サラリーマン経験を経て、TOEIC専門講師として講義、執筆などの分野で活躍中のTEX加藤氏。自らを「TOEICオタク」と称する氏は、TOEICテストについて、「勉強すれば、確実に点数をアップさせることができる」と断言します。TOEICテストで13回連続990点(満点)継続中(2012年7月現在)の氏に、最近のTOEICテストの傾向やモチベーションの保ち方、効果的な勉強法について伺いました。
――TEX加藤さんが考えるTOEICの魅力とはなんでしょうか。
講師になってからは、受験することは仕事の一部となりました。自分のことよりも、教えている生徒さんがスコアを伸ばし、次のステップに進むことが一番うれしいですね。自動車教習所の教官と同じ感覚です(笑)。
TOEICの魅力は、勉強すれば確実にスコアが伸びることにあると思います。一夜漬けでは、英語力がない段階で高得点は取ることは難しいですが、勉強すれば確実にスコアが上がります。私の指導経験では、毎日3時間勉強すると、3カ月間で約100点スコアがアップするという結果がでました。つまり、200~300時間勉強で100点もアップすることができるのです。
――勉強を継続するのは簡単なことではありませんが、モチベーションを維持するためにはどうすればよいでしょうか。
「半年以内に600点を取得する」などといった明確な目的を持つことです。ダイエットと同じで、モチベーションの高さはそのまま結果につながります。「私には難しすぎる」「気が進まないけれど、なんとなく頑張ってみようかな」という気持ちでは続きません。
社会人にとってはTOEICで結果を残すことは、ある期間を与えられて成果を出せという「仕事」と同じです。「明日までに900点取りなさい」というのは無謀ですが、一定の期間を与えられて目標とする点数を目指すのは、決して乗り越えられない壁ではありません。
また、TOEICは他人との勝負ではなく、自分との闘いです。厳しい言い方になりますが、目標を達成できないということは、仕事ができないことであり、さらに自分に負けたということです。逆に、結果を出せば、自分にとって必ずプラスになるし、目標を達成したことが、次のステップへの大きな自信にもなります。
世の中には、TOEICよりも大変なことが山ほどあります。「TOEICごときに負けてはいられない、なんとかして打ち破ってやろう」くらいの気持ちで挑んでほしいですね。
――最近のTOEICの傾向を教えてください。
より高い英語力が求められるようになってきました。僕はTOEICに必要なスキルは、「英語力×TOEIC力×気力」だと考えていますが、その3つのスキルのなかで、英語力にかかる比重が増えています。
特に、パート7の「長文読解」は、ここ1、2年で大きな変化が見られます。以前のように一部しか読まなくても解ける問題が減り、文章全体を読まないと解けない問題が多く見られるようになりました。
例えば、レストランの広告に関する問題があったとします。以前は、「土曜日の開店時間は?」というような「部分読み」で解ける問題があったのですが、最近は、「これはなんのための広告ですか」といったような、読みこまなければ分からないことが問われています。
――難易度が上がった長文読解には、どのような心構えで挑めばいいのでしょうか。
パート7の長文読解を含むリーディングパート(パート5~7)には、75分間という時間が与えられていますが、長文読解に少なくとも50分は時間を取っておきたいですね。初めてTOEICを受ける方が陥りがちなミスが、パート5、6で30分以上時間を使ってしまうということです。これでは長文読解は終わりません。
時間が足らずに、実力が発揮できないのは非常にもったいない! 大学受験を経験している方は難しい問題ほど配点が高いと思いがちですが、TOEICはどの問題も配点は同じです。目標が600点なら、4割は間違えていいんです。難しい問題に粘って、時間を浪費しないようにしましょう。
――TOEICの点数を効率的に伸ばすために、知っておくべきことはありますか。
TOEICテストは、出題される語彙(ごい)や文法の範囲が限られています。補助教材は、TOEICに特化したものを使ったほうが効率的です。文法を例に取ると、パート5の短文穴埋め問題は、大別すると10パターンもありません。
パート5の40問の設問中、語彙の問題が約15問、品詞の問題が約12問。残り13問は、前置詞、接続詞などに関するものです。単語もアカデミックなものは出てきません。とくに時間に限りのある社会人は、TOEICに特化した信頼のおける参考書を徹底的にやることをお勧めします。
――点数をアップさせるための具体的な方法を教えてください。
短期間で、確実にスコアを伸ばすことができるのはリスニングです。リスニングに対する苦手意識から、リーディングを中心に勉強する人が多いのですが、TOEICは、計200問中リスニング100問、リーディング100問と、非常にリスニングの比重が高いテストです。また、リスニングの英語はリーディングの英語よりも比較的簡単なので、得点が伸びやすい傾向があります。
通勤電車の中では、公式問題集のリスニングのトランスクリプトを縮小コピーしたものを利用するとよいでしょう。音声をイヤホンで聞きながら繰り返し確認することができます。そして、自宅で実際に声に出して読む、さらにスマートフォンなどの録音機能を使って自分が音読・シャドーイングしたものを録音し、問題集についているCDのナレーターと比べてみる。
目安としては、文章をすらすら読めるようになったらリスニングセクションで300点程度の実力が身についていると考えていいでしょう。200点台の人は、自分の音読を聞くと、あまりの下手さにがくぜんとするはずです。シャドーイングを習慣化し、ナレーターのように読めるようになるまで、何度も繰り返すことで確実にリスニングセクションのスコアは上がります。テキストを見ないで正確にシャドーイングができるようになったら400点以上のレベルです。
――最後に、スコアアップを目指し、TOEICに取り組んでいる方にメッセージをお願いします。
自分が成功するイメージを描いてください。達成したときに、どういうことが起きるのか。そうしたらこんなに楽しい世界が広がる、自分が変わる、と大きなプロジェクトを描いているイメージを持ってください。嫌々勉強しても、モチベーションは上がらないし辛いだけです。勉強が楽しくなるように創意工夫をしましょう。
おすすめは、自分がTOEICの世界の住人になったと仮定して、問題文のシチュエーションに入っていく方法。TOEICの世界にはリストラはないし、常に昇給しているし、本を出せばベストセラーで、遅刻しても何も言われません。楽しいですよ。ただ、コピー機は毎回、故障しているか、紙切れしていますけれどね(笑)。
TOEICの世界に身を置くことで、「What do you usually do on the weekends?」など、出てきた表現を使ってみたくなります。自然に生きた英語の習得にもつながりますよ。
■お話を伺った人
TEX加藤氏。1967年大阪府生まれ。ニックネームのTEXは、実家の愛犬の名前から取ったもの。レコード会社のプロモーター、外資系小売業のバイヤーなど、サラリーマン経験を経て、2010年にTOEIC講師に転身。現在はエッセンス イングリッシュ スクール、神田外語学院、明海大学などで、講師を務める。最新の出題傾向を把握し、反映させた授業は人気が高い。独自の視点からTOEICについて語っているブログ「TOEICオタクのブログ」は、多いときには1日1万アクセスを超える。
■著書
・新TOEICテストBEYOND990超上級問題+プロの極意(アルク/2,310円)
・新TOEIC TEST 出る単特急 金のフレーズ(朝日新聞出版/935円)
・990点満点講師はどのようにTOEICテストを解いているか(コスモピア/1,575円)
【関連リンク】 |