生命保険って、身近であるにもかかわらず、仕組みが複雑でわかりにくいと感じる人が多いようです。
いったん保険に加入すると、何年間も保険料を払い続けることになり、その総額は数百万円になることもあります。もしよくわからないまま加入してしまったら、大切なお金がムダになってしまうことにもなりかねません。
そこで今回は、生命保険の基本を抑えて賢く利用する方法を考えます。
死亡保障保険は、亡くなったときに保険金を遺す必要のある人が加入すべき
まず、実際にどのくらいの人が生命保険に加入しているか見てみましょう。マイナビが20代、30代の人を中心に行ったアンケート調査では、加入している人が53.2%と半数以上を占めました。このうち、死亡保障の保険に加入している人が74.1%と最も多く、次が医療保険・特約の62.8%となっています。
一方で、回答者の74.4%が未婚なので、多くの人がニーズに合わない保険に加入している可能性が高そうです。
というのは、死亡保障の保険は、亡くなったとき遺族に死亡保険金を遺す必要のある人が加入すべきものだから。つまり、必要なのは扶養家族がいて家計を支えている人だけです。具体的には子どものいる人、あるいは専業主婦の妻を持つ人です。シングルの人は、基本的に死亡保険は必要ありません。
アンケートでは死亡保険に加入した理由として「家族に勧められたから」「保障内容が充実していたから」「保険料が安かったから」「社会人になったから」というのが上位に来ていますが、本来なら「子どもが産まれる(産まれた)から」というのがトップに来てほしいところ。
シングルや、既婚でも子どものいない人は、自分の加入しているのが死亡保障の保険かどうか、確認してみてください。
医療保険・特約は誰にでも必要、安さと保障内容の充実度のバランスが大切
次に医療保障の保険について見てみましょう。
医療保険・特約は、「入院1日あたりいくら」という形で給付金が支払われます。病気やケガで入院する可能性は年齢や性別にかかわらず誰にでもあるので、誰にでも必要な保険といえます。
アンケートでは、医療保険・特約に加入した理由として「保険料が安かったから」と「保障内容が充実していたから」の両方が約34%で並んでいます。実は保険料と保障内容の充実度は相反するもの。保障が充実していれば保険料は高くなるし、保険料を安くしたければ保障はどうしても絞られます。ですから、この2つのバランスをとることが大切です。
入院する可能性は誰にでもあるとはいえ、日本では国民すべてが何らかの公的健康保険に加入しているので、かかった医療費の自己負担は3割ですむし、1カ月の医療費の自己負担には9万円弱という上限があります。
さらに、サラリーマンで会社の健康保険組合に加入していれば、自宅での長期療養でも手当金が受け取れるほか、組合独自の上乗せ給付があることもあります。
ですから、自分で備えるべき医療保障は必要最小限でOK。入院日額でいえば、5,000円で十分です。自営業者やフリーランスなどの場合は、入院と減収がイコールなので、1日1万円でもいいかもしれません。
「保障は掛け捨てでリーズナブルに、貯蓄は貯蓄で別に行う」がセオリー
保険には、掛け捨てタイプと貯蓄にもなるタイプの2つがありますが、掛け捨てはイヤという人が多いようです。アンケート結果でも「掛け捨てより貯金にもなる保険のほうがよい」が48.4%と約半数。でも、「分からない」という人も33.6%います。
結論からいうと、掛け捨てのほうがおすすめです。
というのは、払った保険料のうち貯蓄として運用される部分の利率(予定利率)が現在、非常に低いからです。予定利率は加入したときのものが解約するまで適用され、これから先、世の中の金利が上がってもアップしません。今、貯蓄型の保険に入っても貯蓄としてのメリットはないのです。
20代、30代の人の親世代には、予定利率が高くて保険が貯蓄にもなったころのイメージを持っている人もいるかもしれませんが、時代は変わっています。保障は掛け捨てでリーズナブルに、貯蓄は貯蓄で別に行う、というのが低金利時代のセオリーです。
アンケートでは、どのようなルートで保険に加入したかについて、「保険会社の営業職員を通して」がトップになっています。もちろん、良心的な営業職員もたくさんいますが、ここまで読んでいただいておわかりのとおり、「社会人になったら保険に入るのが当たり前ですよ」とか「保険は貯蓄にもなりますよ」といわれて入った場合は要注意。もしかすると、必要以上の保障額の保険に入っているかもしれません。一度しっかりチェックしてみてください。
2番目に多かったのが「親が加入している(加入していた)」。この場合、どんな保険に入っているのかわかっていないケースが多いのではないでしょうか。保険は、自分で請求しないと保険金や給付金を受け取れません。保険の中身を知らないと、請求しそびれて、本来受け取れるはずのものが受け取れないということになってしまいます。そうならないために、どんな保険に入っているのか調べておく必要があります。
保険ショップ(総合代理店)での加入は約12%。保険ショップは各社の保険を比較できるのがメリットです。利用する場合、できれば2、3社行ってみて自分のニーズに一番あった提案をしてくれるところを選ぶとよいでしょう。
ネット・電話による通信販売で加入した人は合わせて約11%とまだ少数派ですが、保険料が安いというイメージは70%以上の人が持っています。通販の保険は保険料が安いだけでなく、必要な保障額をネット上で試算したり、わからないことをコールセンターに問い合わせたりすることで、自分に合った納得のいく保険を選べます。これからはネットでの保険加入が増えていくのではないでしょうか。
執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。新著『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)も発売された。また、リニューアルされたホームページのURLは以下の通りとなっている。
http://www.m-magai.net/