週明けは、週末発表された中国の経済指標をどう消化するのに注目が集まりそうです。

そして、オバマ大統領が発表したブッシュ減税の延長措置に対する市場関係者の見方もどう消化されるのでしょうか。

今週は、いくつかの政策会合の予定もあり、年末に向けてもまだまだ迷走相場の展開となってしまうのでしょうか。

まずは、やはり中国の金融政策に対して市場はやや慎重な姿勢になってしまうかもしれません。先週金曜日に中国人民銀行は、預金準備率の引き上げ(0.5%)を発表しました。市場では週内にでも政策金利引き上げが行われるのではないかという観測がありましたが、肩透かしを食らった格好。香港株式市場では警戒感があっただけに、反発を見せていましたが、週末の経済指標に対する警戒感があるのでは、上昇力も限定的でした。

そういった中での経済指標の内容が市場の予想を上回る内容になりました。中国側からは、政策金利引き上げに伴うデミリットが指摘されています。しかし、中国国内においても買い控えが出るほどの食料品価格の上昇を食い止めないのであれば、市場を驚かせて何もしないのではなく、中国国民からの不満を抑える必要性が出てくるでしょう。よって、しじょうでは、中国当局がどの程度の政策引き締めのスタンスを示すのかが警戒感となり、株式市場においては上値を抑える心理的な要素になりそうです。

そして、この政策次第による中国側の需要に対する見方次第では、資源関連銘柄に影響してくると可能性が高くなってくるでしょう。

そして、もう一つの話題であるオバマ大統領が決定したブッシュ減税延長措置。

株式市場においては、年末を控えて消費意欲をそがないことや、富裕者層を中心とした消費けん引が米経済をサポートするのではと比較的楽観的な見方があるようです。米系金融機関の中には、来年の米経済のGDP成長率の上方修正を発表しています。

一般消費者の間では、まだ低価格志向があるうえに家計のバランスシート調整傾向がある中でそう楽観的になれるのでしょうか? 一方で、欧州だけではなくアメリカにおいても問題視されている財政赤字という点で見れば、先日発表された公職員賃金上昇の2年間凍結とは相反する政策になります。米国の財務赤字削減の傾向が遠のくという点となれば、失望ということになります。オバマ政権にとっても、中間選挙の結果を受けて野党である共和党に歩み寄らざるを得ない状況とは思いますが、吉と出るかどうかは今後の経済指標を見なくてはならないでしょう。

もっとも、どちらの視点で見たとしても、善し悪しの違いがあるものの米金利では上昇圧力につながりやすいかもしれません。

その意味では、今週予定されているFOMCにおいて、どのような金利上昇抑制のスタンスが示されるのかに注目しておきましょう。そのうえで、米金利動向の影響がどこまで他の市場に波及するかどうか。

今週は、米経済イベントとして、消費者物価指数、小売売上高などが予定されています。市場では年末商戦が比較的好調だと見ていることから、ポジティブなスタンスにあるようです。期待通りの数値となるかどうか。

ただ、アメリカ・中国の話題が尽きない中で、欧州の信用不安という点は市場の関心事の中でも、トップ5以内のランキングはそう簡単に下がりそうもありません。

今週のECB理事会では政策金利の変更は通常ありません(緊急時以外)が、ECB当局者も含めた欧州安定化に絡んだ会合や各国首脳との会談は、いつ何時でも行われる可能性があります。

市場の話題でも、様々な可能性が指摘されていますが、最近の注目の議論の内容としては、欧州債券の発行を検討するかどうか。フランス・ドイツ側からは、その必要性はなく現状の金融安定化体制で十分と建前の認識があります。日本やアメリカとは違って、ユーロ圏独自の債券はありません。現状話題になっていう債券の話題は、各国が発行されている債券であり、その国債間で利回り格差がある状態が問題になっています。

ただ、欧州債券の発行となりますと、各国間の格差をどう勘案するかが問題になりますし、各国の財政にかかわる議論になります。ユーロの水準が1.30台で推移しているとはいえ、ドイツ・フランス経済は製造業を中心として、経常黒字を出しています。一方、問題になっている欧州各国は経常赤字状態。黒字国側としては、統一の債券発行をするのであれば、経常赤字国に対して条件を示すことになると思いますが、厳しいものとなることでしょう。

