱衣麻雀ゲームも追加されたのは、現在の作品を思うと意外な展開と言えそうだ。

また、別の分野では、パチンコ・パチスロが挙げられていた。2000年代初頭はアニメを題材とした台がヒットし始めた時期で、同作品も2004年に『CR新世紀エヴァンゲリオン』を皮切りに、20種以上の台がリリースされた。原作の設定とゲーム内容がマッチしたこともあり、これまで同作品を知らなかったサラリーマン・中高年層がこれをきっかけにアニメ本編を見る現象も起こったという。それを裏付ける反響として、初代の台が稼働した翌月にはアニメのDVD売り上げが前月の数十倍に跳ね上がったのだという。

1997年発売のゲームソフト『鋼鉄のガールフレンド』。オリジナルキャラ「霧島マナ」が登場するパラレルワールドが舞台となった

『CR新世紀エヴァンゲリオン』

競馬をテーマにハイクオリティなムービーが展開された「JRA補完計画」(2012年)

ファッション・アートにまで広がる「EVA」の世界

今回の展覧会で、膨大な量の「EVA」コラボの選定を行ったのが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版公式プロジェクト「RADIO EVA」。同プロジェクトはアパレルを中心に、「日常に溶け込むヱヴァンゲリヲン」というスタンスを軸に、実用的アイテムを多数展開している。 同プロジェクトが手がけたものは多数展示されていたが、中でも目を惹いたのが大手ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」クリエイティブディレクターのJUN WATANABEによる綾波レイの油絵。そのほかにも、近年注目を集めたJINSとのコラボ眼鏡などで、キャンペーン用のキャラクターイラストの衣服スタイリングを手がけるなど、多数の異ジャンルとのコラボ企画に関わっている。所属するコミュニティによらず「EVA」という共通言語でファンを結ぼうとする同プロジェクトの試みは、着々と進行していると言えるだろう。

JUN WATANABEによる綾波レイの油絵。この図版を採用したTシャツなどが展開されている

土屋隆亮によるステンドグラス「INVOID」

「RADIO EVA」で展開されている衣服

この展覧会は100品目というボリュームの展示物で構成されているが、一部を除き、ほぼ全て一般に向けて展開されているものだという点がやはり興味深い。同作品を新劇場版から知った人も、テレビアニメ版からずっと追いかけ続けていた人も、立場によらず「EVA」の持つ歴史とその魅力を再確認できる内容となっていた。

秋月工房の「綾波レイ 等身大フィギュア」(2007年)

鋼鉄職人の渡辺薫が制作した「ロンギヌスの槍」。この作品のみ館内で一般撮影が可能

国内最高峰のカーレース「SUPER GT」にアニメ作品の"痛車"が参戦するさきがけとなった「EVANGELION RACING」(2010年)

バンダイの「ガシャポン」(1996年)

タミヤとのコラボ「ミニ四駆」(2010年~)

バンダイによる「エヴァ」のプラモデル「LM(リミテッドモデル)シリーズ(1996年)

濱元隆輔が手がけた公式デフォルメキャラ「ぷちえう゛ぁ」(2007年~)

「RAH・BE@RBRICK・KUBRICKシリーズ」(2006年)

同展の会期は1月21日(月)まで、開館時間は10時~21時。入場料は一般500円、学生400円、小学生以下無料となっている。「EVA」という作品に心ひかれるものがある人は、機会があればぜひ足を運んでみてほしい。

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