自転車は、通学や買い物、レジャーなどに気軽に利用できるだけでなく、環境にやさしく健康にもよい乗り物です。とはいえ、気になるのが事故。自転車でもかなりのスピードが出るので、転倒などでケガをすることもあるし、人にぶつけてケガをさせたり、場合によっては死亡させてしまうこともないとはいえません。自転車に乗るのであれば、事故に備えて保険に入っておくと安心です。今回は、自転車用の保険をご紹介します。

自転車保険の補償は「傷害補償」と「賠償責任補償」の2つ

自転車の保険で必要な補償は2つあります。1つは、乗る人自身のケガに対する傷害補償、もう1つは、他人にケガなどをさせてしまったときの賠償責任補償です。

より重要なのは、賠償責任補償です。というのは、自動車やバイクには自賠責保険の加入が義務づけられているのに対し、自転車にはそういったものがまったくないからです。自転車の事故でも、ケースによっては数千万円の賠償を求められる可能性があることを考えると、賠償責任にはしっかり備えておくことが必要です。

自転車店で加入する自転車保険

自転車の保険のうち、最も気軽に加入できるのが、TSマーク付帯保険です。

これは、自転車安全整備士のいるTSマーク取り扱い自転車店(自転車安全整備店)で、自転車を買ったときや整備をしてもらったときに自転車に貼るTSマークに付帯しています。マークには赤と青があり、保険の補償額は次のようになっています。

TSマーク付帯保険の補償内容

傷害補償 賠償責任補償
(対人)
死亡・高度障害 入院(15日以上)
青色TSマーク 30万円 1万円 1,000万円
赤色TSマーク 100万円 10万円 2,000万円

保険期間は1年で、1年たったらまた点検・整備を受けることで更新されます。赤色の保険料は、新車で購入した場合は1,000円程度、更新時は整備費や部品交換費などにプラス1,000円程度とするところが多いようです。

TSマーク取り扱い自転車店は、公益財団法人日本交通管理技術協会のサイトで調べることができます。

パソコン、ケータイ、スマホで加入する自転車保険

今年の5月に営業を開始したau損保は、パソコンや、携帯電話、スマートフォンで加入できる自転車保険を扱っています。補償内容は3タイプから選べます。保険料はクレジットカードで支払うほか、au利用者は携帯電話・スマートフォンの料金と一緒に払うこともできます。

au損保「自転車ワイドプラン」のおもな補償内容

傷害補償 賠償責任補償
(対人・対物)
保険料年額
(ケータイ割引適用後)
死亡・高度障害 入院日額 通院日額
プチおし 200万円 1,500円 1,000円 1,000万円 3,070円
イチおし 500万円 2,500円 1,000円 5,000万円 5,350円
イチおしプラス 500万円 2,500円 1,000円 5,000万円 8,840円

(※このほか、イチおしとイチおしプラスには入院一時金、イチおしプラスには法律相談や弁護士費用の補償が付帯する)

携帯電話から申し込むと保険料が5%引きとなるほか、10月31日まで「プチおし」プランの保険料年額が1,150円になる開業記念プランを実施しています。

コンビニで加入する自転車保険

三井住友海上火災保険は、11月からセブン-イレブンで「自転車向け保険」の取り扱いを始めます。セブン-イレブンの店頭に設置してあるマルチコピー機のタッチパネルで、住所、氏名などの必要情報を入力して、レジで保険料を支払う仕組みです。保険期間は1年で、保険料は家族構成によって異なります。

三井住友海上火災「自転車向け保険」の補償内容

傷害補償 賠償責任補償
(対人・対物)
保険料年額
死亡・高度障害 入院日額
個人型 4,000万円 6,000円 1億円 4,760円
夫婦型 7,000円
家族型 11,720円

加入している他の保険に付帯も

自転車保険は単独で加入する以外に、自動車保険や自動車共済に付帯できる場合もあるので、自動車保険・共済の加入者はチェックしてみるといいでしょう。

自転車保険でなくても、自転車事故に備えることは可能です。

自転車でのケガについては、損害保険会社の傷害保険でも補償されます。また、ケガをして入院すれば、医療保険からも入院給付金が受け取れます。したがって、傷害保険や医療保険に入っている人が自転車保険に加入すると、傷害補償に重複する部分ができることになります。

賠償責任補償については、個人賠償責任保険で補償されます。個人賠償責任保険は、自転車事故のほか、飼い犬が通行人に噛みついてケガをさせた、デパートに陳列してある高価な商品を誤って壊してしまった、マンションの水漏れで階下の家に損害を与えた、などの場合で賠償責任を負ったときに補償される保険で、契約者本人だけでなく同居している家族もカバーされるのが特徴です。

個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、傷害保険などにセットするのが一般的なので、これらの保険に加入している人は、気づかないうちに個人賠償責任保険にも入っているかもしれません。自転車保険を検討する前に、個人賠償責任保険に入っていないかどうか、まずチェックしてみてましょう。

当然のことながら、保険は万が一への備えです。保険を使わずにすめば、それに越したことはありません。自分のためにもまわりの人のためにも、安全な運転を心がけてください。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。