急激に冷え込んできた昨今、漫画好きの皆様におかれましてはいかがお過ごしでしょうか。

……などという慣れない挨拶はさておき、もうすぐやってくる冬に楽しみたいのが「食」ですよね! 美味しい物であふれかえる食の大国・日本。ああ、四季のある国に生まれてよかった!

ということで今回は、そんな「食」に関するグルメ漫画を電子貸本サイト「Renta!」から厳選してご紹介していきたいと思います。どれもものすごく面白い上に、とにかく食事が美味しそうな作品ばかり。ぜひお腹を空かせた状態でご覧ください。その後に食べる食事がより美味しく味わえること間違いなしですよ!

江戸前の旬

『江戸前の旬』(日本文芸社刊)

これは本当に面白い! どのくらい面白いかというと、何気なくレンタルして読み始めて、気づいたら全巻読破していたくらいです!

……いや、単に「面白い」と表現するのはちょっと違うかもしれません。本作には、グルメ漫画にありがちな奇想天外な料理も出てこないし、派手なリアクションや料理バトルが繰り広げられるわけでもないからです(多少はそういう要素もありますが)。だから「面白い」といっても「ワクワクする」とかそういう方向ではなくて、「ほのぼのする」面白さなのです。

誤解を恐れず言うなら「よつばと!」のような、日常系グルメ漫画といってもいいかもしれません。ページをめくるのにまったく力を必要とせず、どんなに頭が疲れているときでも、いやむしろ疲れているからこそ読みたくなる、そんな作品です。

主人公は銀座の寿司屋「柳寿司」の三代目、柳葉旬。まだ修行の身ながらも寿司と魚に対する愛情は誰にも負けない、そんな旬の成長と彼を取り巻く人々の物語が、本作では実に50巻以上に渡って繰り広げられます。

基本的にストーリーは一話完結で、プロットも毎回ワンパターン。何かしら悩みや問題を抱えている人が柳寿司を訪れ、そこで食べる寿司を通して自らと向き合い問題を解決するといった具合です。

寿司で問題を解決って何だよ、と思うかもしれませんが、寿司ネタになっている魚にはそれぞれ様々な食材としての歴史がえり、名前一つとってみても何かしら意味が込められていたりします。柳寿司はそんな寿司に込められた意味を通して迷えるお客さんの背中をそっと押したり、さりげなく導いたりするのです。

このワンパターンぶりが読んでいてとても心地良く、涙が出るほどではないけどほんの少し心が温かくなるような、そんな不思議な魅力を持っています。

もちろん50巻以上続いている大作なので、毎回そればかりというわけではなく、時にはライバルとの寿司対決があったり、旬やその家族の物語が展開されたりと、色々な出来事や事件もあるにはあります。しかし基本的に本作は人情グルメ漫画であり、それ以上でもそれ以下でもないのが最大の魅力なんだと思います。

歴史に残るような大作ではないけれど、ふとしたときに読み返したくなる「江戸前の旬」、寿司好きな人はもちろん、日々の生活に疲れたすべての人に全力でオススメします。

駅弁ひとり旅

『駅弁ひとり旅』(双葉社刊)

鉄道が好きな方、旅行に行くと各地の郷土料理を必ず食べるという方、そして何より駅弁が好きな方なら絶対に読むべき作品が、この「駅弁ひとり旅」です。

主人公は弁当屋を経営する中原大介。結婚10周年に妻から休暇と特急富士号A寝台個室の切符をもらった大介は、特急に乗って日本一周の旅に出発します。

タイトルの通り、毎回様々な駅弁が登場し、そのどれもがおいしそうで魅力的。読むと駅弁を食べたくなること間違いなしです。さらに鉄道や駅弁に関する大介のうんちくがまた、いい感じに旅を盛り上げてくれています。

ひとり旅といいつつ、実際には一人だと話がもたないのか女性や子どもなど旅の道連れがいることが多いのですが、かといってずっと一緒にいるわけではなくちゃんと別れがくるのが良い。そうした一期一会な雰囲気は、まさにロードムービーのそれと同じです。

自宅にいながらにして旅行気分が味わえ、さらに全国各地の駅弁グルメまで満喫できる、「駅弁ひとり旅」はそんなお得な漫画なのです。

極道めし

『極道めし』(双葉社刊)

先に紹介した2作品もそうですが、グルメ漫画といえばジャンルが偏ることが多いですよね。それはそれで専門的で良いのですが、逆に「バラエティに富んだあらゆる美味しい物をどうやって自然に物語の中に登場させるか」という観点で見たときに「技あり」なのがこの「極道めし」です。

舞台となるのは、全国から札付きの極道たちが集まる浪花南刑務所。そこでは毎年、クリスマス・イブの夜に密やかに開かれる熱い闘いが行われていました。それが、刑務所で年に一度の楽しみである"おせち料理"を賭けての"めし"自慢バトル! 今までにシャバで食べたあらゆる料理の話を披露して、もっともおいしそうに語った者が他の囚人の分までおせち料理を獲得できるというこの闘いに勝利するのは誰なのか……。

ということで、「極道めし」は「思い出話・グルメ漫画」とでもいうべき作品なのです。なるほど、これなら刑務所という一見グルメ漫画とは縁のない場所を舞台にしていても、存分にグルメのエピソードが描けて、しかも思い出話なのでいくらでも多彩なジャンルの料理を描くことができます。

漫画としてももちろん面白いのですが、それ以上に「この作者は本当に美味しいものが大好きで、グルメ漫画で色々な美味しいものを描きたくてしょうがないんだなぁ」ということが伝わってきて感心してしまいました。こういう、本当に美味しいものを愛している人が描く漫画がつまらないわけがない!

また、「極道めし」がすばらしいのは、思い出話で他の囚人の共感を得なくてはいけないため、登場する"めし"がどれも身近なグルメであること。たとえば立ち食いそばや熱々のコロッケ、お母さんが作ってくれた生姜焼きなどなど……誰もが共感してしまう"思い出の味"を、あなたも本作でもう一度思い出してみませんか?