もちろん、現状の金融政策の手綱はECBだけにあり、財政政策は各国にあるというアンバランスはいずれ解決しなくてはなりませんが、景況感の差、税制の差、社会福祉の差、など格差問題が目白押し状態では、数年で解決する内容ではありません。

よって、現実的な方策としては、ECBも含めたEU/IMFからの資金供給・支援になるかと思いますが、これもはたして足りるかどうかという懸念も一部では出てきています。

欧州金融安定化基金の第1号であるアイルランドの政局不安に加え、予算案が最終的に通るとされる日程は来年といわれています。また、年末を控えて各金融機関の資金繰りにおいて、ユーロ及びドル資金が必要になってくる時期です。各金融機関・企業において資本が十分に手当てされている状態であればよいのですが、短期金融市場で各国当局の短期誘導金利をはるかに上回る状態になるのであれば、注意が必要になるかもしれません。

今週木曜日に、EU財務省緊急理事会が開かれることもありますし、欧州の懸念が継続されやすいうちは、欧州市場でのリスクテイク志向はそれほど盛り上がらないかもしれません。ユーロも対ドルで、ほぼ200日移動平均線付近で保たれていることから、中長期のファンド筋としても、方向性を見極めたいと思っているかもしれません。

今週はアメリカ、スイス、スウェーデンといくつかの中央銀行の金融会合が開かれますが、政策金利の引き上げ予想があるのはスウェーデンのみ。先進国と新興国との金融政策のスタンスの違いで、市場のゆがみが発生しなければよいのですが。

その上、クリスマスの週を控えて、今週がどうにか通常の流動性が確保できる週。市場の期待感・警戒感がある中で、株式市場においても取引高は低迷しており、流動性が低下傾向にあるのではないでしょうか。その意味では、欧米株式市場における高値警戒感からの調整リスクは想定しておいた方が無難かもしれません。

先進国における消費者を含めたバランスシート改善の傾向に対して、収益をあげている企業の経営者マインドがどこまで賃金・労働という点で還元できるかどうかにかかっているのですが、年末モードではエンジンはかかりにくいかも?

今週の主な経済指標

12月13日(月)
(英)12月ライトムーブ住宅価格
(仏)10月経常収支
12月14日(火)
(NZ)10月小売売上高
(英)11月RICS住宅価格
(豪)第3四半期新規住宅
(日)10月鉱工業生産確報
(仏)11月消費者物価指数
(英)11月消費者物価指数
(独)12月ZEW景気期待指数
(ユーロ圏)10月鉱工業生産
(米)11月卸売物価指数
(米)11月小売売上高
(米)10月企業在庫
(米)FOMC 政策金利・声明発表
12月15日(水)
(豪)12月ウエストパック消費者信頼感指数
(日)12月日銀短観
(日)10月第3次産業活動指数
(欧州)スウェーデン中銀金利発表
(英)11月英失業率
(ユーロ圏)第3・四半期就業者数
(欧州)ノルウェー中央銀行 政策金利発表
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(米)ロックハート・アトランタ地区連銀総裁 講演
(米)11月消費者物価指数
(米)11月実質所得
(米)12月NY州製造業業況指数
(米)10月対米証券投資
(米)11月鉱工業生産
(米)12月NAHB住宅建設業者指数
(ユーロ圏)ECB理事会
12月16日(木)
(NZ)12月NBNZ企業信頼感指数
(スイス)SNB(中央銀行) 政策金利発表
(ユーロ圏)12月製造業PMI 速報値
(ユーロ圏)12月サービス部門PMI 速報値
(英)11月小売売上高
(ユーロ圏)11月消費者物価指数 改定値
(米)新規失業保険申請件数
(米)11月住宅着工件数
(米)第3・四半期米経常収支
(米)12月フィラデルフィア地区連銀業況指数
(ユーロ圏)ECB理事会
(ユーロ圏)EU財務相理事会臨時会合(EUの2011年予算を討議 )
12月17日(金)
(NZ)12月ANZ消費者信頼感指数
(独)12月IFO業況指数
(ユーロ圏)10月貿易収支
(米)11月景気先行指数