スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は8日、『2011年の日本の経済成長見通し--不安定な政治動向が足かせに』と題するリポートを発表した。

日本の2010年の実質GDP(国内総生産)成長率は1次速報ベースでプラス3.9%と、先進国のなかでトップクラスとなった。しかし、日本の実質GDP成長率は2009年がマイナス6.3%、2008年はマイナス1.2%と、2年連続でマイナス成長となっていたことから、GDPはまだ金融危機前の2007年の水準まで回復していない。

S&Pでは、「日本の2011年の経済成長は減速する」とみている。「明確な経済成長戦略の欠落と不安定な政治動向により、内需の持続的拡大が見込みにくい状況が続いているうえ、新興国の経済成長ペースの減速や北アフリカ・中東での政情不安が外需にマイナス影響を与える可能性がある」(S&P)。

S&Pは、「2011年の実質GDP成長率は1.3%程度となり、GDPは引き続き2007年を下回る水準にとどまる」と予想している。

S&Pは、この予想値に対する主な下振れリスク要因として、(1)世界経済が予想外に減速する、(2)国内政治の混乱状態が継続する、(3)北アフリカと中東における政変が原油価格の高騰や外需の落ち込みにつながる、といった可能性を挙げている。「特に2011年度予算関連法案をめぐる政局の展開によっては、2011年の経済成長の足を大きく引っ張りかねない」(S&P)としている。