メールの前にネタを探す

―初対面の直後にはどんなメールを送ると効果的でしょうか?

相手と親密になるには、「自分と相手の間だけ」で交わすフレーズや話題が必要です。

そのため僕は後に送るメールのことを考えて、会話しながらネタを探しています。

初対面の時に必ず聞くようにしているのは、「仕事を始めたきっかけ」と「困難をどうやって乗り越えたか」。限られた時間の中で相手のことを知るには、この二つの質問が最適だからです。

それに自分の信念や興味があるポイントにさしかかると、相手はおしゃべりになって目がキラキラしてきます。それもしっかり覚えておいて、その日のうちにメールを送ります。

―メールを送る前に相手をよく観察しなければいけないのですね

ビジネスシーンで会った人に、あえて仕事とは関係ないことを書いてもおもしろいと思います。その人の持ち物や服装、気になった小物などの話題から始めると、話題が広がって意外な展開に発展するかもしれません。

―メールの書き出しやあいさつ文に悩むことがあるのですが、どうすればいいでしょうか?

「拝啓 酷暑のみぎりいかがお過ごしでしょうか」と「今日の東京は35度もあってすごく暑いです!」では、どちらが書きやすいでしょうか? 読み手にとっても、後者のほうがすっと心に入ってくるはずです。仲良くなりたいからメールしているのに、変にかしこまる必要はないですよね。使い慣れない言葉を引用するより、自分が感じたことを素直に書けばいいと思います。

例えばメールを受信した時刻が深夜だったら、「夜遅くにメールを送ってくださってありがとうございます」とひとこと書くだけでもいい。ほんの少しの気づかいで、相手との距離をぐっと縮めることができます。

そして相手も同じように書き始めたらしめたもの。相手に心を開いてもらうには、自分から心を開かなくてはいけません。メールは自分の鏡なのです。

くだけた文章は失礼か?

―年配の人や目上の人にメールする場合はどうでしょうか

「お名前三段活用法」をおすすめします。これは敬称を「様」→「さま」→「さん」の順番でくずしていくテクニックです。

役職名や肩書きと一緒に書く名前には「様」をつけますが、文章やメールのやりとりが進むにつれて「さま」「さん」へと移行していくのです。

少し怖いように感じるかもしれませんが、ずっと「様」で通したほうがかえって不自然になる場合もありますし、心配するほど相手の気分を害することはないですよ。むしろその人は年齢や地位が上がるにつれて、周りの人がよそよそしくなることを残念に思っているかもしれません。この僕ですら本を出版した後は「著者様にお会いできて光栄です」と言われるのですから(笑)そんなところに素直で親しみやすいメールが来たら、きっと心に残るでしょう。思い切って相手の心に飛び込んでみるのも一つの方法です。

それでも抵抗があるようでしたら、「自分の気持ちの部分だけ」少しくだけた文章にしてもいいと思います。例えば「お話にとても感銘を受けました」を「感動で胸がジーンとしました!」と書いても失礼にはなりません。いつわらぬ気持ちが込められていて、相手は好感を抱くと思います。

―あこがれの人や有名人と親しくなれるメールの仕掛けがあるそうですが

もし親しくなりたいと思う人が企業や団体の代表者であれば、その人の周りにいるスタッフにメールをするのです。

例えば憧れの人の講演会に参加した場合、会場のセッティングや進行をつとめるスタッフの様子もよく観察して覚えておきます。

そのうえで「テーブルにいくつもミネラルウォーターを並べて大変だったでしょう」「たいへん見やすい資料でとても参考になりました」「進行がとてもあざやかでしたね」など、ねぎらいのメールをスタッフに送るのです。そうしてスタッフの間で評判になっておくと、そのうちに代表者もうわさを聞きつけて自分に興味を持つはずです。

―その人に直接向かうのではなく、まずはスタッフと親しくなるのですね

代表者にはたくさんの人が殺到するため、競争に勝ってチャンスをつかむのはとても難しいのです。ならば内部のスタッフと仲良くなって、そこから近づいていこうというわけです。

代表者は「アンテナ」が高いので、スタッフの中で話題になっている人を放っておくわけがありません。この方法は時間がかかりますが、自分の存在をアピールするには格好の手段だと思います。

送受信フォルダは最強の「メモ帳」

―浅野さんはメールを読み返すことも大事だと考えているそうですが

一度読んだり送ったりしたメールはもう不要だと思うかもしれませんが、実は貴重な情報の宝庫なのです。フォルダに残ったメールは相手の特徴や会話の内容が記録されたメモであり、現在にいたるまでのプロセスでもあります。だからそれを使わずにいるのはとてももったいないと思います。

特に大切な人のメールを整理して考え方や好みを把握しておくこともできますし、以前会ったときの話題を覚えておけば、しばらくぶりに再会してもよそよそしくならずにすみます。

また僕はプロフィール講座の講師をしているので、メールの履歴から生徒の成長を見ることもあります。最初の頃と現在では発言も変わってきていますし、この生徒にはどんな言葉をかければいいかもわかります。

このようにメールの履歴をメモとして考えると、また違った活用法が生まれてくるのではないでしょうか。

(撮影 : 中村浩二)


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INTERVIEWER PROFILE : 早川洋平 / KIQTAS(キクタス)
元中国新聞記者。2008年に始めた著者インタビューポッドキャスト「人生を変える 一冊」をきっかけに起業。現在は、企業や教育機関、公共機関などにポッドキャストを中核としたサービスを提供している。インタビュアーとしても精力的に活動、渡邉美樹さん、堀江貴文さん、石田衣良さん、寺島実郎さんらこれまでにインタビューした人物は1,000人を超える。
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