千葉都市モノレールは12日、新型車両「URBAN FLYER(アーバンフライヤー) 0形」のデザイン披露および関係者試乗会を開催した。同社代表取締役社長の大澤雅章氏、千葉市長の熊谷俊人氏、新型車両デザイン検討委員会委員、GKデザイン総研広島の担当者などが列席した。

ブラックフェイスで精悍な顔つきの「URBAN FLYER 0形」

「URBAN FLYER 0形」は招待客と報道関係者を乗せて、車両基地最寄りの動物公園駅を出発し、千葉駅までを往復。往路ではデザインコンセプト、復路は車両技術について解説が行われた。

千葉都市モノレールは新型車両導入にあたり、2006年、学識経験者を中心に「新型車両デザイン検討委員会」がスタート。その取りまとめと具体化は、広島電鉄「グリーンムーバー」、アストラムライン、京阪電鉄「新3000系と旧車両新塗装」などを手がけたGKデザイン総研広島が担当している。

パノラマデッキの浮遊感

GKデザイン総研広島の唐澤取締役によると「URBAN FLYER 0形」のデザインコンセプトに関して、「空」が主題になったという。シンボルマークは「千葉にまつわる空の物語」をイメージ。これは懸垂式モノレールという「空を走る乗り物」と、千葉の発祥である千葉氏の伝説「空から星が降って窮地を脱した」と、それに由来する家紋「月と星」をアレンジしたという。

車両の外観は、「空への上昇感」をイメージし、在来車のシルバーから一転、大空をイメージするブルーを採用した。運転台や客室窓の周囲はブラックで引き締めている。独立した配置の窓に連続性をもたせ、外から見ても、「あの電車に乗ると眺めがよさそうだな」という期待感を演出しているという。ブルーとブラックの塗り分けは運転台付近で斜めにカットし、上昇を表現しているとのこと。

室内は、「空中散歩を感じさせる浮遊感」をデザインのコンセプトとし、運転室床面の一部をガラス張りにする「パノラマデッキ」など、眺望に配慮した設計となっている。ガラスはドアの下部、ドア格納部分(戸袋)などにも採用し、室内の圧迫感をやわらげている。ただし、ガラスを多用する冷たい印象も増してしまうため、壁面には木目をあしらうなどぬくもりを調和させたという。インテリアはブルー系とオレンジ系でまとめ、質感を上げるために濃くしている。天井と壁の間の広告枠もラインを作り、煩雑な印象を抑える工夫をしたとのこと。

運転席床面ガラス窓が特徴。ドア下部にもガラス窓を設けた。側面が傾斜しているため、ドアからも下方の眺めを楽しめる。千葉駅、都賀駅ではJRの電車もよく見える

旧型車(上)との比較。「URBAN FLYER 0形」の上昇を示すラインがよくわかる

コンセプトデザインを説明する唐澤氏

座席は対面シートにする案もあったが、通勤用途やイベントでのゆったり感を考慮してロングシートに。ただし、各座席を独立させ、背もたれを高くした。従来のロータイプでは揺れを支えるのに不十分で、浅く腰かけることで足の投げ出しの原因になる。ハイバックで身体を大きい面積で支えて、心地良くすることで深い着座姿勢を促し、足の投げ出しを防ぐ狙いがあるとのこと。座席の幅は470mmで在来の通勤車としては広く、「おそらく新交通では初めてのゆったりシート」と唐澤氏は述べた。

ガラスから感じる冷たさを木目の温もりで和らげる

ハイバックシートでゆったりした座席

車両情報モニターなど、新基準の安全装置を搭載

車両間には転落防止装置を取り付けた

安全面も大幅に向上

新型車両に採用された新技術については、千葉都市モノレール車両課の鈴木氏が説明した。JR西日本の福知山線脱線事故と、韓国大邱広域市の地下鉄火災を教訓に、新しい安全基準に準拠しているという。

具体的には、ワンマン運転で運用することから、「運転状況を表示するモニター装置と記録装置の追加」「防護無線にバッテリーを搭載し電源断でも使用可能に」「車両間通路は走行中は閉じてストッパーがかかる」「マスターコントローラから手が離れたときに急ブレーキをかけるデッドマンシステムに、発動時の司令室通報機能を追加」「客室内からの非常通報装置に乗務員が反応しない場合に備えて、司令室への通報を実施し、司令室から客室へ車内放送する機能を追加」などだ。

このほか、空調ダクトを熱で溶け落ちない材質とし、ATC(自動列車制御装置)を二重化、車両連結部に転落防止装置を設置、ドアにLEDとチャイムによる案内装置を設置するなど、安全とバリアフリーに配慮したとのこと。快適性では、空調システムに従来の冷房・暖房・送風に加えて除湿機能を搭載した。環境面では、動力を抵抗制御式直流モーターではなくVVVFインバータ制御の三相交流モーターとし、電力回生機能も搭載して省エネルギーに配慮したとのこと。

運転台後部は車椅子スペースに、優先席には荷棚が新設された

千葉都市モノレールの大澤雅章社長

路線の愛称も「アーバンフライヤー」へ

下からの外観に配慮し、ロゴとアクセントラインが施された

千葉都市モノレール代表取締役社長、大澤雅章氏は、「タウンライナーの乗客数は年1%の上昇傾向だったが、高齢化により頭打ちになりつつあり、東日本大震災で2011年度は乗客数が減った。新車両の導入で利用者を増やしたい」と期待を語った。現在の路線の愛称「タウンライナー」については、「もともとは車両の愛称だった。今後は『アーバンフライヤー』にしていきたい」との考えを示した。

「URBAN FLYER 0形」は導入発表から落成、営業開始まで6年を要した。その理由については、「鉄道車両は生産開始時に発表する会社が多いが、この車両はデザイン検討開始段階で発表した。デザイン決定に2年、そこから部品設計に2年半、製造に1年かかっているため」という。

同車両は日中に試運転を実施し、営業開始は7月8日の予定。全4編成を三菱重工に発注しており、今回登場した編成はその1つ目。今後は今年度中に1編成を追加し、来年度と再来年度にそれぞれ1編成ずつ導入するという。それ以降については、「営業成績と在来車の老朽化の進行度で決める」とした。

「URBAN FLYER 0形」が営業開始した後のイベント企画も進行しており、7月下旬から8月にかけて、ホテルなどとタイアップした婚活列車を予定している。新車両のロゴについてはブランド展開も検討しており、プラネタリウムとのコラボレーションも進行している。「千葉モノレールの新しいブランドとして立ち上げたい」とのことだ。