7月になり、夏クールの連ドラが始まりつつありますが、その前に春クールの作品をおさらい。「けっきょくどれがおもしろかったの?」「DVDやオンデマンドで見るべきものは?」「次回作がありそうなのは?」。そんな声に「視聴率や俳優人気は一切無視!!」の連ドラ評論家・木村隆志がお答えし、ガチ採点します。

春クールは、前回のコラム「新ドラマ全作品をウォッチ&ガチ採点」で書いたように、各局とも「確実に視聴率を稼ぎたい」という思惑から、謎解きモノ、実力派脚本家の起用、ジャニーズ主演作などの力作ぞろい。

しかし結果は、大ヒットなし! ヒットドラマの目安となる平均視聴率15%を超えたのは、『鍵のかかった部屋』『ATARU』のみ。そして、『家族のうた』が3%代という記録的な低視聴率を叩き出すなど、わずか8回で放送終了したドラマが3つもあった。

前回のコラムで書いた4つの傾向から、結果を検証する。

検証1. 事件の謎説きドラマ

密室、検証、サヴァン症候群など、7作品が手を変え、品を変え競ったが、どれも強烈なインパクトは残せず。“犯人あて、トリック、捜査チーム"という推理ドラマの3大醍醐味で抜きんでたものはなかった。ただ、各話のアベレージが高かった『鍵のかかった部屋』『都市伝説の女』『ATARU』は、続編があれば期待できそう。それにしても、毎日殺人事件のドラマが放送されるのは、ちょっと疲れる。

※『鍵のかかった部屋』、『Answer』『新・おみやさん』、『都市伝説の女』、『三毛猫ホームズの推理』、『ATARU』

検証2. ジャニーズ主演ドラマ

ジャニーズ屈指の人気と実力を持つ主演俳優が集まったが、終わってみれば中居正広の演技力が際立っていた。表情やセリフをほとんど使えないサヴァン症候群の主人公という超難役をやり切ったのはお見事。ただ、中居はもともと“現代の一般人"以外は、そつなくこなす演技派だったりする。大野智の防犯オタクは、たたずまいや仕草など、もう少し細部までキャラを作り込めれば、男性ファンも取り込めそう。

『鍵のかかった部屋』(大野智)、『37歳で医者になった僕』(草彅剛)、『パパドル!』(錦戸亮)、『三毛猫ホームズの推理』(相葉雅紀)、『ATARU』(中居正広)

検証3. 旬の脚本家

『リーガル・ハイ』の古沢良太が圧勝! キャラの描き分け、テンポのいいストーリー展開、小ネタに現実的なオチなど、全くスキのない仕事ぶりだった。子役、DV、企業不祥事、悪徳政治家など現代的なテーマをポップに扱いつつ、強烈なアンチテーゼを込めたラストは爽快そのもの。今後、古沢良太へのオファーは殺到するだろう。

※『リーガル・ハイ』(古沢良太)、『37歳で医者になった僕』(古谷和尚)、『クレオパトラな女たち』(大石静)、『ATARU』(櫻井武晴)、『家族のうた』(酒井雅秋)

検証4. オリジナル作品

やはりというべきか、オリジナル作品は両刃の剣。『リーガル・ハイ』『ATARU』の成功組と、『クレオパトラな女たち』『家族のうた』の失敗組で明暗が別れた。しっかり準備期間が取れず、脚本家の出来次第となったのかもしれないが、当たり外れがあるのも、連ドラ視聴の醍醐味。ただ、成功組も一話完結モノで、メインテーマを追う楽しみは乏しかった。

※『リーガル・ハイ』、『Answer』、『クレオパトラな女たち』、『カエルの王女さま』、『都市伝説の女』、『もう一度君に、プロポーズ』、『ATARU』、『家族のうた』

検証5. 純粋or変人の主人公

人格破綻弁護士役の堺雅人が圧倒的な存在感で、誰が見てもMVP。その他、防犯オタク役の大野智は、そつなくこなしたものの想定内レベル。高飛車な元ミュージカルスター役の天海祐希は、一人画面から浮いてしまっていた。都市伝説オタク役の長澤まさみは、セリフ回しが美脚に完敗。サヴァン症候群の人物を演じた中居正広は、好き嫌いが真っ二つ。カンちがいミュージシャン役のオダギリジョーは、ただただ痛かった……。むしろ、抑えた演技で純粋キャラを好演していた草彅剛、竹野内豊に好感を抱いた視聴者が多かったようだ。

※変人キャラ : 『鍵のかかった部屋』『リーガル・ハイ』『カエルの王女さま』『都市伝説の女』『ATARU』『家族のうた』
純粋キャラ : 『37歳で医者になった僕』『クレオパトラな女たち』『パパドル!』『もう一度君に、プロポーズ』『三毛猫ホームズの推理』