7月25日、今秋公開される映画『桜田門外ノ変』の完成発表会が、茨城県水戸市のオープンセットで行われ、佐藤純彌監督、主演の大沢たかおさんをはじめとしたキャストらが登場、映画への思いを語った。

左から佐藤純彌監督、本田博太郎さん、大沢たかおさん、渡辺裕之さん、渡部豪太さん

今回の映画は茨城県の地元主導で実現した「地方創生映画」。茨城県民のこの作品への意気込みは、幕末の水戸浪士たちの姿に重なるようにも思える。作品とともに、水戸藩(茨城県)の幕末史も改めて眺めてみよう。

炎天下の完成発表会にファン2,000人

「桜田門前の襲撃シーンを撮影したのは今年の1月。あのときは本当に寒かったのですが、今は本当に暑いです(笑)」。佐藤監督は最初にそう挨拶、会場からは笑い声が起こった。『人間の証明』『未完の対局』『敦煌』など、スケールの大きな作品で知られる監督にとって、意外なことに時代劇は本作が初めて。

主題歌を歌うalanは中国・四川省出身。『レッドクリフ』『BALLAD 名もなき恋のうた』『必死剣鳥刺し』に続く時代劇のテーマソングとなる

最初は監督依頼を断わるつもりだったというが、茨城県の関係者の熱意に動かされたのだという。挨拶の中でも、ボランティアの人々への感謝の言葉が述べられ、全国45位とされる茨城県の知名度の低さを「少しでも上げることができればうれしいですね」と語った。

主人公である水戸藩士・関鉄之介役の大沢さんは「志士たちの日本を思う強い心を感じました。いろいろ考えさせられる貴重な作品です」とコメント。同じく舞台に登場した水戸藩士役の渡辺裕之さん、渡部豪太さん、逃亡する関をかくまう大庄屋主役の本田博太郎さんの3人はともに茨城県出身。地元の歴史をテーマとした作品に参加できたことの喜びと誇りを力強く伝えた。

総工費2億5,000万円の巨大オープンセット

完成発表会が行われたオープンセットは、彦根藩邸から桜田門まで、江戸城のお堀沿いの約200mを再現したもの。千波湖畔の約1万3,000m2の土地に、総工費2億5,000万円をかけて建設された。

吉村昭の原作『桜田門外ノ変』(新潮文庫)もぜひ一読を。(C)2010『桜田門外ノ変』製作委員会

茨城県は東京からの交通が便利ということもあり、これまでさまざまな映画やテレビドラマのロケ地として利用され、フィルム・コミッション活動も盛んだった。だが今回は、地域振興や観光誘致につながる映画を地元主導で作るという県民の思いが実現。オープンセットだけではなく、映画製作費も県内支援者から集めており、地方創生の映画企画としてモデルケースになることを目指している。

出演者も主人公の妻ふさ役に長谷川京子さん、息子役に「こども店長」でおなじみの加藤清史郎くん、水戸藩主徳川斉昭(なりあき)役に北大路欣也さん、井伊直弼役に伊武雅刀さん、井伊直弼襲撃計画を立案した水戸藩士役に柄本明さん、このほか生瀬勝久さん、西村雅彦さんなど豪華。

広々としたオープンセット。赤い門は彦根藩の藩邸のもの。駕籠に乗った井伊直弼はここから桜田門を通って登城していた

作品では、もちろん桜田門外での襲撃シーンが見どころではあるが、水戸浪士たちの目的は何だったのかが克明に描かれていく。井伊直弼の首を取ることが彼らの最終目的だったのではなく、むしろその後に真の目的があったのである。だが、彼らの辿った道は険しいものだった。

彦根藩邸から桜田門方面を眺める。ここに立って幕末の江戸をぜひ感じてみたい

オープンセットには、撮影の様子を紹介するパネルもいくつか立てられている

桜田門外ノ変という歴史上の事件は、おそらく誰もが耳にしていることだろう。だが、それがなぜ起こり、そして特に、その後水戸浪士たちがどうなったのか、知ってる人はどれくらいいるだろうか。同じ幕末でも、例えば『龍馬伝』のようなドラマに比べると、『桜田門外ノ変』の世界は地味かもしれない。けれども、この事件が幕末を一気に突き動かす起爆剤となったのである。…つづきを読む