厳選生たまごを扱う「たまご侍」

商店街でもひと際目立つ店構え。ゲーム会社でデザイナーをしていたこともある店主自らデザインしたそうだ

2011年末、都内にオープンしたたまご専門店「たまご侍」。下町風情漂う商店街でひと際異彩を放つ、気になるお店を取材した。

店舗の所在地は、東武東上線大山駅から線路と交差して東側に伸びる遊座大山商店街の一角。黄色地に侍の影絵と"たまご侍"と屋号が描かれた派手な看板が人目をひくものの、一見すると何の店かわからない。プリンとかカステラとか厚焼き玉子といったたまごを使ったスイーツや玉子料理を扱うお店なのかとしばらく思っていた。ところがある日、店の前を通ると、店頭に生卵と茹で玉子が展示してあるのが目に入った。気になって近寄ってみると、他でもなくたまごの専門店とのこと。つまり、生卵そのものを売っているお店だったのだ。

店内の販売コーナー。生たまごだけでなく、店主おすすめのたまごの調理器具なども扱っている

レジ横のショーケース。2月から販売を始めた「こだわりプリン」(260円)などが並ぶ

店内に一歩入ると、販売されているのは3種類のたまご。聞けば、店主が厳選したオススメ3種類の新鮮なたまごを生産者や卸業者から直接買い付けて常時販売しているそうだ。店舗を運営するのは、フロムエッグ。出店はここ大山が初めてだという。たまごの専門店という、まだあまり聞き慣れない新たな業態の店を始めようと考えた動機を代表の渡辺好光さんにたずねてみた。

たまご目当てに遠方から

「3~4年前、伊勢原(神奈川県)に住む姉の家を訪ねたときに、とてもおいしいたまごに出会ったんです。"寿雀"という知る人ぞ知るたまごの銘ブランドなのですが、田舎のあぜ道にある直売所なのに、遠方からもわざわざ買い付けに来る人がいるぐらいの商品なんです。それでその時からなんとなく『たまご屋さんやりたいな……』というのが頭にあって、会社を退職したのをきっかけにやってみようということになりました」。

前職は、レジャー業界で新規店舗の開発など経営側の仕事をされていたという渡辺さん。「たまごの直売所って駅前にはないよね。でも、豆腐屋さんができるなら、たまご屋さんもありでしょう」と、都内の商店街への出店を決めたそうだ。しかし、店内で店主自らが商品を生産する豆腐屋とは違い、たまごはあくまで販売所。他で買い付けたものを、人通りの多い場所で単に販売するだけとは言っても、生鮮食品であるたまごを店先に並べて売れ残りが生じないように商いを続けるには、多くの苦労が伴うようだ。

「現在はまだ1店舗だけで運営しているので、販売ロスなどを考えると、やはりしばらくは3種類ぐらいに厳選してというのが現実的なやり方ですね。たまご専門店ということで、幅広く色々な商品を取り扱ってほしいというお客さんからの声も多いんですが、たまごは生鮮食品ですからね……」。