――すでに放送が開始されてから時間が経っていますが、あの時間にピンポイントで視聴するのはかなり難しいという実感があります

稲垣P「60日分、すべてを観ていただけるのが一番なのですが、たまたま目にした方にも何かを感じていただきたいという気持ちも大きいですね。なので、今回特にストーリーのようなものは作らず、いつ観ていただいてもいいようなセリフになっていると思います」

椋本氏「絵はあまり変わりませんが、セリフは毎晩変わるので、大久保さんのファンの方なら、欠かさず毎晩観ていだだけるんじゃないかと」

稲垣P「椋本さんにいろいろな表情の絵を描いていただけたので、大久保さんにも思いっきりいろいろな表情をつけて演じていただいています」

――この10秒間の出会いは、まさに一期一会のような感じですよね

稲垣P「最初はネットでも全話配信しようという話もあったのですが、できればテレビで観て欲しいという思いもあって。また、毎日狙って観ていただけるのも、本当にありがたいことなのですが、たまたま観たという、その出会いも大切にしたかったんです。なので、一応ホームページでも配信はしていますが、毎週1本だけをピックアップするという形になっています」

――とはいえ、ファンの方はもちろん、偶然目にした人も、全部観てみたい、まとめて観たいといった要望が出てくるのではないかと思うのですが

椋本氏「DVDにまとめて出しましょうよ(笑)」

稲垣P「将来的には、そういったことも考えていきたいですが、今回の作品に関してはやはりHD画質で観ていただきたいと思っています。本当にきれいなんですよね。なので、椋本さんの繊細なタッチやニュアンスのある彩色、そのあたりのディテール感を、ぜひハイビジョン放送で感じてみてください」

――このイラストを大型のテレビで観ると迫力がありそうです

稲垣P「65型ぐらいのテレビで観ていただけると等身大になるみたいです(笑)」

――『60日のシンデレラ』ということで、9月末をもって終了となるわけですが、その先の展開については、どの程度まで決まっているのですか?

稲垣P「とりあえず、60日間放送してみて、皆さんの感想をお聞きしてみたいという感じです。おかげさまでかなりご好評をいただいているようなので、ぜひ次の60日も続けたいと思っています」

――人気が出れば、さらに続くことも?

稲垣P「それは本当に皆さんの応援次第というところになります。今回、椋本さんの絵も、大久保さんの声も、すごく力があるので、私の中でのハードルはかなり高いものになってしまっています。お二人の組み合わせは本当に破壊力があるので、逆にちょっと困っているところもありますね(笑)」

――もし、あらためて椋本さんが『60日のシンデレラ』でイラストを描くとすると、どのような絵を描いてみたいですか?

椋本氏「実は私が一番好きな系統の女の子キャラは、"無表情系女子"なんです。なので、そちらの方向でもいいですかって聞くと思います」

稲垣P「可愛く描いていただければ、まったく問題はないのですが、それだとセリフを考えるのが難しそうですね……」

――無表情系なので、毎日一言ですむかもしれませんよ

稲垣P「あ、そうか。それも面白いかもしれません(笑)」

椋本氏「『……』とか(笑)。今、ふと浮かんだのですが、"黒髪おかっぱ"というのもありかなと。とりあえず今回はトップバッターという責任もあったので、王道ラインを忠実に辿ろうと思って描きました。描き手がそこまで考えるのはどうなの? って感じではありますけど、その辺も気になってしまう性格なので(笑)」

――ぜひ第2弾、第3弾と続くことを期待したいところです。さて、人気が出てくると、企画意図とは矛盾するのですが、このキャラクターをアニメーションとして動かしてみたくなるのではないですか?

稲垣P「正直、その気持ちもないことはないです。大久保さんに声をあてていただいた映像を観たとき、やはり、『これが動いたらすごいだろうな』って思ってしまいましたから」

椋本氏「私も観たいです!」

稲垣P「先のことは何とも言えないのですが、そういう意味でも、この『60日のシンデレラ』は、さまざまな展開の新しい起点になりうるものではないかと思って期待しています」

――いろいろと夢も広がりますね

椋本氏「短いセリフだけじゃなく、キャラクターの生活感や背景をもっと観てみたいですよね」

稲垣P「60個のセリフの裏側には隠されたたくさんの設定を用意しているので、じっくりとセリフを聴いていただいて、本当はどんな子なんだろうって想像するという楽しみ方もあると思うんですよ。現在、アニメをはじめとするエンタテインメントは、すべて親切な方向に進んでいる気がしています。それは確かに、視聴者の方にとってのサービスになるかもしれませんが、そうではなく、自分たちでも想像する楽しさというものを取り戻してほしいという気持ちもあります」

――そういう意味では、下手に展開させたくない気持ちもあるということでしょうか?

稲垣P「やりたいような、やらずに皆さんの想像力で広げていただきたいような……その両方の気持ちがあります」

――大きな悩みどころですね

稲垣P「なので、そのあたりは、実際に観ていただいた方の声を聴きながら、ベストな方向に持っていければいいなと思っています」

(次ページへ続く)