250年以上の歴史を持つ「ギネス」
スタウトタイプのビール「ギネス」。世界150カ国以上で親しまれ、日本でも人気のあるビールだ。昨年は250周年というメモリアルイヤーを迎えており、偶然なのかこの記念すべき年に日本では、ギネスの国内販売権がサッポロビールからキリンビールへ移るというニュースがあった。テレビや新聞でも大きく取り上げられたが出来事ではあったが、消費者としては「これまでと変わらず、おいしいギネスが飲めれば」というのが正直な気持ちではないだろうか。
しかし、おいしいギネスが飲めるためには、製造側だけではなく、サービスをする店側、家で飲む場合は私たち自身の気配りや努力も必要だ。あのクリーミーな泡は正しい注ぎ方(そして、飲み方)をすることで、一層おいしく感じられるからだ。
「251年前、ギネスの創設者であるアーサー・ギネスが抱いた1つの夢は、世界中で彼のつくったビールが完璧にサーブされることだった」
そう語るのは、ギネスのマスターブリュワー(最高醸造責任者)であるファーガル・マーレイ氏。マーレイ氏はこのほど初来日を果たし、記念して開催されたイベントでは「正しいギネスの注ぎ方&飲み方」を教えてくれた。
マーレイ氏は醸造責任者でもあるが、世界各地を巡ってギネスを最もおいしくサーブするための指導も行っている。今回の来日においてもギネスを提供しているレストランやパブ視察の視察だけではなく指導も行い、さらにはキリンビール営業マンへのレクチャーもするなど、熱心にギネスの魅力を伝えた。
まずは「目で飲む」。そして……
そんなマーレイ氏によると、おいしいギネスビールを楽しむために必要なのは、「すばらしいバーテンダーがいるすばらしいバーに行き、グラスに注がれる美しいギネスビールを目で楽しみ(アイルランドでは"目で飲む"というそうだ)、味わいと香りを楽しみながら飲むこと」だそう。舌先に甘み、舌の両サイドでローストの風味を、喉元に苦みを感じるのが理想的だという。
実際にギネスを注ぐマーレイ氏 |
さてポイントとなる注ぎ方だが、まずはきれいに洗浄して乾かしたギネスのパイントグラス(なければ大きめのグラス)を用意。そして、グラスを45度に傾けてサーバーから注ぐ。注ぎながらゆっくりとグラスを立てていき、一旦注ぎを中断し、落ち着かせる。その間には、サージング(泡立ち)によって広がった細かな泡がグラス内で対流を起こし、次第に泡部分と液体部分に分かれていく。これを「カスケード・ショー」と呼んでおり、生き生きとした泡の動きを目で楽しむのがギネス流。
マーレイ氏曰く「119.5秒で落ち着く」ので、今度はグラスをまっすぐ立てたままで2度目の注ぎ。クリーミーなヘッド(泡)がグラスのふちからわずかに盛りあがるところで止め、完成。なお、この方法は業務用である樽詰めギネスの注ぎ方。缶入りの「ドラフトギネス」の場合は、3時間以上冷してからまずはタブを引いて完全に口を開ける。その後、泡が盛り上がって注ぎ口から出てくるのを待ってグラスへ注ぐ。グラスを45度傾けるのは樽詰めと同じ。ゆっくりと全てを注ぎ終わったら、サージングを見ながら2分ほど待つ。これが自宅で飲む場合の方法だ。
ユニークな飲み方のお作法も
そして飲み方にも「ギネス流」がある。まずは、「男らしく両足をやや開いてしっかりと立ち、お腹はひっこめる」とマーレイ氏(ぽっこりおなかをきゅっと引っ込めていた・笑)。そして、「グラスを覗き込むのではなく、地平線を眺め、肘を上げて、さあ飲んでみよう。背中を丸めちゃいけないよ! あくまでも男らしく!!」。
マーレイ氏によるユニークな飲み方講座も開かれた。ちょいとぽっこりなおなかをひっこめるマーレイ氏。背を丸めたり、グラスを覗き込んだりするのではなく(写真左)、肘を上げて男らしく飲むのが正しい(写真右)のだそう |
筆者は女性であるが、教えられたとおりに飲んでみる。なんだか開放的な気分になって、思わず「プファ~~!!」と言ってしまった。さすが、最高醸造責任者。こんな楽しい飲み方まで教えてくれるとは。「ギネスはこの飲み方で」。そう誓った筆者なのであった。