眠れない人が多いという。平成20年度に行われた厚生労働省の「こころの健康科学研究事業」の"不眠症の疫学調査"によると、10~30%の人に睡眠障害が見られ、同調査でも13.5%に不眠症が見られたのだそうだ。

正しい睡眠周期と不眠の関係

眠れないというのはどういうことか? 人間、寝ればいいというものではない。睡眠時間には個人差があり、睡眠時間が4時間程度でも平気な"ショートスリーパー"と呼ばれる人たちや、十数分程度の短い睡眠を断続的にとる"マイクロスリープ"という睡眠法が適している人もいる。問題は睡眠の質なのだ。

一般的に睡眠とは「浅い眠り→深い眠り→浅い眠り」という周期がおよそ90分で繰り返されている。浅い眠りは"レム睡眠"と呼ばれ、体を徹底的に休める一方で、脳は起きている。深い眠りはノンレム睡眠と呼ばれ、脳は完全にオフ状態になり、体は起きている。この周期がきちんと繰り返されていることが質の良い睡眠には必要だ。睡眠は長さではないのだ。そしてそれがそう上手くいかないのも、また人生なのだ。

睡眠の質は寝ている間の動きでチェックする

睡眠の乱れは昼間のストレスや生活習慣の乱れなどさまざまな要素で発生するが、原因が何であれ、いくら眠っても寝た気がしなかったり昼間眠くてたまらなかったりすれば、それは睡眠の質が悪いということだ。

起床時間、就寝時間は一定か? 睡眠時間は十分か? 睡眠の周期は正しいか? それが分かれば、不眠の原因もはっきりする。しかし毎日の睡眠時間なんて普通は測っていないだろう。起床時間はともかく、就寝時間が何時かを何週間もきちんと記録するなんてできない。おまけに睡眠の周期? たとえ周期がおかしくなっているといっても、寝ている自分には分かろうはずもない。本人は気持ちよく寝ているつもりなのだ。しかしいつも眠い。何かがおかしい。どうすればいいのか?

寝ている間、レム睡眠とノンレム睡眠で体の反応は異なる。朝になったら足が枕に乗っているような寝つきのひどい人も、寝ている間ずっと動いているわけではない。レム睡眠時は体は完全に弛緩して、動かないし寝返りを打つこともまずない。レム睡眠からノンレム睡眠へ変わると、ノンレム睡眠の中で浅い眠りから深い眠りへと脳はゆっくり変わっていく。その途中で寝返りをしたり、体を動かしたりする。だからジッとしている時と動いている時の周期がおよそ90分周期ではっきりしていれば、脳も体もしっかり休んだ質の良い睡眠ということだ。

眠っている自分の状態を記録する「睡眠計」

オムロン「睡眠計 HSL-101」

オムロンの「睡眠計 HSL-101」は一種のレーダーだ。睡眠専用レーダーである。飛行機や船ではなく、寝ている人の動きを、人体に安全な微弱電波を使って記録するハイテクだ。

寝つきのいい人は目をつぶって5分もかからずに、眠りに落ちる。しかし寝つけない人は最初の何十分もごそごそと体を動かすだろう。その動きが睡眠計にはしっかり記録される。寝つきが悪いと自覚のある人でもどのくらいの時間眠れずにいるのか、分かっている人はあまりいないだろう。睡眠計はその時間を測るのだ。

布団の中の体の動きを電波センサーでモニターし、記録していく。そして、ここがポイントだが、そのデータをネット上の健康管理サービス「ウェルネスリンク」に送ると、グラフ化して分析してくれる。そして寝ている間の体の動きから、自分の睡眠周期をチェックすることができ、睡眠の特徴を教えてくれるのだ。

使い方は非常に簡単で、電源を入れて枕元に置くだけである。すると、本体正面から150センチの範囲に電波が届き、その範囲内の動きをモニターする。寝る時にスイッチを押してもいいし、オート設定にしておくと、毎日決まった時間から測定が始まる。起きたらスイッチを押して測定を止める。睡眠中の眠りの状態と睡眠時間などがそれで記録される。データはUSB経由でパソコンかAndroidスマートフォンでウェルネスリンクに転送する。

寝る時に"おやすみ"ボタンを押すかオートモードでは、指定の時刻(デフォルトでは22時)になるとセンサーが起動する。起床時に"表示ボタン"を2回押すと測定が終了する

センサーが起動すると、約40秒間、位置を確認してから測定を開始する。測定中は中央のアンテナが点滅する

眠りを記録し、眠りの質を向上させる

正直、私は不眠で苦しんだ記憶がまったくなく、寝つきの良さではのび太と勝負しても勝つ自信がある……あるのだが、かといって昼間にまったく眠くならないかというとそれはない。眠い。延々と眠い。原因は分かっている。無呼吸症候群、要はイビキだ。太っている上に酒を飲む。脳はアルコールで麻酔がかかったように麻痺し、睡眠周期が崩れる。崩れて疲れるから昼間も寝ようとする。睡眠時間は足りていても、中身がダメダメなのだ。そして昼間うたた寝するから、夜、寝つきは良くても睡眠自体は浅い。

おまけに、私のイビキのあおりで嫁も眠れずに苦しむ。

1人用なので、測定する時は注意が必要だ。睡眠計の高さを布団やベッドの高さに合わせ、胸のあたりにセンサーを向けて測定する

朝、グバアッ!とクジラが息継ぎするように起きた。暑い。信じられない暑さだ。部屋の中がサウナのように蒸れ返っていた。布団が絞れるほど汗で濡れていた。

朝の5時。隣りにいた嫁がいない。探すと別の部屋のソファで寝ていた。

起こすと、「ごめん」と嫁が言った。

「近所の人が起きるんじゃないかと思って窓閉めた」

イビキ? そんなにうるさいのか。おかげさまでサウナで寝ていたみたいだ。

「そうね。私もサウナ状態、しかも映画館のスピーカの真横で寝ている感じだったからソファに行った」

あ……すいません。

自分が寝ている間にどういうことになっているのか、知らなければなるまい。以前、レコーディングダイエットという食事を記録してやせるというダイエット法があったが、いわばその睡眠版だ。睡眠計で2週間記録すると、自分の睡眠について正しくも冷徹な指摘が出るのだという。

眠ろう。そして記録しよう。睡眠を記録することで自分の睡眠を客観視し、よりよく眠れる生活や健康な体に変えるのだ。眠る自分という未知の自分に会いに行くのだ。

測定記録はメモリボタンを押すと表示される眠れていない部分が欠けて見える。ネットとの連携で、眠りの質がわかる。

オムロン ヘルスケア 「睡眠計 HSL-101」
サイズ:約W130×D100×H270mm、本体重量:約420g(本体のみ)、電源:AC100V、10VA、50/60Hz、付属品:専用ACアダプタ、専用USBケーブル、スタートアップガイド、取扱説明書(品質保証書付き)、医療機器添付文書 ※本製品は1人用です。