美しい翼のフォルムと初体験の加速力

離陸してしばらくすると機体は旋回を始めたが、とにかく揺れない。天気がよく風がほとんどないせいもあるが、振動もないに等しく従来機とは比べものにならない。窓側の席では音はそれなりにするが、音の種類が機械的な音というよりも風切り音に近い印象でより自然な印象を受ける。

それにしても、何度もいうが翼のフォルムが美しい。高度が安定して巡航に入るまでずっと見惚れてしまったほどである。787はエンジンの性能がレベルアップし、運航時の風の抵抗がより小さくなり加速力が格段に増している。確かに、神経を集中していると、まるでスポーツカーが加速するような感覚を実感できる瞬間があった。

他の席との機内メールが日本語でできる。暇つぶしに使えそう

"潤い"のある機内。UVもカット

いろいろと観察しているうちに気が付けば離陸して40分を過ぎていた。普通の飛行機ならそろそろ機内の湿度が急激に下がる頃だ。だいたい1時間もすれば一桁台、ほんの数%で飛んでいることも珍しくない。従来の飛行機は素材が金属で腐食を防ぐために機内を乾燥させる必要がある。ところが787は、機体の胴体部を腐食に強い炭素繊維複合材にしたため、高湿度化が可能になった。実際、この日のフライトでは最低でも湿度25%前後を保っていた。機内の湿度を逃さず循環させる空調システムのため、乗客が少ないとそれだけ乾燥しやすいともいえるが、それでも従来機の湿度が砂漠並みだったことを考えると、ものすごい進歩だ。

砂漠といえば、強い紫外線も気になるが、787の窓はUVカットもされている。シェードは、空けるか閉めるか、明るいか暗いかの二者択一のアナログ式から、いくつかの段階に透過光量を調整できる電動式に一新。ボタン1つで明るさを調節でき、真っ暗な、つまり光がまったく入らない状態にしても外の光景を見ることができた。

客室照明にはLEDを採用。初フライトでは特別にレインボーカラーの演出があった

窓のシェードをすべて下した状態。外が透けて見えるのが分かるだろう。紫外線にはいくつかの波長があり、全てではないが窓にはUVカットも施されている

明日掲載する続く後編では、高度についてのお話や着陸時の様子をお届けしよう。お楽しみに。

取材協力: ANA