遠目には京都の大文字とそっくり

京都の夏の風物詩として知られる“大文字送り火”。実際には「五山送り火」の中の1つで、毎年、お盆が終わる8月16日に行われ、多くの観光客が訪れている。その大文字焼きが、実は高知県中村市でも行われているのをご存じだろうか?

正式には「大文字の送り火」といい、四万十市間崎地区の盆行事だ。京都と異なるのは、旧暦の7月16日に行われる点。旧暦に従っているため、毎年行われる日が違ってくる。ちなみに、2012年は9月2日だった。

四万十市観光協会の小川元さんによると、「今年は特別で、だいたいは8月の終わり頃に行われます」とのこと。いずれにしても、京都と同様に、夏の終わりを告げる風物詩として市民の生活になじんだ行事になっている。

その歴史は約500年も前にさかのぼる

大文字の送り火が行われるのは四万十市の十代地山で、昔から山の神を祀っていた、通称「大の字山」の中腹。緑に覆われた山の草木を大の字形に掘っている様は、京都の大文字山とそっくりだ。「送り火の当日は、そこに地区の各戸から集めたたいまつを配してたき火を行います」(小川さん)。

京都から離れた四万十市でこの行事が行われるようになったのは、約500年前だと言われている。小川さんは、「応仁の乱を逃れて中村に下った一條教房(のりふさ)の息子の房家(ふさいえ)が、教房と祖父・兼良(かねよし、あるいは、かねら)の精霊を慰めるために、京都を懐かしんで始めたと伝えらています」と話してくれた。

しかし、高知が始めたものが京都に伝わったという別の説もある。真偽はハッキリと分かっていないようだが、いずれにしても古い歴史があることには間違いはない。

町のシンボルでもある四万十川

四万十川には水量が増えると沈む沈下橋がある

ベストビューポイントは「野鳥公園」

このように長い歴史を誇る中村市の大文字の送り火が、京都と違う点がもう1つある。それはスケールが小さい点で、口の悪い人は「小文字焼き」と言ったりするようだ。そもそも町の規模が違うのだから、それは仕方のないこと。ある意味、観光目的ではない素朴なままの送り火の風情が残っているので、こちらの方が風情あると言っていいかもしれない。

その送り火を見るベストビューポイントが、トロ池を挟んだ対岸にある「四万十川野鳥自然公園」だ。ほどよい距離がある上に、ちょうど目の前に広がることから、地元の人もおすすめのスポットになっている。

なお、トロ池は野鳥の生息地・飛来地としても有名。観察小屋や遊歩道、野鳥解説板などがあり、オオヨシキリやホオジロなども生息している。大文字の送り火を見るついでに、こちらの観光も合わせて楽しむといいかもしれない。

近隣にあるトンボ自然公園

四万十川をはじめ多数の観光スポットがある!

四万十と京都の送り火の共通点は、運営を担当する地区住民が7組に分かれ、各組が1年交代で当番にあたるという点だ。「現在は京都とここだけしか残っていない仕来りです」と小川さん。

こうした伝統が残るのも、四万十市が「土佐の小京都」と呼ばれる町だからかもしれない。京都を模して町を形成した際に碁盤目となった道、そして「東山」や「鴨川」といった地名からも歴史を感じることができる。

また、大文字が行われる四万十市には、日本最後の清流と言われる四万十川、沈下橋やトンボ自然公園など、人と自然が調和した暮らしから生み出された多くの観光スポットがある。もし大文字の送り火を見に行かれるのなら、それらの観光もぜひ忘れずに。

四万十川ではカヌーも盛んに行われている

● information
四万十川観光協会