スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は1日、東京電力の長期会社格付けを「BBB+」に3ノッチ(段階)、短期会社格付けを「A-2」に1ノッチ、それぞれ引き下げた。いずれも格下げ方向の「クレジット・ウォッチ」(CW)は継続する。同社の個別債務の長期・短期格付けも同様に引き下げ、CWを継続した。
S&Pは東京電力のスタンドアローン評価を従来の「a+」から「bb+」へ引き下げた。一方で、「日本政府による特別な支援が見込める」とのS&Pの見解を織り込んだ結果、長期会社格付けは「BBB+」にとどまった。
S&Pでは、「東京電力の財務が逼迫した場合には、日本政府が十分な支援をタイムリーに提供する可能性が高いとみている」。これは、S&Pの政府系機関の格付け規準のもとで、東京電力の特徴を以下のとおり評価した結果という。
電力供給区域には首都圏が含まれ、日本の総電力需要のおよそ3分の1を賄っていることから、同社は日本の経済・産業政策において「極めて重要」な位置づけにある
政府は福島第一原子力発電所の事故の収束に向けて東京電力と緊密に協力しているほか、原発事故などの損害賠償や資金面などで何らかの支援を提供する可能性があると考えられるなど、東京電力に対する政府の関与が強まっている
これまでS&Pは、東京電力の格付けに、政府による潜在的な特別支援を織り込んでいなかった。しかしながら、今回の震災と原発事故によって同社を取り巻く環境が急変したのに伴い、同社に対する政府の関与が強まっていると認識し、「今回、政府による潜在的な特別支援を同社の格付けに織り込んだ」(S&P)。
前回3月18日に格下げを実施して以降、イベントリスクがS&Pの想定よりも拡大した結果、「東京電力の業績・財務プロフィールはさらに大幅に悪化している」(S&P)。福島第一原発の事故処理が長期化している上、6基ある原子炉のうち4基は廃炉になるとの見通しがすでに同社によって明らかにされている。
S&Pでは6基すべてが廃炉になると見込んでいるといい、「その処理費用と損害賠償費用で巨額の負担が発生する」(S&P)。加えて、石油やLNG(液化天然ガス)への燃料シフトに伴うコスト増、資金調達コストの上昇も追加的な負担となることから、「今後2年程度はキャッシュフローが大きく落ち込むことが不可避とみている」(同)。