本レビュー企画は『Reader』の発売開始前に執筆されたものです。

ソニーの電子書籍端末『Reader』が登場した。海外では以前から発売されていた端末だが、「電子書籍でじっくり読書をしたい」というユーザーにも訴求できる製品が登場した。本稿では端末の仕様を中心に使い勝手をレポートしていこう。

ソニーの電子書籍専用端末『Reader』。左が画面サイズ5型の『Pocket Edition PRS-350』、右が6型の『Touch Edition PRS-650』

まずは「Reader」2モデルのルックスをチェック

Readerは、画面にE Inkの電子ペーパーを採用した電子書籍専用端末だ。同様の製品には、米Amazonの「Kindle」、米Burns & Nobleの「Nook」といった製品が海外では発売されているが、国内でもようやくE Inkの電子書籍専用端末が登場したことになる。

今回発売されるのは、6型の画面を備える『Touch Edition PRS-650』(予想実勢価格25,000円前後)と5型画面の『Pocket Edition PRS-350』(予想実勢価格20,000円前後)の2種類で、用途に応じて選択することができる。まずは両端末を写真でチェックしてみよう。

Touch Edition PRS-650

本体左側面は曲線を描く「背表紙」にあたる部分

本体右側面。右側にあるのはスタイラスペン

本体上部。電源スイッチとSD/メモリースティックカードスロットを装備する

本体下部。USB端子とイヤホンジャック、ボリュームキーがある

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Pocket Edition PRS-350

本体左側面

本体右側面

電源スイッチ。メモリカード類は利用できない

音楽再生機能がないPocket Editionではイヤホンジャックや音量スイッチはない

文庫本を含め、Pocket EditionとTouch Editionを重ねてみた。デザインやボタンなどは同等で、外観上はサイズが違うだけといってもいい。サイズ自体はTouch Editionが一回り大きいぐらいだが、どちらも片手でしっかり持てるサイズ

重ねたところを横から。薄い文庫本よりもさらに薄い

読書に没頭できる電子ペーパー

Readerに採用された電子ペーパーは、その名のとおり「紙と同様の読み心地」を実現する技術だ。一般的に使われる液晶とは異なり、白黒顔料を使って描写をして、バックライトを使わずに反射光で表示される。紙と同じ反射率と言われ、液晶のようにドットが見えることもなく、なめらかに文字が描写されるので、見ている感覚は紙を見ているのと変わらない印象だ。

液晶を長時間見ていると目の奥が疲れる、目がちかちかする、といった現象に悩まされる人もいるかもしれないが、電子ペーパーではそういうことはない。基本的に紙と同じと考えていいので、紙の読書で没頭できる人であれば、電子ペーパーでも文字を追って文章を読むことに没頭できるはずだ。

目で見る限りは、紙の書籍を読むのと変わらないぐらいの印象

実際に文章を表示したところ。これはあらかじめ端末に第1章が保存された吉田修一「悪人」

この読書感が、ほかの液晶デバイスにはない、電子ペーパーの利点だ。読んでいて作品に没入できる。特に今回のReaderは通信機能もなく(米国では通信機能モデルもあり)、基本的に小説などの文書を読むだけの単機能端末だが、その分気が散ることもなく、集中して読書できるのだ。音楽ファンが、便利だけど音の悪い圧縮音源より、原音に忠実なメディアとプレイヤーで音楽を聴くという感覚に近いかもしれない。

テキストについては、デジタルデータ化しても劣化はないので、読みやすさは表示デバイスに大きく依存する。目が疲れずに読書に没頭できる電子ペーパーに関しては、現時点で読書行動に対する最適解のひとつと言えそうだ。

ただ、電子ペーパーはその構造上、ページ送りのたびに画面をリフレッシュして書き換える動作が発生する。一度書き込んだ状態だとほとんど電力を消費しない代わりに、画面の書き換えを一気に行い、画面が一度反転して書き換わるという動作が不自然なのだ。

液晶デバイスでの本のページ送りを模した動作に比べるとなめらかさに欠け、ちょっと慣れが必要かもしれない。今回のReaderは書き換え速度が改善されており、従来に比べてほぼ一瞬で書き換えは終わるが、それでも読書中に目に付く感じはある。筆者は意外にすぐに慣れて読書中も気にならなくなったので、一見して気に入らなくてもちょっと我慢して使ってみるといいかもしれない。……つづきを読む

実際の動作。電子ペーパーの視野角は紙と同じ。角度を付けて見ても表示に変化はない。さらにページの遷移やフォントサイズの変更、手書きメモの入力などを試している