こんにちは。一日3時間をニコニコ動画に費やすダメ社会人、山田井ユウキです。

今日もさっそく最近流行の動画や埋もれている良動画を独断と偏見で皆さんに紹介していこうと思います。選ぶ基準はただ一つ、僕の趣味です!

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これまでに本連載では何度かニコニコ動画で活躍する数々の歌い手たちを取り上げてきましたが、今回はそんな「歌ってみた」から派生したジャンル「合唱シリーズ」をご紹介したいと思います。

ちょっと細かい説明になりますが、通常「合唱」というと"複数のパートを複数人で同時に同じ場所で歌う行為"(ニコニコ大百科より)を指すわけですが、ニコニコ動画では"すでにアップロードされている複数の「歌ってみた」動画を第三者が合わせたもの"を「合唱シリーズ」とタグ付けすることで「合唱」と区別しているのが最大の特徴となっています。

こうしたコラボレーションはネット時代ならではの産物であり、ニコニコ動画カルチャーの最たる物と言えるでしょう。


人気ボーカロイド曲「Just Be Friends」の「歌ってみた」動画を集めて編集した合唱シリーズ動画。公式PVに重ねるようにして歌い手のアバターが表示されていますが、これもニコニコ動画の同ジャンルにおける定番演出の一つです。なお「Just Be Friends」の元動画は再生数が約200万という大ヒット曲であり、それだけに「歌ってみた」ユーザーも数え切れないほどいるわけですが、そこから誰を選択するのかというプロデュース力(?)こそが、合唱シリーズ制作者の腕の見せ所となっています。

たとえば同じ「Just Be Friends」でも、次の動画はまったく雰囲気が異なっています。


こうして聞き比べてみると違いがはっきりわかりますよね。これはひとえに、動画制作者の「誰を採用するのか」「どの部分を誰に歌わせるのか」「アバター画像のチョイス」といった感性の違いからくるものであり、合唱シリーズを楽しむポイントの一つとなっています。

さて、次は「歌い手とパートの関係」についてご説明しましょう。


ニコニコ動画で人気のある楽曲はほぼ必ずといっていいほど「歌ってみた」動画が投稿されており、先に述べた通りその中から誰をチョイスしてミックスするのかという部分が合唱シリーズの最初のポイントになります。そして次のポイントとなるのが、「どの部分を誰に歌わせるのか」ということ。

この「Dear」も他の動画もそうですが、合唱シリーズでは全員が最初から最後まで歌うことは稀で、ワンコーラス、あるいはワンフレーズごとに歌い手がめまぐるしく入れ替わる構成が主流となっています。

そうなると、誰がどこを歌っているのかということがわかりにくくなるわけですが、そこを補うために登場するのがアバターです。


ここまでの動画でも使われている手法ですが、改めて解説しますと、この動画の下部に表示されているアイコンが、歌い手を表すアバターとなります。アバターが表示されている間、その歌い手が歌っているわけです。アバターにはアニメやゲーム、あるいはボーカロイドなどニコニコ動画との親和性が高いキャラクターが用いられることが多いようです。

動画制作者の趣味などでアバターは変わりますが、たとえば「ゴム=ロックマン」のように歌い手の作品からアバターイメージがある程度固定されている場合もあります。

……ということで、ここまでが合唱シリーズにおける基礎知識。あとは自分の好みで存分に合唱シリーズを楽しむだけです。

では僕の趣味でいくつかご紹介しましょう。


ボーカロイド「メグッポイド」を使ったオリジナル曲「メグメグ☆ファイアーエンドレスナイト」は、ユーロビート風の疾走感あふれる楽曲。これを「熱い歌声」が売りの歌い手を中心に編集することで、燃えたぎるような熱を持った動画に仕上がっています。合唱シリーズはそもそも何人もの声が重なることで音に厚みが出るため、こうした熱い編曲にはとても相性が良いようです。


以前にも特集した「組曲『ニコニコ動画』」にも数多くの合唱シリーズ動画がありますが、これはその合唱シリーズを重ねた「合唱の合唱シリーズ」をさらに重ねて作られた、「合唱の合唱の合唱シリーズ」。参加人数はなんと2,000人! もはや人気ミュージシャンのライブでファンが大合唱しているのと同規模ですね……。この"メーター振りきった感じ"こそがニコニコ動画の真骨頂かも。


合唱と言えばやっぱりこれ。「magnet」は元々2人で歌う動画が非常に多い楽曲ですが、それをさらに9組18人分集めて重ねた合唱シリーズ。投稿者コメント欄にあるようにややBL成分を含みますので苦手な方はご注意ください……。

一つの動画が次の動画の素材となるニコニコならではの「合唱シリーズ」。今後も思わぬところから歌声のコラボレーションが生まれてくることでしょう。「歌ってみた」と同様、さらなる発展が期待できるジャンルです。

勝手エヴァンジェリスト・山田井ユウキ

1980年生まれ。レビューサイト「カフェオレ・ライター」で、映画、漫画、ゲームなどを独自視点からレビューする他、「builder by ZDNet Japan」「ハリウッドチャンネル」など各種媒体で記事を連載中。どんなに忙しくても一日数時間ニコニコ動画に費やすという、社会人としてあるまじき生活を謳歌中。好きな動画ジャンルはゲーム実況、ボカロ、他エンタメ系全般。

(タイトルイラスト:3P3P) ※本コラムで紹介している動画は、作者やサイトなどの都合により削除されることもあります。あらかじめご了承ください。