市場の関心は、やはり米経済に対して当局がどのようなスタンスをとるのか。また、先進国の間でも温度差がある中で、新興国経済・資源国経済の状態はどうなのか。緩やかなディカップリングともいわれる状態になるとの見方があるが、先進国の需要をはたして新興国が受け皿となるかどうかという点で、資本の流れも出てこよう。

まずは、やはり最大の注目は火曜日のFOMC。日本の市場参加者においては、その前に日銀金融政策決定会合が二日間行われることを述べるが、市場に対する切り札はかなり限られており、よほどの急激な円高局面にならないと注目度では、FOMCに軍配が上がるうえに、注目もされにくいであろう。

そのFOMCにおいては先週の雇用統計において民間部門の雇用者数はある程度の数値がみられるものの、公的部門の一時雇用を除いた全体の数値を見る限り、これらのマイナス分をもカバーをする地合いにならなければ、危機感はそう簡単に排除できないのではないだろうか。

最近の企業業績の結果はプラスでも、雇用創出は主に海外拠点・地域。実は、この点は欧州企業においても同じで、南欧諸国の若年層に至っては、好調な南米諸国にわたってまで、職を探す動きが出ているとか。本国における雇用創出の展開が見られないのであれば、米政府ともに現状のサポート姿勢以上の政策を打ち出してくることを考えてこよう。

ただ、ニューノーマルという意識のほかに、消費者においては無理な消費を抑えていることや負債の軽減に軸足を置き始めており、市場でいわれているいくつかの政策を打ち出したとしても余剰資金が企業側の需要と合うかどうか、またその資金が海外向けに振り向けられたのでは、意味がないのではないか? 政府・企業側とも協議をしたうえで、行動を起こした方がよいかと思われるが、FRB単独のサポートでははたして市場は好感するかどうかも、やや疑問に思う向きも出てきている。雇用創出、将来への不安解消ということにつながらず企業内でとどまる政策であれば、失望的な展開になる可能性も念のため想定しておいた方がよさそうだ。

そして、ECB総裁のコメントを受けて、ユーロ・欧州資本市場に対して比較的落ち着いた展開にはなっている。ユーロ安の地合いが欧州企業における景況感を後押ししているメディアの展開だが、現状の1.30台以上の水準は、ここ最近の経済指標においてはユーロ高の水準。原油価格は80ドル台前後の推移の上、食品価格の上昇など、輸入物価の上昇を考慮すれば、ユーロ自体の上値追いはやや慎重にしたい。

ただ、相対する米経済の足踏み(いや、後退?)というバランスの点では、USD(アメリカドル)の地合いがあまりにも悪く、決算通貨としての地位も最近認識されているユーロとしては、他力本願の堅調地合いということであろうか。アメリカドル・米経済の不透明さに加え、決済・準備通貨としての再認識が市場で再クローズアップされれが、1.31台前半をポイントに堅調な推移が継続されやすいか。

先週にはギリシャの財政赤字削減が順調に行われている内容が示されたが、他の南欧諸国ではどうなのか。ギリシャにおいては公的部門の改善が最重要課題になっているが、他の南欧諸国においては金融機関の相互・他地域への融資額への懸念、対外債務の大きさなどがポイント。ただ、今年後半から来年にかけての償還予定になっていることから、現状ではこの話題は小休止状態と思っておいた方がよさそうだ。

こういった中、新興国・資源関連の話題が今週は目白押し。まずは、中国経済指標。火曜日には、貿易収支、水曜日にはほかの物価指数などが発表される。前者においてはアメリカ側の反応が注目されようが、やはり水曜日の数値次第での株式市場におけるリスク反応度が気になるところ。

中国国内の需要は喚起されているようだが、内陸、そして大都市の周辺との格差は依然継続されている中で、どの程度の成長率が維持されているかの市場は注目している。インド、ブラジルでは引き締め姿勢を鮮明に出しているが、その経済をけん引しているのは新中間層といわれる新たな消費者層。

一方の中国は、割合としては少ないものの、人口比率の違いでけん引している傾向があるが、偏っているといわれ、その資本が、中国国内から海外へと流出する傾向が出てきている。FOMC明けだけに、新たなリスク要因の材料であることから、水曜日アジア時間は市場関係者も緊張するであろう。

