世界の医薬品供給のうち偽造医薬品は約10%を占めており、その多くはインターネットなどの非正規ルートを通じて流通しているという。製薬会社4社(ファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリー)は7月18日、都内でインターネット薬局の実態と偽造医薬品が及ぼす健康被害に関してプレスセミナーを実施した。

ED治療薬であるレビトラの真正品(左)と偽造品(右)。外観では区別がつかない

日本向けインターネット薬局の95%が法律に準拠していない

まず、日本向けインターネット薬局の現状とその安全性に関して、ファイザーの池田哲也氏が発表。NABP(連邦薬事委員会連合)が唯一認可している調査会社・LegitScript(レジットクスリプト)が2011年の秋に実施した調査によると、随時2,000~4,000ものウェブサイトが日本国民に対して処方せん医薬品を販売、または販売促進をしていることが分かった。しかし、その95%が法律に準拠していない不正サイトであり、無免許営業や処方せんの提出を求めずに処方薬を販売しているなど、消費者の安全が守られていないサイトであったという。

偽造薬の数は、日本国内のみならず世界的に見ても増加傾向にある

偽造医薬品の服用で意識障害や死に至ることも

日本の税関で押収される偽造医薬品は、2010年が50,427点、2011年が78,029点、2012年は6月末までで389,285点と年々増えており、その多くが個人輸入代行業者(インターネット購入)から購入したものであった。偽造医薬品とは正規メーカーが製造したものではなく、有害物質や安全性が未確認な不純物を含んでいる可能性もある医薬品で、カウンターフィット薬とも呼ばれている。

実際、偽造医薬品を服用することでどのようなリスクが起こりえるのか? セミナーでは聖路加国際病院の出雲博子先生が、ED治療薬であるシアリスの偽造薬を服用した患者がけいれん・意識障害に陥り、重篤低血糖を来した症例を発表。また、食中毒を引き起こすブドウ球菌の混在や、まったく効果のない成分で構成された薬が処方薬として出回っている可能性もあるという。

聖路加国際病院の出雲博子先生

金沢大学の木村和子教授

現在、公的機関は偽造医薬品の危険性を伝える啓発活動を行っており、カード会社と検索エンジン運営会社などはNPO団体を設立し、不正サイトの活動阻止を目指した取り組みを行っている。医薬品を個人輸入する動機として、「ネットの手軽さ」「値段の安さ」「薬局・薬店で買えないから」が挙げられているが、金沢大学の木村和子教授は「不正なインターネット薬局の脅威を知れば手にしようとは考えないはず。啓発活動をもっと積極的に行っていくべき」とコメントした。

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