映画『悪人』が11日、公開初日を迎え、主演の妻夫木聡、深津絵里、満島ひかり、樹木希林、柄本明、李相日監督が都内の劇場で舞台あいさつを行った。

映画『悪人』の初日舞台あいさつに登場した妻夫木聡(右)と深津絵里 拡大画像を見る

『悪人』は芥川賞作家・吉田修一の同名小説を原作とした人間ドラマ。九州の地方都市を舞台に、殺人を犯してしまった男・清水祐一(妻夫木)と、彼を愛してしまった女・馬込光代(深津)の逃避行と、加害者、被害者の家族の複雑な思いを描いている。深津は本作の演技が評価され、7日に発表された「第34回モントリオール国際映画祭」で主演女優賞を獲得している。

レッドカーペットが敷かれた特別仕様のステージでマイクを手にした妻夫木は、「この日を迎えられて本当にうれしいです…」とあいさつしたが、感極まってしばらく沈黙。瞳をうるませながら「自分にとって転機になりました。撮影も過酷でしたし、僕自身いろんなことに挑戦したんです。僕らの情熱が皆さんに届くことを願います」と神妙にコメント。妻夫木の真剣な表情を見守っていた深津も「妥協しない監督と、それにこたえ続けたスタッフ、妻夫木さんをはじめとするキャストの皆さんがそろったからこそできた映画です。これ以上ない初日を迎えることができました」と笑顔で話し観客の声援に応えた。

感極まりながらも舞台あいさつを続ける妻夫木

「作品に対してこんなに強い思いを持った主演俳優は初めて」と言いながら妻夫木を撮影する樹木希林

海外でも高く評価されていることについて李監督は、「原作の吉田さんと1年以上かけて話し合いを重ね、丁寧に脚本を仕上げました。そして、キャストの皆さんが"役を演じた"のではなく、カメラの前で"人として生きた"ことが評価されたのではないでしょうか。その力が言葉を超えて伝わったんだと思います」と作品を分析。主演女優賞についても、「深津さんの演技が評価されたことは本当にうれしい。この作品は妻夫木くんと深津さんのシーンがかなり多いので、トロフィーの台座部分は彼のものです」とジョークを交えつつ主演の二人に賛辞を送った。

一方、それを受けた妻夫木は「相手が深津さんじゃなければ成立しなかった作品。あらためて尊敬しています」と話し、深津も「祐一と光代という役は、2人が一つにならなければいけなかったんです。そういう意味で妻夫木さんはわたし自身を映す鏡でした。今回の主演女優賞はスタッフ、キャストみんなの賞ですし、何よりも妻夫木さんの賞でもあるんですよ」とお互いを称え合った。

「第34回モントリオール国際映画祭 主演女優賞」トロフィー

左から、李相日監督、樹木希林、深津、妻夫木、満島ひかり、柄本明

映画『悪人』は、全国東宝系にて公開中。