そして、今週は、オーストラリア・ニュージーランド関連のイベントが目白押し。オーストラリアにおいては、最大イベントとしては木曜日の雇用統計だが、それ以前に月曜日の住宅融資額・ANZ求人広告件数、火曜日にはNAB企業景況感指数、水曜日にはWestPac消費者信頼感指数と、各金融機関が調査をしているいくつかの指数が発表される。市場においてはやや弱気の見方が多くなっており、RBAの今後の金融政策(現状中立)に対して、市場では年内に一段階の政策金利引き上げの可能性があるのではないか? と一部では言われているなかで、はたしてこれらの数値を含め、雇用統計の数値を踏まえどのようなスタンスになるのかが注目されよう。

また、アメリカドルの地合いが弱いだけにユーロ同様に資本が流入しやすいという傾向がみられるが、最大資源輸出相手国である中国の経済指標次第では、方向性がめまぐるしく変化する可能性がある。

隣のニュージーランドにおいては、金曜日の小売売上高の数値が注目。先週のイベントがネガティブだっただけに、弱い内容であれば、上値が重たい展開が継続されやすいか。

米経済に対する警戒感が強い中で、他の地域がどの程度懸念を吸収して堅調に推移できるかどうかが方向性となろうが、それぞれにおいても実は懸念される材料がある。また、新興国においても、先進国の需要の受け皿になるかどうかも不透明な上、新興国においては日米欧のグローバル企業からだけの戦略に対する警戒感もあり、各新興国における当局の姿勢には警戒しておいた方がよい。

不透明感が漂うなかでの、短期での方向性を求める動きでかなり上下動しそう。基本は、アメリカドル・米経済に対するスタンスを確認しつつ、各通貨・地域のプラス・マイナス要因で方向性を見ていきたい。

今週の主な予定

8月9日(月)
(日)日銀金融政策決定会合
(日)6月経常収支
(日)7月対外及び対内証券投資
(ユーロ圏)6月独貿易収支
国際石開帝石、三菱マテリアル
8月10日(火)
(日)日銀金融政策決定会合
(日)7月工作機械受注
(日)白川日銀総裁会見
(ユーロ圏)7月独消費者物価指数 改定値
(ユーロ圏)6月仏鉱工業生産
(英)6月貿易収支
(米)第2・四半期米労働生産性・単位労働コスト 速報値
(米)6月卸売在庫
(米)財務省3年債入札
(米)FOMC 声明発表
(中)7月貿易収支
マツキヨ、Walt Disney
8月11日(水)
(日)6月機械受注
(日)7月企業物価指数
(日)8月日銀金融経済月報
(中)7月PPI、CPI、小売売上高 鉱工業生産、固定資産投資
(ユーロ圏)6月仏経常収支
(英)7月失業率
(米)MBA住宅ローン・借換え申請指数
(欧州)ノルウェー中銀金利発表
(欧州)ノルウェー中銀記者会見
(米)6月貿易収支
(米)財務省10年債入札
(米)7月米財政収支
(英)BOE インフレ報告
電通、第一生命、Cisco Systems、Maceys
8月12日(木)
(豪)7月雇用統計
(韓)BOK、金融政策決定会合
(ユーロ圏)ECB月報
(ユーロ圏)6月鉱工業生産
(米)新規失業保険申請件数
(米)7月米輸出入物価
(米)財務省30年債入札
8月13日(金)
(NZ)第2・四半期小売売上高
(日)日銀金融政策決定会合 議事要旨
(ユーロ圏)第2・四半期独GDP 速報値
(ユーロ圏)7月仏消費者物価指数
(ユーロ圏)第2・四半期仏GDP 速報値
(ユーロ圏)6月ユーロ圏貿易収支
(ユーロ圏)第2・四半期ユーロ圏GDP 速報値
(米)7月消費者物価指数
(米)7月実質所得
(米)7月小売売上高
(米)8月ミシガン大消費者信頼感指数 速報値
(米)6月企業在庫
三越伊勢丹、PetroBlus