年間1t強の生豆を収穫

数々の恵まれた気候条件が揃う沖縄だが、コーヒー栽培の最大の敵は、頻繁に襲ってくる台風だった。当初は露地栽培だったものの、何度も台風の強風で木が倒されてしまったため、試行錯誤の結果、風よけに鉄骨のハウスを建て、その中での栽培といった現在のスタイルに落ち着いた。その後、栽培に適した場所を探しながら徐々に農地を拡大。現在、名護にある5,000坪の畑にコーヒーの木を1,500本植えており、南部にある1,000坪の畑にも300本を栽培している(合計約2ha)。その上、約5年前から契約農家への苗提供も始めており、年間1t強の生豆を収穫。今後も増産していく予定とのことだ。

台風の風除けのため、鉄骨ハウスの中で栽培。現在合計6,000坪(約2ha)の自社畑を持ち、コーヒーの木は1,800本ほど

沖縄のコーヒーは、4月~6月が開花期にあたり、その後実を結んで赤く熟し、12月~2月が収穫期となる。同じ1本の木でも開花時期がずれているので、収穫時期が異なる。そのため「名護珈琲」の農場では、実の熟し具合を見ながらすべて手摘みで収穫を行なう。精製方法はウォッシュドで、焙煎作業も藤田さんの担当。17年前に購入した焙煎機が大活躍だ。

収穫後はウォッシュド式で精製。2~3週間かけて天日乾燥させる

しっかりしたボディ感がありながらもやさしい味わい

藤田さんが目指すのは、「しっかりした味、香り、コクがあり、冷めてもおいしいコーヒー。そしてクセがなくて飲みやすく、何杯でも飲めるコーヒー」。これを念頭に、同農園の豆のよさを引き出すため、深煎りの一歩手前のミディアムでローストしている。実際にいただくと、ボディ感はあるもののすっきりとして、やさしい味わい。これなら、コーヒーが苦手な人にもオススメできそうだ。

藤田さんは、「沖縄のコーヒーには、ブルーマウンテンやハワイ・コナコーヒーに次ぐ、最高級のコーヒーになれる可能性がある」と強い信念を持つ。そのため、品質向上の研究は怠らず、その副産物として、コーヒーの葉を使ったお茶やコーヒーチェリーの果肉を使ったジャムなどが誕生。その他にもコーヒーをはじめとした沖縄食材を使ったお菓子や、果肉を酵母とした天然酵母のパンなど、様々な商品が登場している。

コーヒーチェリーの果肉を使った「珈琲ジャム」(1,050円)も11月~3月の限定で販売

コーヒーの販売は、同社オフィシャルサイトからの通信販売が中心で、那覇空港の売店でも販売されている。最近では"国産コーヒー"として注目度と評価が高まりつつあり、大阪の阪神百貨店梅田本店や、東京の銀座わしたショップなどでも販売を開始。徐々に「名護珈琲」を楽しめる場が増えている。沖縄の地が育んだ国産コーヒー、一度味わってみてはいかがだろうか。

コーヒーやゴーヤー、うこんといった沖縄食材を練り込んだ焼き菓子「うっちんこう」(1,575円)。ブールドネージュのようにホロホロとくずれる食感が楽しい