沖縄本島でコーヒー栽培に挑戦

「名護珈琲」のコーヒー豆。豆は1,050円(100g)で販売。何杯でも飲みたくなるような、澄んだきれいな味わいのコーヒー

コーヒーといえばブラジル、ベトナム、インドネシア。遠く離れた外国の産物と思っている人も多いだろう。しかし、実は"国産"が存在する。沖縄や小笠原といった暖かい地方で栽培されているのだ。しかし、生産量はごくわずかなのでなかなか流通にのらず、知る人ぞ知る存在となっている。

そんな国産コーヒーの中でも、安定生産をしており、質の高いコーヒー豆を販売しているのが沖縄の「名護珈琲」だ。

コーヒーは、赤道をはさんだ北緯25度と南緯25度の間、通称「コーヒーベルト」といわれる地帯でそのほとんどが生産されている。沖縄本島の那覇市は、そのエリアに近い北緯26度。コーヒーの露地栽培も十分可能な地域である。何十年も前に海外から苗を持ち帰って育ててきた先人もいて、長年細々とではあるもののコーヒー栽培が行なわれてきたという。「名護珈琲」の経営者である藤田義彦さんは24年前、沖縄で造園業を営んでいた関係で、沖縄でコーヒーを育てていた恩納村の山城武徳さんと知り合う。そこで、沖縄産コーヒーのおいしさに感銘を受け、「ぜひコーヒー栽培を」と決意した。

コーヒーチェリーの収穫を行う藤田義彦さん。沖縄では11月~2月に実が赤く熟し、収穫期を迎える。しっかりと熟しているのを確かめながら手摘みする

「名護珈琲」のコーヒーの木は、山城さんより分けてもらったアラビカ種の「ニューワールド」という品種。ブラジルから輸入してきたもので、味がよいこと、収穫量も多いことを見込んでの選択だった。山城さんから栽培法を伝授してもらった藤田さんは、造園業のかたわら苗木を増やしていき、約20年前、名護の山中にコーヒー畑を拓いた。

可憐なコーヒーの花。開花の時期は4~6月で、ピークは4月下旬ほど。「よく"ジャスミンの花のような香り"と言われますが、何とも例えようのない、コーヒーの花の香りとしか言えないとてもよい香りがします」(藤田さん)

この場所は、土壌が弱酸性で、朝夕の冷え込みが厳しく、寒暖の差が15℃以上ある。つまり、コーヒー栽培にはぴったりの土地である。また藤田さんは栽培しているうち、コーヒーの木には害虫がつかないことに気付き、消毒は一切なしにした。化学肥料も使わず、すべて有機肥料で育ててきた。