推定気温零下25℃の中、ひたすら極寒と闘う

北半球が最も寒くなる2月。北海道で最も寒いといわれる十勝の陸別町(りくべつちょう)にて、暖房もなしに屋外で一夜を過ごすという、命がけの人間耐寒テストが開催される。そんなツラ過ぎるイベントに誰が参加するの?と聞きたくなるのが一般的な感覚だろう。しかし2013年に第32回目を迎え、2012年の参加者は350人と異様な人気ぶりなのだ。

冬の北海道の魅力を伝える「しばれフェスティバル」のメインイベント

人間耐寒テストは、陸別町が毎年2月に開催する冬の祭り「しばれフェスティバル」のプログラムのひとつ。“しばれる”とは、北海道の方言で“凍てつく”という意味で、極寒の地で開催される祭りのメインイベントと言ってもいいだろう。

ちなみに陸別町は、日本一寒い町として有名だ。冬のピーク時にはマイナス20℃を記録する日も珍しくなく、2000年にはマイナス40℃を下回った記録がある。「下回った記録がある」とはおかしな表現に思われるかもしれない。しかし、計測器で測定できる最低温がマイナス40℃であるため、正確な気温が記録されておらず、さらに気温が低かった可能性もあるのだ。

しばれフェスティバルは、あえて最も寒い季節・寒い場所に全国から人々を募り、冬の北海道の自然を体感してもらうことを目的に、2月の上旬、2日間に渡り開催されている。

参加者は年々増加しており、2012年2月開催時には、約8,000人が来場した。人口約2,500人の小さな町で、最も過酷な時期に、最も多くの人々が集う人気フェスティバルの最大の呼びものが、人間耐寒テストなのだ。

冬の夜空を照らすしばれフェスティバル恒例の花火

暖房無しの冬の屋外で一夜を過ごす

人間耐寒テストは具体的にどのような内容なのか。まずイベント当日に、いきなりノリで参加できるような甘いものではない。事前の予約が必要なのである。エントリー料がかかるが(2012年開催時は4,000円)、その中には2食分の食費と共に「保険料」が含まれていることを、念のために説明しておきたい。

まず当日午後3時頃からエントリー受付が行われ、10時ぐらいまで花火やアトラクションで盛り上がる。そして翌朝の7時まで、ひたすら極寒と格闘する時間となる。見事7時まで持ちこたえた参加者には、勇者としての「認定証」が授与されることになっている。

もちろん屋外で寒さと戦うわけだが、いきなり吹きさらしの大地に放り出されるわけではない。陸別町の人々が考案した「バルーンマンション」なる球状の住居が用意され、その中で一夜を過ごすのである。バルーンマンションはテントのようなものと認識していただければいいだろう。寝袋や衣類は各自で準備することになっている。

ズラリと並んだバルーンマンション。この中で一夜を過ごす

寒さが人を変えるのか? 異様に多いリピーター!

人間耐寒テストも2013年開催で32回目を迎えるが、これまでのべ4,300人が参加した。圧倒的に道外からの参加者が多く、しかもリピーター率が異様に高い。2012年のデータを見ると、350人中なんと347人が認定証保持者、つまりリピーターなのである。限界を超える極寒の一夜は、人を「寒さ大好き人間」へと変えてしまうのだろうか?

試しに一度は極限の寒さを味わおう……そんな好奇心を持つ人は多いと想像する。しかし、2012年の凄(すさ)まじいリピート率は、極限のため好奇心を超越してしまった人々が多数いることを示している。

北海道の最も寒い夜、人々はバルーンマンションの中で一体ナニを体験するのだろうか……。身を持ってそれを悟りたいという方は、2013年2月にチャレンジしてみてはどうだろう? ただし無理はせず健康を第一に考えること! 認定証獲得を目指し、今のうちから身体を鍛えておくのもいいかもしれない。

参加者はみんな楽しそう。極寒の一夜はどんな体験なのだろう